雑種のひみつの『秘密』

清水玲子先生の『秘密』について、思いの丈を吐露します。

秘密のカレンダー

 

地元の保護猫カフェがカレンダーを作っています。

協賛金を出資すると、自分の猫の写真を載せてもらえます。地元では知られた保護猫カフェで、協力している動物病院も多いのですが、本日通院のときに看護師さんがそのカレンダーを持ってレーザー治療室に飛び込んできて、

「オリエさん! オリエさんの猫ちゃんが!!」

と言われました。闘病の末1年前に亡くなった猫たちの写真を載せてもらったのですが、それを見てくれたのです。わたしは用意周到に準備するのはまあまあ得意なんですけど、不意打ちに弱いもので(以前も書いたけれどERに向いてないし外科にも向いてない ←そもそも文系だろうが)、しかももともと悪気なくにこやかでない性格なものだから芳しい応答ができなくて。看護師さんが興奮してたのに、

「ああ、そうなんですよ」

っていう塩対応になってしまいました。

ひとつには、あー病院の人たちにとっては過去の話なんだなあ、というあたりまえのことを、その反応で思い知らされたのもありました。いやそれでいいんですよ、医療従事者ですから。通って治療してかわいがってもらっただけだし。

とにかく夜になってもまだ、

「そうなんです〜〜かわいいでしょ!!」

なんていう盛り上がった返事ができたんじゃないかと、つまらんことで悶々としています。

 

なおこちらはあいかわらず男前で元気な、山本さんと今井さん(ふたりとも猫)。

お正月ににんげんさんの実家に一緒に帰省したら「うきうきで楽しそうだった」とのこと。猫としてはおかしいけど、お母さんに「人間の孫よりかわいい」という問題発言をされたそうです。

 

 

カレンダーといえば今年はメロディの付録のカレンダーがありませんでしたね。なくてもかまわないけど。

わたしはカレンダー自体あまり使わないのですが、今年は服屋がくれた手のひらサイズのカレンダーが超べんり。

Macの前においてもモニタを邪魔しないし、柄はワンピースの柄でかなり好き。この模様を見てると服を買いたくなるというトラップがあります。

 

同じ白泉社でも花ゆめの付録カレンダーは、行事×花とかデート×ジュエリーとかの複数テーマ(!)で全月描き下ろし(!!)という絢爛さなんですが、なぜこんなことが可能なんだろう。デジタル時代だから? 作家さんたちの年代が若くて体力があるから?? 羨むまいと自制はできても(できてない)豪華だな〜〜、と独り言が出てしまいます。

 

 

メロディは世代が上だから、漫画のカレンダーは需要が小さいのかもしれません。

家族がいる人のカレンダーってたぶん、こういう↓使い方するものだし。

例:「可視光線」における青木家。各人の予定を可視化し共有したり、動くべき人が忘れないようにしたり、全体を見渡したりするためのもの。

ちょっとこのカレンダーは、舞の予定なのかお母さんの予定なのかよくわからなくて、青木しっかりせい、と思いましたが。

でもこのシーン、なにげに好きなんです。人前で傷ついた顔をしない青木の、「第九」の室長として働いているときには見せない日常生活が見えるから。散らかってるように見えてちゃんと整理されてる室内も好感がもてる。鏡台にカバーがかかってたり、賞状を受ける部品(名前も知らない)に枕(これも名前がわからない)がついてたりと、クラシックにもほどがある家だけど、そういうところから丁寧に家を守ってるのがわかる。ここの薪さん、静かにものすごくいろんなことを考えてたんだろうな。

 

思えば2012年2月号ふろくのポスターカレンダーって、どうしようもなく豪華でした。

原画展の公式通販もカレンダー(と瓦煎餅)は販売が終了したようですが、巡回展では来年のカレンダーを『秘密』で作っていただけませんか。

個人的な願望を述べますと、表紙はあのメインビジュアルで、マイベストの12枚は

・規制線

・規制線 じゃなかったリボンだった

・チューリップ

・猫

・猫

・銃かまえてるやつ

・銃かまえてるやつ

・銃かまえてるやつ

・銃つきつけられてるやつ

・銃もって倒れてるやつ

・ベッドで寝転がってるやつ

・おしり

・髪をかきあげる

花葬

・距離の近い青薪

・青薪上下

・鈴薪

・鈴薪

・鈴薪

・車輪梅

・DNA

・プロファイル

司馬師

かな。たぶん。12枚におさまりませんでした。

 

SS「デイリー・メール」

 

今日の昼間、誕生日ネタをなにか思いついたんですが、そのあと急ぎで保護猫関係の投書を書いてたら、誕生日のおはなしはすっかり忘れました。なにか込み入ったやつで、1週間では無理だな、と思った記憶はある。

もともと記念日に興味関心がないし、今年も無理そうです。一般によくあるように冬だから鬱傾向になるわけではなく、今年はとにかく後半忙しくてほぼ毎日出勤しているので(※世間で普通のことがわたしには普通ではない)疲れてる、んだと思います、たぶん。よそさまの作品を楽しむにとどめます、薪さんごめん。

 

さて誕生日話はないのにそうでないのは書く。

なにか書きたいなと思って診断メーカーを回したら書けそうなのが出たので書きました。また風呂の話です。

診断メーカー 〇〇を使わない140字小説お題

この診断メーカー、筆者つまり自分の名前を入れるべきなんですかね。よくわかんなくて毎回「青薪」「鈴薪」って入れちゃうけど。

例によって140字でもなければ、テーマの中心でもないです。

 

今回薪さんはデクスターを読んでいます。以前も読んでました。

SS「めざめ」

なんで今回デクスターを使うことにしたのか、ほんのさっきのことなのに覚えてない、理由がわからない。まあいいんですけど、デクスターは大好きな作家なので。また最初から読み返そうかな。

 

薪さんが一度読んだ本を何度も読むとは思えないので、未訳の短編が載った古い新聞を手に入れたことにしてます。タイトルはその新聞から。

で、書き終わってからふと、ネットに載ってんじゃね、と思って検索したら、あったよ〜〜やっぱり! いい時代だ……

morseandlewisandendeavour.com

薪さんは「新聞をわざわざ送ってくれた人がいたから」わざわざ新聞で読んでいる、ということにしておきます。

 

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秘密の「原罪」

 

今年の元旦のNHKラジオ講座まいにちロシア語入門編」は、青薪で始まりました。

こんなスキットだった。

A:わたしの手紙を受け取りましたか。

B:はい、受け取りました。でもまだちゃんと読む時間がなくて。ごめんなさい。

A:大丈夫ですよ。読み終わったとき、知らせて下さい。いいですか。

B:わかりました。メールしますね。それで、その先何をするかを決めましょう。

会話できてるのにその場で話さないとは、混み入った内容なんですね。「家族になりたい」とかの。

 

ロシア語の昨年のスキットには、

「これは兄の家族です」

「奥さんはなにじん?」

「奥さんの母親はウクライナ人、父親はカザフ人です」

という会話がありました。

ああ〜そーだよね、「カザフ人」って国籍じゃなくて民族なんだよなぁ。

と、あたりまえのことを再確認してしまった。

日本みたいな国に住んでると「◯◯人」って国籍のことだと思ってしまうけど、世界は多民族国家のほうが多いから通常それは民族を表します。っていうか「◯◯人」っていう考え方そのものが違うのかもしれない。国籍を聞く時は「国籍は?」っていう聞き方がありますし。

 

以前カナダ人に「カナダっていわば新興国多民族国家だと思うんだけど、カナダ人っていうのは誰のことを指すの」と聞いてみたことがありました。曰く、「人によるけど俺は、カナダで生まれたらカナダ人だと認識してる」という返答でした。

これは当時のわたしには納得のいかない返答でしたが、今ならわかる。カナダでは「カナダ人」という言葉の意味が、なんというか、広いのです。以前も書いたかもしれませんが、カナダ人に「あんたはなにじん?」と聞くと、「カナダ人で台湾人」とか「ハンガリー人でカナダ人」とかいう答えが帰ってきます。

「カナダ人」はいわゆる国籍、もうひとつの「◯◯人」っていうのはいわゆる民族、ルーツであって、どちらも合わせてアイデンティティであって自己認識なんですね。

 

 

で、このスキットを聞いたあと、カザフと聞けば薪さんを思い出す秘密脳、常々気になっていた「セミパラチンスク(市)」を検索したんです。

いやもう、ひどいもんです。世界の核実験の4/1がセミパラチンスクで行われたそうで、それも人間を実験対象として。

アルマの墓がある「カイナール(村)」で検索しても同じです。いくつかリンクあげておきます。世界の事実を知ることは重要だとしても、悲惨すぎるので、見ることをおすすめはできません。

natgeo.nikkeibp.co.jp

kyoto-muse.jp

 

雑な括り方をすると、我々日本人って、核の悲惨な写真をそこそこ見てきてるじゃないですか。だもんで、なんとなく見覚えがあるんですよ、個々の悲惨な写真ではなく、その悲惨な光景そのものに。

それをネットの誰もがアクセスできるページで改めて突きつけられた感があります。

これを知って「原罪」を振り返ると、もともとしんどかったあの話、さらにしんどい。清水先生、よく描いたなこれ、と思わされます。作品に社会を映す作家の鋭く残酷な眼差し、というやつを思い知らされる。

 

 

さて話が「原罪」に流れたことで、いつもよくわからなくなるのでまとめます。

・タジクとサラは同郷でカザフのカイナール村(セミパラチンスク市の核実験場の近郊の村)出身

 タジクが工場から猫缶を盗んで妹アルマに与えていた頃、サラが身代わりとして暴行を受け聴覚障害になる

・アリエル・カザフ大統領とポトノフ・露外相、ロシアの放射性廃棄物最終処分場をカザフの旧セミパラチンスクに設置決定

 外相の「(セミパラチンスクのガン発生率が高いのは)カザフの怠け者の集団詐欺」という言葉と、娘リリヤを亡くしていたことで怒りのサラ、外相の殺害を決意

 →カザフへの原発技術協力を手がける川谷議員のもとに秘書として入り込む

・サラ、川谷の息子寿明と付き合う?(たぶん無理矢理)

 タジクを紹介し、ふたりは川谷にとって重要な地位につく

 →シンポに参加、ポトノフ殺害を計画

・シンポではMRI捜査の連携強化も議題となり、アリエル大統領がアスタナの姉妹都市福岡で最新のシステムを見学

 →青木は視察に同行(?もともといるのに)後、そのまま第三での食事会へ

・タジクは川谷寿明および周囲の女たちに食事を提供することでCJDを発症させる

 

この最後の部分がずっとよくわからなくてですね。

最初にCJDが出てきたからそこがテーマとして大きく取り上げられるけど、振り返ってみると事件全体は実は沙羅の復讐物語で、タジクはそれを手助けしてたわけです。ポトノフに近づくための道具でしかなかった川谷寿明に、強姦した子供の死体の始末までさせられて、こいつは殺していいと思ったんでしょうけれど、タジクならどうとでもできたでしょうに、なぜ周囲の女たちまで巻き込んで長時間かけて殺さなければならなかったのか(※周囲の女性たちがおかしくなってきたことで直接手を下したのは川谷寿明、ただしCJDは治癒しないので川谷が何もしなければタジクの料理が原因で全員死んだはず)。

周囲の女たちも同罪だと思ってたから、なんだろうけど(←いちいち疑問を述べて自分で解決する奴)、そこは彼女たちへの評価が「性的サービスを強要されていた」「誰かのために日本で体をはって働き続けた」となる薪さんとは違うところなんだよね。

 

いずれにせよ、どっから手に入れたんだ、CJDに罹患した最初の脳。川谷の息子が日本で人間で2例目、って薪さんが言ってたから、たぶん牛、それも国外から入手したんでしょうね。

牛のプリオン病が人間にうつる、と大騒ぎになった当時のことをちょっと記憶しています。たしかナショジオで読んだ。わたしの読解力・理解力・記憶がある程度正しければ、あれは、

・細菌でもウイルスでもない、ただのたんぱく質が病原となった

・種の壁を越えた

・治らない上に必ず死ぬ

ことが大きな話題となった原因でした。

 

 

今回、手紙に関する会話がロシア語講座で出てきたことで、改めて「原罪」を振り返ってみました。しかし何度読んでもしんどい話だ。っていうかしんどくない話、『秘密』にほとんどないですけどね。だからこそ「暴走編」みたいなのが貴重なんですね。

 

秘密の共通テスト

 

こんばんは。

みなさん、共通テスト、受けましたか。じゃなくて、(新聞で問題を見て)解きましたか。わたしは毎年雑に解いてます。

共通テスト初年度の、センター試験と比べてだいぶ変わったな、という衝撃は、かなり薄れました。問題のあとに「Aさんはレポートをまとめることにした」だの「先生と話し合った」だのの後日談?がついてて、それについて一緒に考察する、という形式、最初は衝撃だったけど、結局問題を追加してることには変わりないし、それになんか2年前はもっと総合問題ぽい感じだった印象があった。曖昧な言い方にも程がある、って感じで申し訳ないですが、あまり覚えてないので印象値で。

今年はかなり普通のテストに落ち着いたような気がします。

 

で、雑に理科と国語を解いてみたんですが、生物と地学は、高校卒業以来まったく勉強していない知識でも、その場で1/3とは言わんけど1/4は解けました。生物、初年度は完全に遺伝子の話ばっかりだった印象があるんだけど、今年はめっちゃフツーの生物だったな。それも、答えをみなくてもちゃんと合ってる自信がある。 ※受験するわけではないのでいちいち答え合わせはしない

っていうか、解けた部分はなんかただの読解だったんだけど……図入りの読解。難しいわけがない。生物だの地学だのが読解でいいんだろうか。化学と物理ですら、1問ずつ解けました。おいおい大丈夫かよ大学入試、ってちょっと心配になった。このオレが! 現役の時ですら、物理と化学はお手上げだったこのわたしが! 解けるって、おかしいでしょ。

 

わたしがいかに物理ができなかったかという自慢を、ここで披露したいと思います。

薪さんと鈴木は論外だとして、青木も飛び級してる程度に頭いいし、雪子さんは理系だし、誰に代理を頼もうかな。と考えて、申し訳ないけど最新の「DNA」冒頭でとても頭よさそうには思えない発言をしていた、スガちゃんに登場してもらいましょう。

「わたし、物理がイヤってほど苦手だったんですよ」

「スガちゃん、曲がりなりにも理系でしょ……」

「大学は生物で受けたんで。先生だって私大だから二次試験で理科やってないでしょ」

「失礼ね、慶応の医学部は理科一個選択なんだから」

「とにかくワタシは無理だったんです。それなのに高校は文理のクラス分けがなくて、理科4科目全員必修だったから、苦労しました」 ※ちなみに社会も政経・倫理含めて全科目必修でした

「どうやって乗り切ったの」

「物理は年4回のテストで合計80点取れば合格、って学年の最初に先生が言ったんです」

「え。平均20点じゃない。それで勉強したって言えるの」

「話聞いてました? 文理分けもなくて必修なんですよ」

「わかった、お気の毒さま。80点ならいくらなんでも楽勝だったでしょ」

「前期の中間テストで、65点でした」

「ほらね」

「ところがそこから難しくなって、前期期末は8点でした」

「……」

「後期の中間テストは5点でした」

「はあ?」

「残りは2点だったので、学年末テストは先生が温情で出した1問2点の「公式を書く」2つで4点取れる、よっしゃ、って思ったんですけど」

「——どっちの公式をどっちに書けばいいのかわかんなかったんでしょ」

「そうなんですう〜〜さすが先生!! 危険は犯せないので、両方に同じ公式を書いて、ちゃんと2点もらって問題なく合格しましたあ!」

「スガちゃん……あんた職業間違えてると思うよ……」

「でも生物はそこそこイケたんですよ。解剖も怖くないし」

「化学はどうだったの」

「完全に赤点でしたが、先生が産休で近所の大学の院生が講師に来てたので女子高生たちにナメられまくってて、追試も再追試も無視してたら、いつの間にか進級できてました」

「その院生、女嫌いになったよ、きっと」

っていうかスガちゃん、高校程度でそのつまづき具合じゃ、大学は入れても卒業できなかったでしょ。ごめん。

 

なお本来の読解であるはずの国語は、論説文はいけたんですが、小説は意味がわからなくて、問題文を読んでやめました。小説、だめなんですよわたし。登場人物の気持ちとか作者の言いたいこととか、まったくわからずほぼハズす。解ける人の気持ちもわからない。ほんとに文系かな(文系でないとしても確実に理系ではないのでどうしようもない)。

ちなみに漢字は、選択肢があったので解けましたが、書いてみたら2つほど書けなかったですね。そもそも漢字なんか日常生活で書かないからね。別に書けなくても何も困らないよ、読めれば。と高校生に教えてやりたい。

 

 

ということで、今年もそこそこ楽しめました、一次試験。

ここを読んでる受験生はいないと思いますが(って以前も書いたことあったな)、今後の健闘を祈ります。

 

500色の色えんぴつ SS「PLAYFUL BANTER」

 

 

こんばんは。

今夜のお題はこちらです。

いつの時代の少女漫画だよ笑、みたいな説明文(?)ですよね。

この時の「冗談」って、どんな中身なのかな。「好き」の裏返しだって言っても、冗談でも「嫌い」とか言われたら泣いちゃう、うちの青木は(公式の青木も泣きそうな気がする)。

拙宅の薪さんが冗談として「好きの裏返し」でからかうために言いそうなことと、それに対する青木の返し集:

「おまえが予想外に料理がうまいから付き合ってる」

「いっぱい食べるあなたが好き」

「これの花言葉、知ってるか。「今日が恋人との最後の日」だぞ」

「じゃあ恋人じゃなくなるんなら、結婚するって意味ですかね」

「しつこくてマテができないなら犬のほうがマシだ」

「家じゅう毛だらけになりますし、散歩も大変ですよ。あなたの体重じゃ大型犬は難しいでしょ、ピレネーやバーニーズの背中にのっかるならともかく。帰りも遅いし家も空けるし、結局俺が面倒見に通ってこなくちゃいけなくなるじゃないですか」

ピレネーかバーニーズの背中に乗っかって散歩の指示を出す薪にゃん、かわいすぎる。という想像をして悶える青木です

 

 

あまり色のタイトルとも説明文とも合ってないんですが、お題から離れた話になったけどいいだろ、という感じで置いときます。

 

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500色の色えんぴつ「DARK VAIL」

 

こんばんは。

新シリーズはじめます。いやあの、短歌とかキスみたいなたまに書く短いやつで、連載でもなければおおげさなものではないですが。

500色の色えんぴつでやってみようと思い立ちました。

www.felissimo.co.jp

 

過去に既に一個書いてるんですね。

SS「メロウな朝」

このときの色えんぴつはこれでした。


こんな感じのマンションポエムみたいなのが500個あるので、なにかしら書けるんじゃないかという見切り発車です。

※マンションポエム=マンションの広告にある詩的なキャッチコピーのこと。大山顕命名

マンションポエム徹底分析! :: デイリーポータルZ

ついったのマンションポエムbot

 

今回は、大晦日に書いたこれ。

少しだけ続きを足しました。

続きを足してからここにアップしようと思ってたんですが、うまく展開できなくて、色鉛筆一覧をながめてたらなんとかまとまった。

色えんぴつはこちらです。右の下から4番目、深い紫がかった、ダークボルドー

とりあえず色の名前をそのままタイトルにいただきました。

展開しても中身はついったと同じ、岡部さんの苦労話です。

 

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秘密の外国語 ウイグル語3

 

こんにちは。

本編のウイグル語、ほぼ解読できました。解読っつーか解読自体は既に薪さんがなさっているので、いってみればそれを検証したということです。

結論からいうと、かなりちゃんとしたウイグル語でした。だったらいちいち解説する必要はないんですが、ここに至った労力が惜しいので、まとめておきます。たぶんわたし以外誰も興味ないと思いますが。

 

本編のウイグル語の追試が難しかったのは、翻訳アプリなどに入れてみるとアラビア文字で出てきてしまうことです。アラビア文字を知らなければ、日本語と照らし合わせようがラテン文字表記と照らし合わせようが、その検証が正しいかどうか確認するすべがないので、どうしようもないんですね。

これは昨今、特に田舎のえらい人が翻訳アプリや翻訳機の普及を便利がっているのと現象として似ています。翻訳アプリは相互にその言語を知らないと訳出された表現が正しいかどうかの確認のしようがありません。つまり翻訳アプリは最後の手段であって、保証のないその場しのぎのツールにしかなりえないのです。その場では「通じた!」と思っても、誤訳された表現を相手がそのまま受け入れている可能性が常にあるからです。

 

先日買ったウイグル語の参考書は、あまりわたしの役には立ちませんでした。

おおっ、と思ったのはこれくらい。

adem 「人」、ni「を」。

おおー、だいたい合ってる、暗殺坊主の差し出したメモと。

この本の表記はラテン文字表記でした。ラテン文字表記はウイグルコンピュータ文字だと思ってたんですが、実はこれはラテン文字表記の改良版で、その前段階で別のラテン式ウイグル文字とがありました。両者には少々違いがあります。

上の「新文字」はアラビア文字に対しての「新」のようです。Qをチの子音、Xをシの子音にあてるなど、中国語のピンイン(のラテン文字つまりアルファベット表記)の影響が見られます。

こいつは作成していた頃に文革が起こったのと、アラビア文字の廃止に人民が反対したことにより、使用が中断されたらしいです。

 

下の「ウイグル子ピュータ文字」はネットの普及とともに再登場したラテン文字表記のようで、Xがハの子音にあたるなど、ロシア語の影響が見られます。

モンゴルもそうなんですが、ウイグル民族は中国国内で迫害されているため、中国政府と人民の対立が大きくなるにつれ、反対側にいるロシアと仲良くなっていったようです。そんな影響が文字の採用にも表れています。

なおカザフを中心とした中央アジアではキリル文字を採用しており、そこらへんに住むウイグル人たちはキリル文字ウイグル語で独自の出版や教育を行なっているとのことです。

 

上のふたつの文字一覧は次のサイトというかネット上の辞書からの引用です。

最初のほうに文字や文法の説明があり、なんならちょっとウイグル語がわかるような気分になってしまった(気のせいです)。辞書なので検索もできます。なぜか見出し語が検索にひっかからないことがあるとか、ブラウザとiPadで引っかかる語彙の数が違うとか、少々怪しいところもありますが。

でもとにかく今回、これにたいへんおせわになりました。

現代ウイグル語小辞典

 

この辞書にはアラビア文字との対比もあります。今回初めて知ったんですが、アラビア文字も独立形(いわばブロック体)と続ける形(いわば筆記体)でずいぶん形が違って、しかも筆記体が複数あるんですよ。同じ文字でもかなり形が違います。

その一部↓

IPA国際音声記号、いわゆる音声記号の全言語統一版

この辞書はウイグルコンピュータ文字で書かれていて、見出し語にはアラビア文字表記もあります。これが本当に役に立った。

ではここからあらためて、『秘密』のウイグル語の追試に入りたいと思います。

 

 

こちら無印10巻の薪さん。

 

メモを拡大。

上で紹介した辞書に、ちゃんとあったー。

アラビア文字表記もすっかり同じ! すごい。

ちなみにこいつは、上にあげた「現代ウイグル字母」から t は同定できたんですが、ya は同じものが見つけられませんでした。単語になると字形がまたちょっと変わるんでしょう。

adem は最初に書いたように「人」。『秘密』本編にあった a にウムラウトがついた文字は、ウイグル語のふたつのラテン文字表記には見当たらないので、これは e に訂正します。

アラビア文字もめっちゃ合ってる。すごい。

yat adem は「見知らぬ人、異質な人」、つまり「よそ者」という意味でした。

 

次。

 

辞書に熟語であったよ!

これは見出し語でないので、このままだと検証できません。

そこで個別の単語もひきました。

↑おー、動詞めっちゃ合ってる。アラビア文字も合ってる。

↓「舌」も合ってました。

「ni」は「を」です。助詞の「を」は見出し語にありませんでしたが、この表記が参考になるかも。

 

で、「おまえの」なんですが。

どうも主格?と所有格?で、形が全然違うようなんです。

二人称単数の見出し語:

二人称の所有人称接辞:

「おまえの」は「-ng, -ing, ....」のようです。主格の「おまえ sen 」と全然違います。

「 tilingni 」は「 til-ing-ni 」で「舌-おまえの-を」となっているんですね。これは上の例からも検証できます。

yurtum 私の故郷

 -um 一人称単数所有

yurtung 君の故郷

 -ung 二人称単数所有

これらの例から、「 yurt 」が「故郷」で、そのうしろに「わたしの -um 」「きみの -ung 」がついていることがわかります。ウイグル語では所有の人称は接辞で、所有される名詞の後ろにつく、ということです。

 

では、「 til 」と「 ni 」はアラビア文字表記が判明しているので、「 ing 」を調べます。

辞書で検索すると、「 ing 」を途中に含む語がたくさんあって、このへんが参考になりそうです。

これらの文字列から察するに、が「 ing 」にあたるもよう。

なおこれは辞書の「現代ウイグル字母」とも合っています。

i の字頭形(いちばん右)、字中形(右から2番目)

ng の字中形(右から2番目)

 

以上をまとめたら、こうなりました!

 

めっちゃよくわかる、めっちゃ合ってる。

前回検討したときにはあまりよくわからなかったんですが、今回はとってもすっきり。満足しました。

ロゼッタストーンの解読ってほどじゃないけど、オランダ語もわからないのに辞書と首っ引きで訳したターヘルアナトミアの解読、ぐらいの気分にはなれました。 ←言い過ぎ

 

なお調査の過程で「日本語ーウイグル語翻訳掲示板システム」というものを発見しましたが、残念ながら現在は稼働していないようです。

参考:

日本語ーウイグル語翻訳掲示板システム

形態素解析を用いた日本語・ウイグル語機械翻訳システムの開発および統計機械翻訳手法の基礎検討

名古屋大学外山研究室

 

清水先生、これ、どういうツテで文を作ってもらって、誰に文字を書いてもらったのかな。完璧すぎるもん。知らない外国語で文法的に合ってる文を作って、知らない文字で書くなんて、素人にできないですよ。もとの参考サイト『新疆瓦版』がなくなったのが、かえすがえすも残念です。

 

以上、わたしだけが楽しいウイグル語の検証、終わり。

ここまで読んでくださった方、お疲れさまでした。