雑種のひみつの『秘密』

清水玲子先生の『秘密』について、思いの丈を吐露します。

SS「めざめ」

今日は今井さんの誕生日ということで、今井(猫)の最新ショットから始めます。 岡部さんはスルーだったのに……たまたま気づいただけですごめんなさい

りっぱなおしっぽがじまんです。

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本日職場の広報室の廊下を通りがかったときに、スタッフから、「今日歩くの遅いね」と指摘されてしまいました。 ※ 管理人は職場で騒々しく歩くことで知られています

だもんで耐えきれず仮眠用ソファで仮眠をとったところ、どうやら薪さんの夢を見たようなんですが、20分後に目覚ましと内線電話でがっつり起こされたときには内容をさっぱり覚えていなくて。

もう……仮眠室で薪さんが寝てる職場で働きたい! ←それは第九だ

(薪さんの夢を見たらしいのにその内容を覚えていないことが)悔しかったので、また「疲れて薪さんに甘える青木」の短いおはなしを書きました。ぬるい話になりました。 現実逃避してます ←実は暇なのでは??

 

みなさまのおたくの薪さんはけっこう料理するみたいですね。うちの薪さんは3か月に1回くらいしかしません。しかも外食も青木とのデートのとき以外は滅多にしないので(ただしそのさいにはたいへんいいものを召し上がっています)、普段は何を食べているのかというと、あまり食べない。って書いてるにんげんの性癖が移ってるだけやん! 薪さんごめんなさい。

あっ でも、一日一食しか食べない人、同僚にもいました。さほど珍しい現象じゃないとみた。

 

モース警部シリーズをまだ読んでなくてこれから読もうという方は、このおはなしの中にミステリの謎解きとは関係のないネタバレがちらっとありますので、ご注意ください。

先日、次回はもうちょっと、とか言っておきながら、やっぱり色気は1ミリくらいしかないです。

 

 

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めざめ

 

 

 明けきらない梅雨の終わりの雨が夕暮れに降り出していた。まだ長いはずの陽が雲の暗幕に遮られ、埃っぽい空気の匂いと二、三度下がった気温が部屋の中に忍び込んでいた。

 手の中のデクスターの字が読みにくくなった。明かりをつけたいが届かない。ポケットミステリをかたわらに下ろして少しずつ腕を伸ばすと、膝の上の青木が身動きして仰向けになった。そのタイミングに合わせてとったリモコンを握り、起こさなかったかな、と薪はじっと動きを止めた。

 さらさらと静かに湿度の変わる音がする。恋人は寝息を立てて太腿のぬくみの上にいる。視線を黒髪の下の閉じたまぶたからはずさずに部屋を明るくしたときに、その見えない瞳がかすかに揺れて眉がわずかに寄せられた。薪は指の長い手をそこにかざし、もう少し寝てろ、と聞こえないほど小さな声で囁いた。

 「なんじですか」

 「まだ遅くない」

 「はらがへりました」

 「あとで何か作ってやる」

 青木が顔の上の薪の手をつかんで、目を閉じたまま指先に口づけた。眠そうな声が続ける。

 「うそでしょう」

 「嘘に決まってるだろ」

 「はらがへりました」

 「もう少し寝てろ」

 「あの……」

 「僕がこうしていたいんだ」

 そして青木の眼を掌で覆う。「モース警部がいいところなんだ」

 「あのひと、さいごに なk」

 言った青木の体に緊張が走った。

 「……まだそこまで到達してない」

 「すみません……」

 「覚えてろよ」

 薪の膝がやさしかった時間は終わった。揺り落とされた大きな体がのろのろと起き上がり、なにかたべるものつくります、と首を振りながらキッチンへ消えていく。

 「ふん」

 薪はソファの上に脚を上げてページをめくった。相棒の部長刑事が上司の遺言に感動しているところだった。

 青木が寝惚けるのは比較的珍しい。たまにはあの気まずさを思い知ればいいんだ、と何度か恥ずかしい目に遭っている薪は、ついさっきまでの恋人の体温を膝ごと胸の中に抱え込んで、あいつうちの台所でほんとに料理らしきものができると思ってんのかな、と笑いがくすくす浮かんでくるのをこらえきれなかった。

 

 眩しいと云ってめざめる者の眼を掌で覆うときはじまる今日よ  穂村弘

 

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