こんばんは。外は寒いです。家の中は、寝てて自分で布団を剥ぎ取ってしまうほどあったかいです。猫屋敷なので。
でも外は寒いです。晴れてるとなおさら。冬の夜って、星座が派手だから寒くても許す。みたいなとこあります。
ゆうべに引き続き今夜も素晴らしいです。寒さと星が。
ゴミ捨てに外に出たらオリオン座とその周辺の派手な星空が、2か月前には東のほうにあったのが、すっかり西に傾きました。まあ時間も違うんだけど。
あまりに派手なものでついおはなしを書きました。話の中では木星になってますが、実際の惑星は真っ赤な火星です。
ちょっと外に出たら星空が見事すぎたので。
— 泉 織江 (@orie2027) 2022年12月25日
速攻で妄想して速攻で書いたほのぼの青薪。
久しぶりについったにあげてみます。 pic.twitter.com/ji4nnrG5w7
泊まってる温泉は、なみたろうさんのご指摘どおりたぶんここ:
目が良すぎて星がよく見えると言い張る薪さんのおはなし:
折りたたみのあと、ついったと同じもののベタ打ちと、少しおまけがあります。
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冬の星座
薪が散歩に行くと言い張るので、気が狂ってると思いながらセーターを着込み、旅館の半纏を重ねてコートを羽織って、マフラーに手袋まで装備した。それでも一歩外に出れば、晴れて冴えた闇のはるか向こうの真空の、そのまた向こうの星空は、都会では見られない満開ぶりだ。
「星が多すぎますね。あれは木星かな」
「だろうな。牡牛座の中でアルデバランより明るい」
「あなたはすばるは何個見えますか」
「10個」
「嘘でしょう」
「おまえは」
「ひとかたまりにしか見えません」
「見えないくせになんで嘘だってわかるんだ。そもそもひとかたまりじゃ、ほんとにすばるを認識してるかどうかだってあやしい」
「冬の星座ですよ。オリオン座のすぐ隣で、形くらいわかってます」
もう少し眺めて理系っぽい話を聞きたかったが、マイナス5度をさらに下がりつつある屋外ではこれ以上厳しかった。
「戻りませんか」
「南国育ちめ」
「いや東北人だって歩きませんよ、氷点下の空気の中は」
「もう少し見ていたい。こんなに晴れた夜空」
「あなた自分が冷えてるってわかってないんでしょ」
青木は自分の大きなコートの前を開くと、後ろから薪を包み込んだ。「あ。これならもうしばらく、見物できます」
「そうだな」
薪がくるりと半回転して、向かい合わせになった。「ときどきこうやってあっためる側を替えれば、もっといい」
「言っときますけど、限度がありますからね」
捜査が佳境に入ると「倒れますモード」まで突っ走る薪は、遊びに夢中になった場合も周りを見失うことがたまにある。自然や芸術に触れたときには特に要注意だ。
「こまかいことばかり言ってないで、空を見ろ」
30センチ近く下のほうで見上げる双眸は、青木を通り越して漆黒の海に漂う恒星の波を映している。
「見てます」
コートの内側で回した腕で細い肩を守りながら、青木が答えた。
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このあと、寒さに耐えられなくなった青薪の会話です。
「……青木」
「なんでしょう」
「頭が痛い」
「ほらあ!」
「北東北の寒さはしみるな」
「ここいらは本州以南でいちばん寒いとこなんですからね。部屋に戻りましょう」 ※このへんは秋保温泉ではなくわたしんち周辺の話です
「前を開けるな」
「え。と。難しいですね」
二人羽織状態でえっちらおっちら歩く青薪。
「いまベテルギウスが爆発すればいいのに」
「あったかくなるんですか」
「バカか。ここから見るのは642年後だ」
「爆発したのが642年前なら」
「宇宙空間を熱が飛んでくると思ってんのか」
「……いいえ」
「この距離ならガンマ線の影響だって、ない」
「じゃあなんで爆発が見たいんですか」
「興奮して、あったかくなるだろ」
そうかな、と思う青木。興奮してプロポーズはするだろうけど。
ベテルギウスが爆発しなかったときの雑記:
爆発した場合の雑記追加:
部屋に戻ると当然、備え付けの露天風呂に入ります。
「ああ寒かった」
「マイナス8度ですって」
「ここいらは3年に一度はマイナス20度まで下がるらしいぞ」
「想像がつかない寒さですね」
「マイナス20度だと、寒冷地仕様の車でもエンジンがかかりにくくなる」
「下手すると死ぬじゃないですか」
「古い家では窓が凍って開かなくなるし、金属のドアは開けた途端に歪んで閉まらなくなる」 ※全部管理人の体験談です
「マイナス20度でそれじゃ、シベリアのマイナス70度になるあたりでは、みんなどうやって生きてるんですかね」
「人間ってやつはどこにでもいるからな。青木」
「はい」
「頭が痛い」
「またあ!」
今度はのぼせた薪さんを抱いて風呂からあがります。
「なんだってあなたはそう極端なんですか」
実は薪さんは、青木がいるから油断して甘えてるんです。
わたしのお風呂話にはありがちな展開。
という、どこまでもほのぼのしてる青薪でした。