こんばんは。
現在、ついったでは何度目かのリレー小説がもりあがっています。何度目だっけ? いつも混ぜていただいてありがとうございます。青木の誕生日の前にはまとまると思いますので、またご紹介がてら過去のものももくじ的に再掲させてください。
リレーの醍醐味はおはなしが思わぬ方向に曲がっていくことですね。今のところ目隠しとかアイスあーんとか鈴木さんとかが登場しています。お色気(?)お風呂シーンは今回課題設定だったので予定調和ですが、それでもそこに至りそうになるたびに界隈がざわつきました。「風呂? 風呂か??」って感じで。
そして迫り来る青木の誕生日の準備は進んでいませんが……ここ数日は不眠がおさまって?過眠となっています。使えなさ度はこっちのほうが深刻です、一日中眠いんで。
まあでも今夜はちょっと頑張った、猫さまたちの新しい家族が決まったので、その帰りに考えながら運転してたおはなしをやっとまとめました。
このときは鈴木さんの部屋にみんなが集まったんでした。
あと久しぶりに赤ピーマン(またはパプリカ)のムースを出したので、どんだけ出したっけ、と数えてまとめました。
ムースが出てくるおはなし:
左から、ゆず(仮名)、わさび、ぽんず。
心配しましたが順調に人馴れしてるようです!!
旧あおまき(猫)、
— 泉 織江 (@orie2027) 2021年12月6日
子猫たちは自分から「撫でて」と寄ってくるようになりました。
お母さんの方はまだ無理矢理抱っこしてますが、ケージを出て家中探索するようになりました^_^
だそうです😆
写真はうちにいた頃。お母さんと再会したらつられてまた愛想悪くなるかと思ったけど、よかった😽 pic.twitter.com/rGTL9WYC5M
そうそう猫といえば、クリアファイルを額装したらいい感じになったので見てください。
もう飾る壁がなくて、っていうかうちあんまり壁がなくて、床置きですが。
A4のクリアファイルが入る額はオタク向けに百均にあるんだけど、B5のはないんですよね。周囲を埋めるために頑張りました。
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めぞん鈴薪青 同居人
「薪」
22時をまわったばかりの、まだ眠るには早い時間だった。ドアにノックの音がして、返事もしていなければ入っていいとも言っていないのに、鈴木の長身の気配がした。そのまま狸寝入りをきめこんでいると、薄く点けた灯りの中で枕のそばにしゃがみこむ様子が伺えた。
「具合悪いの」
「別に」
「寒くないか」
「問題ない」
「夜メシ、食う?」
「うるさいな、寝かせろ」
「夏のパリなら陽が沈んで間もないぞ」
「ここはパリでもなければ、今も夏じゃない」
「おまえの好きな赤ピーマンのムース、作ったんだけど」
そこで薪はついに諦めて、ハナまで引っ張り上げていた毛布から首を出した。
「おまえが?」
「うん。丁寧にピュレを濾して。スプーンも持ってきたし、食べさせてやるよ」
薪がこたえずにじっと鈴木の目を見ていると、長い太い指が前髪をなでた。
「わさびもぽんずもゆずも、みんな同じ家にもらわれていったんだよ」
「うん」
「野良猫のままだったらいずれ離れ離れになるし、ずっと一緒にいられるんだ。これでよかったんだ」
「だけど僕たちが1人1匹ずつ、面倒をみればすむ話だったじゃないか」
「俺はそれでもいいけどさ。青木が次から次へと仔猫を保護してくるのに、全部の世話はできないだろ。このあと出会うはずのもっとたくさんの猫たちを助けるためにも、もらい手が見つかったら手放したほうが、幸せの数が増えるんだよ」
「正論を吐くな」
「おまえは一旦拗ね始めると、手間がかかるな」
鈴木はやさしくそう言うと、ベッドの縁に置いたガラスの器に手を伸ばした。
「食べるだろ。起きて」
薪は指示に半端に従って体制を崩さずに、口だけをパカッと開けた。
「ツバメの雛みたいだぞ」
「仔猫の気分なんだよ」
そこへ別のノックの音がして、屋外の冷たい空気をまとった青木が入ってきた。玄関から直行してきたらしい。
「薪さん」
「どうしておまえらは、僕の部屋に勝手に入ってくるんだ」
「俺、今夜ここで寝てもい……あれ、鈴木さんも」
「よお」
「何やってんですか」
「デリケートなお姫さまにおやつをあげてた」
「その色は、得意技のムースですね」
「おまえの分も冷蔵庫にある。持ってくれば」
青木はそれに従っていったん下がり、さらにふたつの器を運んできた。透き通った丸いグラスと陶器のスプーンが、お盆の上でカチャカチャと音を立てた。
「長い道のり、ご苦労だったな」
鈴木がねぎらいの声をかけた。隣に座り込んだ男は、片道2時間半の運転を終えて、猫の親子の新しい家族の家から戻って来たところだった。
「保護猫で一番大変なパートは、いい家族を探すところですからね。保護する苦労も、病院に通ったりごはんをあげたりする手間も、長距離の道のりだって、里親探しの緊張に比べたらなんてことありません」
「どんな人たちだった」
「若くて穏やかなご夫婦です。まだ人馴れ訓練が必要なゆずも、あれなら気長に付き合ってくれますよ」
「わさびとぽんずはびびってなかったか」
「ソファの下に隠れてましたけど、小さい人間の子供がふたりいるので、そのうち一緒に寝るでしょう」
「どっちの柄がいいとかって、取り合いになるんじゃないだろうな」
「薪さん。大丈夫ですから」
青木は自分のぶんのムースに匙を突っ込んだ。「俺が直接会って、話して、確認してきたんです。仔猫のくせにシャーシャー威嚇するきょうだいをかわいいかわいいって言って、お母さんまでまとめて3にん、お迎えしてくださるご家族なんですよ。幸せにしてくれます」
「シーバかクリスピーキッスを持たせてやるんだった」
「ロイカナのベビキャットを持参しました、ちゃんと食べてました」
「ちゅーるは」
「止めたって買うようになります」
「新しい首輪――」
「ああもう、少し黙って食え」
ついにムースが口に突っ込まれて、薪はスプーンをかじったままその曲面に載ったオレンジ色の好物を舐めた。「うまいだろ」
「うん」
「来春には、いやでも次の仔猫が来ますから」
「僕はもう面倒みないぞ」
「え」
「情が移ったら別れがつらくなる」
「薪さんは最初もそう言って、抱っこして寝る以外なにもしてなかったじゃないですか」
「抱っこもしない。ベッドにも入れない」
「はいはい」
「なにもしない、むぐ」
「黙って食えってば」
気づけば青木はソファに横になって毛布をかぶっている。寝たままおやつのようにデザートを味わう行儀の悪いルームメイトたちを見て、鈴木はため息をついた。
「俺が手間をかけた逸品を」
「鈴木さん、ご自分は食べないなら俺がもうひとつ」
「ふざけるな、「コートドール」のスペシャリテだぞ」
「自分の腕を三つ星と並べるんですか……」
「僕のために作ったんじゃないのか」
「そうだ。そうだった、青木に2つもやらない」
本日の功労賞をもらうはずだった男は、最後のひとくちをしみじみ味わってしばらく無言になった。
「たぶんこんな感じになりますよ」
「なにが」
「誰にどのおやつをあげるとか、一緒に寝るとか寝ないとか」
「かわいがられるのはわかってんだよ」
そうだ、そんな心配なんかしていない。薪がさびしがるだけなのだ。
床で寝るにはもう寒いな、と鈴木が言った。いつもどおりこっちで一緒に寝ればいい、と部屋の主が答えた。だったら俺も入れてくださいよ、若いし体温高いですよ。おまえはデカすぎるって何度言ったらわかるんだ、そのままそっちで寝てろ。ちぇ、混ぜてくれたら今日のわさびとぽんずとゆずの写真、見せるのに。
ふわふわの同居人が去って沈んでいた薪の周りは、大型の同居人が賑やかしてくれる。頬に当たっていた肉球やヒゲやしっぽの感触を思い出しながら、今夜はこいつらの相手をしてやるか、と薪はまた口をあけて報酬を味わった。
* * * * *