雑種のひみつの『秘密』

清水玲子先生の『秘密』について、思いの丈を吐露します。

秘密のメメント・モリ

 

こんばんは。

日曜日、連れ合いにメシを奢ってもらいました。

 

鉄板焼き屋です。奴は280グラム(手前の肉)でした。肉は地元名産の短角牛でした。

黄色いのはにんじん、緑のはカリフラワーでした。どっちもものすごく好きじゃない(つまりかなり嫌いな)野菜ですが、カリフラワーは独特な香りがしておもしろかった。にんじんはにんじん臭くなくてわりと大丈夫でした。

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いつも肉だけがっつり食べるんですが初めてコースで頼んで、前菜にシチューがついてきました。

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夜はいわゆるバーにて。

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下戸のわたしは、確か鬼なんとかいう(違うかもしれない)蜜柑のジュース。

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夜は雪で、これは車がまったく進まず止まっていたところです。ちょっと誰かの絵みたいですよね。セザンヌとか。

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その過程において、どのタイミングかちょっと覚えていないのですが、奴が突然、

「おまえ死なないだろうな」

とか言い出したんです。

「病気とか事故とかの可能性もあるし隕石が落ちるかもしれないし、いつかは死ぬよ」

と答えました。

わたしはなぜか隕石がとても怖いのです。っていうか空から「落ちてくる」ものが怖いのです(「降ってくる」ものに関してはそうでもない)。空から落ちてくるものとは具体的には、隕石の他には、毛虫、雷、戦闘機などです。とにかく「(自動車)事故で死ぬ」ことを想像するとき、わたしは一に居眠り、二に隕石が車に衝突することを考えています。なおそんな想像をしているときの隕石は必ずしも映画のような巨大なものではなくて、車のボンネットが潰される程度の、たぶん直径数センチとかのものですが、ボンネットならいいけどこめかみとかに当たったら少なくとも胸部から上は吹っ飛んでなくなるよね、せめて即死ならありがたい、的なところまで想像しています。

 

で、そんなことを考えていた時に、

「いや自死とか」

と言われてびっくり。

「家ももったいない……いや家はいいのか」

うん死ねばローンなくなるからね。1年半しか経ってない新築のデザイン住宅にわたしが住めなくなるのはもったいないけど。 

※ 奴も自分で言っておいて「家」は説得力に欠けると思ったらしい

でも猫さま2桁いるのにそう思われていたとは!! 毎週病院に行く猫とか、触れない猫とか、うちで点滴打ってる猫とか、猫バイトが来ても怖がって1週間ハンストしてた岡部猫とか、いるんだよ?? 奴はそんな細かい事情は興味もなければ知りもしないのですが、知ってたらもうちょっと心配しなかったかな。

先週元気なかったし、本人は降圧剤のせいだと言い張ってましたが、そんな心配をかけていたなんて。かわいそうなことした。

 

ここ数日、自分の人生を振り返って、物心ついたときから好き勝手しまくって、好きで得意なことを仕事にして働いて元気出て、ひとりで生きていける程度+猫さま山ほど面倒みられる程度に稼いで、かなりラッキーな人生だと思う、と総括したのが追い討ちだったらしい。こっちとしてはそう思うタイミングや理由があったわけではなく、ただ言ってみただけなんだけど、なんか心配されました。

あと今年に入って高い時計をプレゼントされたのですが、それが快気内祝いとか誕生日とか全然関係なく奴が「今までちゃんとしたものをあげたことがなかったから、ただのプレゼント」だと主張するので黙ってもらっておいたのですが、とにかくそれを「あなたが死んでわたしがもっと歳を取ったら猫バイトさんにあげようと思う(けど手首のサイズから言って合わなさそう)」という話をしたこと、も不安要因だったもよう。

さらに、夏に母がうちに来たときに、わたしのアルバムを持ってきたんですよ。「お母さんが死んだらもう見る人がいなくなるから」って。わたしだって今更自分の子供の頃の写真なんかもらっても困るけど、こういう写真もいまうちにあるいろいろなモノも、自分が死んだら存在そのものの意味がなくなるんだなあ。なんてことを考えて伝えたのが、これまた心配のタネになったらしい。

 

ついでに思い出したんですが、奴に出会って付き合い始めた頃って、ちょっと死にたいというか、正確には別に死にたくないけど生きてるのがけっこう嫌で、疲れ切ってたんです。今になって振り返ると若さにありがちな絶望を抱えてただけだったんですけど、でもその後の人生においてそういう絶望感は払拭されなかったので、あまり若気の至りのせいにしすぎるのも自分が気の毒だと思う。

で、当時のわたしは奴から、自分でも思ったような「(そんなアホなこと考えるなんて)無駄なことを」的扱いを受けて、それに関してはまあそうだろうな、くらいにしか思わなかったし、奴自体がお気楽にのほほんと生きてるわけではないことは言葉の端々からわかったので、そして絶望感を抱えながらも奴と付き合いだして普通に人生を楽しめるようになったので、若い時のそんな思いはしばらく忘れてました。昨日まで。

 

冒頭のサーロイン150グラムも心配のもとになったようでした。以前は300グラム食べて足りなかった。ほんの2年程度前は。「食が細くなった」のも自覚では老化現象の一つにすぎないのに、奴はそう思わなかったようです。

いやもう「終活」とかやってんの、奴のほうなんですけどね。年齢的に彼はそれがわりと普通だと思ってるみたいですが、自分は「人生終盤」とか「そのうち死ぬ」とか言っといて、わたしが似たようなこと言うと心配するって、なんでなの。

わたしはわりとしょっちゅう死について考えているのですが、あまりに恒常的に考えているもんで、死が心理的に身近すぎるのかな。普通に死について語っただけなのに、ひどく心配をかけてしまった。まあそれは悪かったね、と思った。という話です。

 

 

* * * * *

 

そんなわけで(どんな??)、薪さんの

「青木に 殺されたい」

については、わたしはもうクビが痛くなるほど共感しかなくて、あそこに至るまでの薪さんの疲れ切った数々の表情を見るにつけ、あの車の中での穏やかな表情に、そこに薪さんの救いがあるんだな、と思ってしまうわけです。

もちろんそう思うのはその後殺されなかったことを知っているからであって、何かで間違って展開が薪さんの望むようになってしまったら、青木を許せるとは思えませんけれども。

 

あと「データ消失」2016の、

「いずれ総てが思い出になる」

「何もかもが総て思い出になり 50年もすれば「思い出」を「思い出す人」すらもいなくなる」

「青木も 岡部も 僕のキオクも 涙も 笑顔も あの時の鈴木も 何もかも 消えて無くなる」

これもねー!! 雪子さんにはイラッとするけど、全『秘密』の中でどうしてもどれか一個だけ選べって言われたらこれを選ぶかもしれない。

 

薪さんて日本に戻ってきたあとも、ずっとそんな、いつか死ぬんだな、みたいなこと考えながら、鈴木の生も死も受け入れて生きてるんだろうな。と思ったのでした。

 

青木の入る余地、あるのかな…… ←いまさら根本的なことを

いかん、もうすぐあの子の誕生日なんだよ、しっかりしてもらわないと。 ←おまえがな