ベテルギウスが暗くなった原因は黒点であるとマックス・プランク研究所が言ってたのに対して、スミソニアンの研究者がハッブルを使って調べたところでは、プラズマによって形成された塵が原因ではないか、という説が出てきたそうです。
ハッブル宇宙望遠鏡、頑張るねえ。もう3回くらい引退の噂を聞いたけど、まだまだ現役だ。
ベテルギウスのことを教えてくれた人から、お古ですがいいものもらいました。ウキウキ。
岡部猫と宇野猫のおしっぽくるくるコンビニ阻まれて、これじゃなんだかわかりませんが。
こちらです。
ロゴにも既視感があるでしょう。本物です(えっへん)。
これはでかいサイズなら薪さんの寝巻きTシャツにしても色っぽい、とか思ってしまった。パジャマは色気の観点から前ボタンに限ると思っていたのですが、(二次っていうかうちで→)講演に呼ばれたいろんな大学のTシャツもいいかも。海外サイズだからどうあっても寝巻きにしかならない。
ところで今日も他にも天才のエピソードを聞いてきました。
東大の医学部の大学院に決まった知人の娘さんは、どうやら本命はハーバード・メディカルスクールらしい、とか(院生になったら留学希望のようです)。
灘高を出て理3あたりに進学すると、「IQ160程度でよそに披露すんなよ恥ずかしい」と思うらしい、とか(個人的には180でも190でも、IQを自慢げに語るのは大変恥ずかしいと思います)。
わたしが天才を好きなのは、ほんとの意味での頭いい人というのは基本的に(性格悪かろうがなんだろうが)善人で、世の中をよりよいものにしてくれる、と信じているからだと思います。セーガン博士やクライトンやジョブスが、わたしの価値観から見てそういう人々であったことで証明されるように。
そして天才といえば鈴薪ですね。もはやシュミのお勉強妄想です。
東大教養学部1年生、6月とかの初夏、歴史学あたりのレポートを書くふたり。薪さんのお屋敷にせっせと通っている鈴木さんです。
去年、改元のときに途中まで書いて挫折したやつを発掘したので、続きを書いてみました。需要がなくても個人的に仲良く勉強してるふたりを見たいだけなんだと思います、すみません。なおなんでそんなふたりを見たいのかと聞かれたら、これはもう性癖としか……。
レポート課題はふと気づいたら、去年書いた心理学と大差ない。好みのタイプの設問なんだろうな。
ふたりの学生時代(及びその後の青薪付き合ってる時代)に改元があるという設定は、何個か書きましたが、このへん↓がわりと最初のやつです。
PALE BLUE DOT:改元連休にバークレーに行くおはなし
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伝統と革新
明治の前の元号が慶応だと知らなかった奴が、サークル内に少なくとも3人いた、と鈴木が言った。薪は知らない理由がわからない、と答えた。
「日本史の2をとらなかったんだろ」
「そんなこと可能なのか」
「おまえどんなカリキュラムだったんだ、高校のとき」
「自分でもよくわからない」
そらみろ、おまえだって知らないことがあるんじゃないか、と内心思う。
「自分で自分の時間割が不明ってどういうことだよ」
「1年しか通ってないから。完全独自の課程で、授業もなんか不定期だった」
「体でも弱かったのか」
「1年で卒業しただけ」
鈴木は一瞬だけ固まって、そうだったこいつ同い年で京大の大学院で生命科学の博士号とってきたんだった、と思い出した。
「バカなこと聞いてすまん」
「どうでもいいけど年号はやめといたほうがいい」
薪は謝罪に関心を示さず、課題に戻った。歴史学の中間レポートは、現代に残る日本の伝統文化をふたつ取り上げその関連性について議論せよ、というものだった。戦後の制度になって連続ふたりめの生前退位による改元がすんだばかりとあり、学生がふたつのうちのひとつとして飛びつきそうな話題ではあった。
そりゃそうだ、と鈴木は相槌を打つ。
「俺が教授でもうんざりする。テーマの選択の仕方も採点対象にする」
学生がやっつけで書く専門外の教養科目のレポートなんて、採点する側にしてみればそれだけで願い下げだろうに、その上同じテーマで下手くそな考察を打たれたら、落としたくなる心理もわかる。
「おまえ何にするの」
「建築様式と、流通貨幣とか」
「現代に残る日本の伝統文化、っていえるか」
「そこはうまいことひねって書く」
「おもしろそうだな。家と金に何の関係があるんだ」
「それもこれから考える。貨幣の改鋳の時期と文化の盛衰の一端としての家屋のありかたとか、どうとでもつなげられる」
「参考書は」
「大枠ができてから夕方図書館に移動する」
「締め切り明日だぞ」
「24時間開いてるんだからかまわないだろ。テーマが決まってないおまえよりマシだ」
鈴木はそう言われて、なんで遅れてる俺が自分より頭のいいこいつのことを心配してるんだろう、と思った。
「退位そのものとかどうだろう」
「比較対象は」
「おまえ方式で、あとから関連づけよう。なんか適当にピックアップしてみて」
薪が顔をあげて室内を、それから窓を通して風を送ってくる庭の様子に視線を巡らせた。なんでもいいから、と題材を提供することを求められると、そうやって目につく場所から手っ取り早く想像をまわすのだ。
「在来植物」
「いいかも。お印ってやつがあったな」
「和歌」
「辞世の句、じゃなくて、そんなのだな」
「懐石料理」
「……何を見て思いついたんだ」
「腹が減ったんだと思う。血糖値も下がってきた」
「メシ作るか」
「待てない。くらくらしてきた」
「おまえはなんでそう限界になってから訴えるんだ。自分の状況が理解できないって、赤ん坊かよ」
鈴木は鞄から小さなビターチョコレートの箱を取り出すと、ひとつ包み紙を剥いて艶のかすれた唇のあいだに薄いリーフを押し込んでやった。
「常備薬だ」
「親戚のおばさんか」
「偉そうな苦情は自分で自分を管理できるようになってから言え」
「ちょっと、溶けてる」
「溶けてない。柔らかくなってるだけだ」
そうは言っても鈴木も、自分の指先を汚したほろ苦さをぺろりと舐めた。
「冷蔵庫、何がある」
「パプリカ。トマト。レタス。鴨」
「……カモ?」
「燻製の、ハムみたいなやつ」
「米を炊けばどうにかなりそうだな」
外に出ても同じくらいの時間はかかる。だったらぼうっとし始めたこいつを引きずりまわさないほうがいい。
「チョコは3枚まで。それ以上摂取するな、主食が入らなくなる」
「わかった。鈴木」
「なに」
「野山の動物で、食えるやつ」
「そんなテーマと皇族の抱き合わせでレポート書きたくねーよ……」
鈴木は天才の思考過程に呆れかえって、まずはこいつを少しくらい人間に戻そうと、食事の支度のために立ち上がった。
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