雑種のひみつの『秘密』

清水玲子先生の『秘密』について、思いの丈を吐露します。

SS「スペシャルティ Ⅱ  ジャカルタの猫」

 

先日、わたしが出張中などに猫バイトに来てくれる若者と、うちでちょっとお茶をしました。

「読んでる漫画の影響でコーヒーを飲むようになった」

などと漏らしてしまって、あっさり

ポアロですか」

ときかれました。

そいつはアムロ・れいが(←混ざってる)二次界隈でFBIとデキていることは知っている程度のオタクでしたが、わたしとふたり揃って、FBIの名前をよくわかってない程度の知識しかなかった。

ということで(なにが)コーヒーを飲むようになった秘密はひみつです。

 

何十年前かの大学受験の頃は、とにかくコーヒー飲みまくりでした。

うちの高校、自由なところで、わたし授業中もコーヒーいれて飲んだりしてたんですよ。席も好きなところを選べたので、窓際の席を確保して、出窓?に自分専用のコーヒーセットを置いてました。朝、社会科準備室で先生方の茶碗を洗うのと引き換えに、ポットいっぱいのお湯がもらえて、それで一日飲みまくっていた。10代の頃からそんな好き勝手やってた人生ですすみません。

おとなになって飲むものはもっぱらお茶になったのですが、薪さんを見ててまたコーヒーも復活したのでした。

 

 

さてコーヒーといえば。

先日出先でインドネシア人から、コピ・ルアクのインスタント版をいただきました。

モーガン・フリーマンの『最高の人生の見つけ方』の

「くそっ」「猫に言えよ」

で一般にも知られるようになった??高級コーヒーです。

こちらのブログがこの豆に関してはわかりやすいです。

www.toretora.com

 

帰宅して早速猫ずにかじられたため、パッケージがボロくなっています。

上のほうにジャコウネコのイラストも入ってますね。かわいくないけど。

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インスタントだからとなにも期待せずハイハイといただいたのですが、コピ・ルアクが30%だとの表記が。ほんと?? 市販の豆でも5%しか使ってなくてもコピ・ルアクを名乗ってるのがあるらしいのに。

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ネットで調べても「独特の香り」という記述以外にどんな香りなのかが見つけられなかったので、試しに飲んでみました。

わたしとしては、薪さんの紅茶のときみたいになんかの作用でラリっちゃう、みたいな展開を期待したのですが、少なくともこのインスタント版は、

・溶けないものが入ってる(おそらく豆)

・それを直接摂取したせいか期待通り心拍数高まる

・たぶん本当は「上澄みを飲む」のが正しい

・が、薪さんの紅茶ほど媚薬的ではない(よかった)

・昭和の缶コーヒー並みに甘くて味とか香りは不明

といった結果に終わりました。

 

妄想をでっち上げるのには役立った。

ということでコーヒー物語その2です。

その1はこちら(内容に関連性はありません) → SS「スペシャルティ」

話題として再登場の甘いものはこちら → こうぶつヲカシ

それでラリったおはなしはこちら → 「鉱脈」

 

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スペシャルティⅡ ジャカルタの猫

 

 

 

 青木が持ってきたコピ・ルアクを、薪はうさんくさそうな目で眺めていた。

 「やめといたほうがいいと思うぞ」

 「ジャコウネコに不信感をお持ちですか」

 「そうじゃない」

 まさかこの豆にまつわる様々なエピソードを知らないわけではあるまい、と相互に腹の中を探るように見合った。

 「そんなことじゃない。このあいだ鉱物ヲカシの糖分を取りすぎて、ラリっただろ」

 「それは薪さんだけで、いてっ」

 「普段摂取してない化学物質は人体に予想外の影響を与えるんだ」

 甘いものを味わって夜じゅうどころか翌朝まで終始ご機嫌だった薪を思い出したらしく、だったらなおさら飲んでもらわなくては、と青木は俄然張り切った。

 せっかく手に入れたんですから、と有無を言わさずコーヒーミルに豆を流し込む。第八管区の部下が引き出物か何かでもらってきて、飲まないからとか何かの理由で職場に持ち込み、挽くのが面倒だとか何とか言われて消費者がいなかったのを、室長がさらってきたものだ。

 カフェイン中毒の家主はそれ以上阻止しようとはしなかった。少し警戒心を示した態度で、楽しそうな青木のようすを観察していた。

 それが3時間前。薪はいま、体力の限界をどこかに置き忘れてきたような輩に物理的に呼吸が困難になるほどの力で抱きしめられ、だが抵抗する余力がないので、かろうじての反撃として、目の前の肩やら耳やらに歯を立てていた。

 「あ、ぁ……薪さん」

 ところがあろうことかこの大男は、腕の中でひくつく小さな恋人の侵攻を、快感として受け取ったらしい。

 だからやめとけって忠告したのに! 普段から食事よりコーヒーを飲む回数のほうが多い薪ならともかく、さほど飲みつけていない青木が動物の消化酵素の影響なんか受けたらエラいことになりそうだ、という予感をもっと慎重に扱うべきだった。

 「目を開けてください」

 吐息をまぶたに感じてその声に従うと、潤んだ黒い瞳がそこにあった。こいつ週明けに抜き打ち検査なんか受けたら、薬物のスクリーニングにひっかかるんじゃないか、と心配になる。それほど青木の表情は恍惚としていて、だが同時に力強く澄んでいた。

 「あなたが好きです」

 「……うん」

 「猫のせいじゃありませんよ」

 「うん」

 「あなたは俺のこと、好きでいてくれてますか」

 インドネシアのあの豆の、独特の香りがする。あるいはこれは、青木の匂いかもしれない。鼻腔を酔わせる、艶麗な、普段の青木にはない官能的な匂い。力強い肉食獣の瞳が薪を見る、媚薬を呑んだような艶かしい匂いが染みてくる。

 「うん……」

 「あなたのことばでおっしゃってください」

 「おまえが、あ、」

 心臓の拍動が合わせた胸から直接響く。血液の逆流に肌を撫でられ、さざなみが立つような痺れが触れ合った場所からからだを揺さぶった。聞きたいなら攻めるな、結局僕のいうことを無視するおまえが悪いんだぞ、と苦情にもならない苦情が喉を出てこない。

 だがこの獣は実際には、薪の熱い喘ぎ声でじゅうぶん満足しているらしかった。

 

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