こんばんは。
先週 週の半ばに出張があったのですが、おとなの猫さんの中に超絶体調不良のひとがいたので、やめました。
出張届けを出してあったので、取りやめたら変更届を出す必要があるのですが、理由の欄に以前「猫の体調不良」と素直に書いたところ、上司の認印が既に押してあるのに、総務のおっちゃんに「仕事と何の関係が?」という付箋メモをつけられて突き返されたことがありました。事務方は黙ってハンコだけ押してろ、と言いたいのをぐっとこらえて、「にんげんの子供が体調不良でも同じことを言うのでしょうか」と付箋メモでやり返し、派手な喧嘩となったものです。
以来なにか仕事をサボるときには、理由の蘭に「家庭の事情による」と書くことにしています。うちにはにんげんはわたしひとりしかいなくて猫がたくさんいることは職場で広く知られていますが(←吹聴するから)、この理由で文句を言われたことはありません。
今日は短い猫のはなしです。
昨日なみたろうさんとこのコメント蘭で妄想を展開し(←よそでもそんなことしてます)、お返事で「猫ドラッグ説」が出てすぐ妄想した、また曽我猫の話。ニベア(楽屋落ちですすみません)より先にこっちを放出します。
オリキャラがいます。「はこべ」はもともと曽我猫の植物名(真名)です。にんげんのはこべは広島大学医学部の院生で博士号取得のための研究中で、曽我猫を育てたボランティアです。
うちに運び込まれて1週間くらいの頃のチーム室長さんズ。真ん中の黒っぽいのが曽我猫です。
今回のおはなしの曽我猫は、生後半年くらい。
これまでのまとめ:
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ある猫たちのはなし4
荷物を引きずった曽我が出張から自宅マンションに戻ると、小泉はこべがソファで寝落ちしていた。明かりが灯っていたし、ジーンズに少し毛がついていたがシャツに乱れはなく、意識を失ってからの時間は浅いらしかった。床には勉強が長時間になったときに彼女がかける眼鏡と、指から滑り落ちた研究データのプリントアウトが数枚散らばっている。横になった顔の前に曽我猫が丸まっていた。
表情が見えないほど毛皮に埋もれていたので、曽我ははこべが呼吸できないんじゃないかと心配になった。キジトラをそっと持ち上げると、温かい和毛の感触を失った頬がすぐにはこべの目を覚ました。
「あ。おかえりなさい。返してください」
「……ただいま。なにを?」
「曽我猫」
言われたとおりに元の位置に下ろす。「吸ってたんです」
「なにを」
「曽我猫」
はこべはそう言って、鼻から大きく呼吸した。「データ処理がうまくいかなくて、しばらくここで味わってました」
「吸うとうまくいくの」
「たいていは」
「今回は」
「今回も。あとは学校に戻って元の数字をいじります。もうちょっと曽我猫を堪能してから」
「っていうか、吸うってなに」
家主の質問にやっとからだを起こし、ほどいた髪をかきあげて床から眼鏡を拾う。獣を捧げるように両手で抱き、上向き加減にした顔の上に載せた。猫の曽我は脱力したまま、院生の顔に覆いかぶさるかっこうになった。
「ハラがいちばんおすすめです」
「どんな効能が……」
「セロトニン、オキシトシン、ついでにドーパミンまで分泌されて、リラックスした脳がいいアイデアを引っ張ってくるんですよ」
「ドラッグじゃん」
東大も相当変人の集まりだったが、懐かしいなあこの感覚、と思う。「そんな無防備に顔にのっけたりして、引っ掻かれるよ」
「このひとはそんなことしませんよ。しっぽ撫でてもチューしても逃げないし、抱いて寝ればずっと一緒にいてくれるし、わたしのこと大好きだし」
確かに驚異的だった。人間が自分の下でモゴモゴ喋っていても、脱力した体制を崩す気配もない。いやそれより、ふたりでそんなことしてたのか、俺んちで、と曽我は再びはこべから猫を取り上げた。
「大学に戻る前にごはん食べてく?」
「作ってくれるんですか」
「パスタ茹でるくらいでよければ」
「食べます」
「じゃあもう少し曽我を吸って待ってて」
人間の曽我はそう言うと、猫をソファに戻して、献身的なボランティアのために夕食の準備を始めた。
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