こんにちは。地震すごかったようですね。
とりあえずついったであちこち無事の報告が出るご時世、素晴らしいなと思ったんですが、自分のことは気が回らないもので。オタクアカでも猫アカでも「問題なかった」と呟いたのに、本名でつながってるFacebookで沈黙していたため、散々問い合わせをいただきました。みんな「猫だいじょうぶ?」というメッセで、やさしい……😢
うちはなにごともなかったです。なにもかも通常営業で申しわけないほど。
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ところでバレンタインデーですね。
何個かそれっぽいものを書いてたんですがまとまりませんでした。季節の行事に合わせたものをかけるみなさん、すごい……猫時間で生きてるからシーズナルなもの、うまく書けない。
心意気だけはあるので、プランEくらいだった最終案を申し訳程度に出しておきます(というより機会を逃して出すタイミングがないので、これを機にしょうもないものをあげてしまいます)。
3か月ばかり前に載せた「ある猫たちのはなし8」のつづき?です。
世にも珍しい?、曽我さんの恋バナ語りです。
『秘密』のアニメに、曽我さんの恋愛物語が出ているらしい、という話を小耳に挟みました。クリクリ坊主の恋の行く末を気にしてるのは、薪さんとわたしだけだと思ってたのに!!
アニメって、どの程度公式扱いなんですかね。なかったことにしていいですかね。とりあえず聞かなかったことにします。
ご新規さんは面倒でなければ「1」からどうぞ
→ もくじ2
届け
科警研の中庭でいちゃついてた俺たち
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ある猫たちのはなし9
俺が曽我さんにわりと仲良くしてもらっているのは、物理的にも移動手段的にも一番近くにいる「第九」の室長同士だから、という理由だけじゃない。なんといっても新人の頼りない若造だった俺に手取り足取りMRI捜査の手法を直接教えてくれたのはこの人だったし、他のメンツとのさまざまな意味での格差からなぜかイロモノ扱いされることが多かったふたりでもあったし。
「おまえにききたいことがあるんだけど」
そんなわけで俺は今日も第六管区のマンションに、曽我猫のダイエット計画を練る、という名目で遊びに来ていた。猫の用事ができると、曽我さんは俺の休み、つまり俺に時間があって薪さんに時間がなくてそれでも俺が休まざるをえないという、申し訳ないほど俺の都合のいい日程に合わせて時間をあける。もっとも曽我猫が半分口実なのは俺もわかってるから、それで罪悪感は帳消しになる。
「なんですか」
「おまえにしか聞けない」
「だからなんですか」
「相手が満足してるかどうかって、どうやってわかるの」
ほら話題が変わった。さすがにカリカリやちゅーるの話じゃないってことくらい、俺でも察しがつく。
「ええと……それはつまり、いわゆるベッドの中で、ってことですか」
「うん」
とはいえ俺に聞く? 噂によると岡部さんを始め、他の先輩方は俺のこと、モテない部類に入れてるらしいぞ。薪さんをのぞいて。
「はこべさん、不満そうなんですか」
「名前を出すな」
「すみません。まだ「届」、出してないんですか」
「出した。そうじゃなくて、おまえでも想像されたくない」
「しませんよ……」
なんなのこの人のこの過保護感。はこべさんて俺から見たら、薪さんとは言わないまでも、雪子さん並に鋭そうでおっかないけどな。
「相手がイッたかどうか、ってどうやってわかるの」
これはさすがに息が止まった。お茶が口に入ってないタイミングで助かったよ。
「つまり女性が」
言われなくても話の流れでわかりますけどね。女性、女性……いやいやなに考えてんだ、マジやめて俺。
「わかりませんね」
「えええーー……おまえでも無理なのかよ」
「そういうのはたぶん今井さんのほうが」
「今井さんに聞けるか」
「なんでですか」
「想像される」
「ほんっと過保護ですね」
まあ俺も人のこと言えないけど。
俺が薪さんから煙たがられるほど薪さんに対して保護者めいた態度をとってしまうことがあるのは、まだ小さい女の子を育ててるお父さんだから、じゃない。スーツの上からでもわかる細いからだ、脱がせてからじゃないとわからないなめらかな肌、そのときじゃないと見られない潤んだ瞳や汗で湿った髪や掠れた声や、あんな姿のあの人を一度でも見てしまったら、世界を敵に回したってこの人を愛して守るって、おおげさだとしても思っちゃうんだよ毎回。ほんとに。
そうなるとこの不器用なおじさんの気持ちも理解できてしまうので、遠恋仲間でもあるし、馬鹿馬鹿しい質問でも無碍にはできない。
「おまえはどうなんだ」
「こっちにふらないでくださいよ」
ちょっと目元が崩れたのを気取られたかな。相談があるって呼び出されたのは俺のほうなのに、不埒なこと考えてすみません。
「相手は満足してるのか」
「ええええーー……たぶん」
「なんでわかるんだ」
「顔とか、しぐさとか」
あとごきげんとか。
「具体的には」
「勘弁してください」
「知りたいんだよ」
いや俺だって語ってのろけたいですけどねほんとは。知り合いすぎるでしょ、想像される。あんな薪さんは俺だけのものだから、ってコレか曽我さんの懸念は。
「それはたぶん人によって違うし、だいたいなんでそんなことで悩むんです」
「いやあの。はこべちゃん、意外に肉食系なんだよ」
そこは正直、知りたくなかった。そうそう会う機会のない人でよかった、でないと変な絵ヅラが浮かんで、ってだからコレか、曽我さんが嫌がるのは。
「俺はセフレなんじゃないかと思って」
「――はああ??」
さすがに声が出たぞ。俺が薪さんのあんな表情やあんな姿を一生懸命脳内で鎮めてるってのに、なにその発想。
「最初なんか、突き飛ばされて押し倒されたんだぞ」
「曽我さんがいつまでも煮えきらなかったからでしょ」
「好きだとか付き合ってくださいとか、言い損ねちゃって」
「プロポーズじゃあるまいし、いいおとななんだからそういうこともありますよ」
「つまり大事なことをすっ飛ばしちゃったから、心配なんだ」
恋すりゃ犬も詩人だっていうけど。曽我さんの場合、ロマンチックさとかには縁遠いな。苦労してるなあ、はこべさん。
科警研の中庭でいちゃついてた俺たちを一瞥して、なにごともなかったかのように猫だけ受け取って立ち去った、クールな女性を思い浮かべた。ここはひとつ、援護射撃しておくか。
「あのですね。だったらそれを伝えて、確認すればすむんじゃないでしょうか」
「あ。ああ、そうかな」
「間違っても、俺たち付き合ってんの、とか聞いちゃダメですからね」
「ダメなのか」
「なんて言うつもりなんですか……」
「「先が見えない関係だけど、しばらく一緒にいてほしい」」
真面目なんだな。真剣なんだな。この誠意がちゃんと彼女に伝わってるかな。けど重いよ、そんな言い方で通じるの、すでに愛し合ってるふたりでしょ。
「正直に言えばいいってもんじゃないんです」
「それか、「あなたが好きです」」
うんうん、それそれ。
「「付き合ってください」」
「それはいまさら不要です」
もちろん後日、それを薪さんに告げ口したよ俺は。
「曽我さんとこ、届が出たそうですね」
「出てる。はこべさんは立派な女性だった」
そうだろうなあ、でなきゃいっそ薪さんが邪魔してるよな。付き合うだけで身辺調査までされて、びっくりしただろうに。
「それはよかったです」
「理解できんな。あれで何の問題があるっていうんだ」
「広島と東京ですよ。普通の人には、距離だけで大変な障害なんですよ」
「生きてるだけでじゅうぶんだろうが」
「……」
「……」
しまった。沈黙しちゃダメなとこだった。薪さんも同じことを思ってるのがわかったけど、でもいまさらそんな腫れ物に触るような関係じゃないですよね、俺たち。
「まあそうはいっても、曽我さんの気持ちもわかります」
「なぜ」
「あなた俺のこと、好きだって滅多に言ってくれないじゃないですか」
「……」
しまった。今度はイラッとさせたな。
ほんっと曽我さんって、手がかかるなあ。
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公式の曽我さん、いまでもお見合いしまくってんのかな。いっそ白石でもいいんじゃないかと思ったり。