雑種のひみつの『秘密』

清水玲子先生の『秘密』について、思いの丈を吐露します。

SS「求められて」

 

今日、20200202で線対称な日ですね。

 

先日お亡くなりになったかと思われたピンクゴールドのMacBook Airですが、寝かせただけでは治らなくて、アップルに電話しました。

アップルサポートのサポーターは、ずいぶんよくなった……5年くらい前までは、ま〜使えなくて、ただのヘビーユーザーであるワタシよりも全然Macを知らない人がマニュアルどおりの通りいっぺんのことしか教えてくれずにまったく役に立たないだけでなくやたら時間がかかる、というていたらくでしたが、今回はちゃんと仕事してくれました。よかった。ちょい手間かかりましたが、治りました。

ふー、春まで使えないのかと焦ったぜ、ピンクのマック。

この世でほとんど唯一、わたしの望む方向に望んだ通りに進化してくれてるのがMacなんです。あとは完全防水になってついでに水洗いまでできるようになってくれれば。

 

こちら新しいスクリーンセーバ。滾る。

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さてさて。もう30年くらい前のことなんですけど、いとこのひとりが高校生のときから付き合っていた相手がその後警察官になりまして、結婚しました。

ただでさえ掛け値なしの美男美女のカップルだったのに、警察官は結婚式の時に金モールの礼装の制服を貸してもらえるんですよ。もうね、高身長で地味な男前の実はハイスペック青木がこんなの着たら、式に参列した女の子みんな惚れる、ってくらいカッコイイの。 ←瞬時に妄想

※ぜひ「警察官 結婚式 礼装」で画像検索してみてください(そしてどなたか青木で絵にしてください)

 

いとこ夫婦はその後事情があって離婚して、同時にダンナさんのほうが昭和天皇大喪の礼に伴って警察庁に異動になったので(※)、その後の消息はわかりません。

が、いとこも結婚するときに身辺調査されてたんだなあ、と今に至って思った次第。

 

※1年前に事故ったときのかわいらしいお巡りさんに立ち話で尋ねたところ、通常県警で採用された場合によそへの異動というのは、手続き上いったん退職→採用し直す、となるそうですが、国の要請で大きな行事のためなどに(単なる出向ではなく)異動になる場合なんかも実際あるらしいです。

 

警察官だけでなく、自衛官や消防士もカッコイイらしいです。結婚式の礼装。青木は白いスーツも紋付袴の和装も似合いそうですけどね……妄想があさっての方向に広がってますけどね……(そして個人的には薪さんはドレスじゃなくて、ふたりともスーツで結婚してほしい。淡いグレーと白とか。どのみちめんどくさがって嫌がりそうですけど)。

少し前に世話した若者のひとりが自衛官と付き合っていて、数年で結婚しそうなので、式に呼んでくれないかなあ~と楽しみにしています。

 

 

上記の戯言の発端となった、年明け最初に書いた、「警察官は付き合う相手ができたら届け出て許可をもらわなければならない」件について。

青薪の心配をしてシミュレーションもどきのことはすでにやりましたが、思い立っておはなしにしたので、よろしかったら折りたたみの先へどうぞ。

 

 

 

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求められて

 

 

 「あの」

 ふたりの関係がそれまでの主に捜査を通じたものから、少なくとも水面下では変わって、数か月たった頃だった。実際にはその期間、片手で数えられるほどしか会っていなかったので、青木が神妙な顔をして切り出したのは、タイミング的には合っていたといえる。

 「届けを出さないといけないのかと」

 青木の腕の中でうとうとし始めたときだったから、意味はすぐにわかった。薪はうつつに引き戻された意識とからだを返して天井を見つめ、その真意を考えて黙り込んだ。

 法で決まっているわけではないし、所属先によっても程度の違いはあるが、交際が真剣で特に結婚に発展する可能性がある場合には、相手の素性を届けて許可を得なければならない。自分たちの場合には警察官同士であり、警察大学校入学時に既に身元調査はされているので、人物像が問題になることはない。引っかかるとしたら上下関係だろう、つまるところ科警研の所長とその部下なのだから。だが「第九」の捜査内容の独立性と特殊性を考えれば、人間関係を理由に即座に異動というわけにもいかない。そもそも事態がおそらくは想定外で、許可しないことの理由になるのかどうか。

 第一、届けるって、誰に? 青木の上司に当たるのは自分だし、薪は間違っても総監には報告したくない。だとすれば退官したとはいえ一番世話になっているのだから、特別顧問のあの人しかいない。冷静な声でまた「前代未聞」呼ばわりされるに違いないと思って、意図せず微かなほほえみが口の端にのぼったのを、青木に気づかれた。不安そうな目で薪を見ていた大柄な犬は、一気に耳をピンと立てしっぽをぶんぶん振るような、そんな嬉しがる顔を見せた。

 おまえが喜ぶような理由で笑ったわけじゃない、と訂正しておきたかったが、こんなに素直に感情を出されると、それもできなくなる。自分を試した男に腹を立てるべきところだったのかもしれない。とはいえ本心を悟られたことに気づいていないそぶりの若い恋人は、そうこいつは若いんだ、とついそれだけで許してしまうような、そんな純粋な喜びをまるでごまかしもせずにその瞳に映している。

 青木は確かめたかったのだ、自分の気持ちが届けを出さなければならないほど真剣であることを、薪が知っているかどうかを。直接きかれれば、先のことなんてわからない、と答えるしかない。俺が言いたいのはそういうことじゃないんです、と返されるだろうが、かつて薪を愛した人々はみな、薪を置いてこの世から去って行った。どんなに大切に思っていても、それだけではどうしようもないこともある。青木はただ少し臆病になっただけで、薪のそんな気持ちまで慮ったわけではなかったのかもしれない。だがそれでもよかった。おずおずと差し出されたその短い問いかけが、予想外に胸に沁みた。

 まだまったく不安で自信がなかった。避けられないほどの情熱を伴っていなければ、守り抜くことを自分に課した相手を、こんな形で受け入れたりしない。それなのに一緒にいて傷つけない確証がない。青木には大切なことはまだなにも伝えていないし、僕はきっとわかりにくいんだろう、と思う。青木はそんな薪に、自分の覚悟のほどを遠回しに伝えてきたのだ。揺れて不安定な背中を感じ取って、それを支えようとしてくれている。だからこみあげるいとおしさに負けそうになり、青木の頭をかきいだいて顔中にキスをしたい衝動に駆られても、薪の指はただ恋人の黒髪に遊び、眠るように誘導しただけだった。

 「あなたが好きです」

 あいさつのように繰り返されるその言葉は、それでもいつも真実の重みを持って薪の胸を打つ。僕も同じ気持ちだと教えてやるには、薪の側から見たふたりのあいだにある傷痕は、まだ深すぎた。その溝もこの献身的な温かさで、少しずつ埋められていくのかもしれない。まだ痛い、だが和らいでいく。青木はきっと待っていてくれる。今までと何も変わらず、ただ近くに黙って立つだけで、薪の殻をはずしていく。

 幸せそうな瞳をまぶたが覆う。落ち着いた体温の腕が薪を引き寄せる。闇に落ち込む前の最後の吐息に首筋をくすぐられて、それからふたりの熱は少しずつ均衡していった。

 

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