雑種のひみつの『秘密』

清水玲子先生の『秘密』について、思いの丈を吐露します。

SS「桜流し」

 

こんばんは。

今朝起きて布団をめくったら、あまりの寒さにびびりました。季節柄、暖房を弱めてはいたんだけど、真冬だってこんなに寒くなかったよ、家の中。まったく油断も隙もないな、北東北の春先は。

 

でもまあそのあとは、起き上がったら元気になってきた。なぜなら1週目の連日の会議が片付いて、明日から新年度体制が本格的に稼働するからです。新部署設立に伴う引っ越し第一弾も無事片付いたし、わたしは環境設定に左右される人間だとよくわかったので、これからはいままで以上に仕事が捗るはずです。嬉しい。

あと明日=10日月曜日から、ラジオ講座が始まるよ! 講座自体は先週からですが、ストリーミングが聴けるのは明日から。これも楽しみ。

今年は昨年度よりはマシな人間になれる気がします。

 

 

あ、あとですね、思い立って近所のダム湖に散歩に行ってきました。桜が満開でした。もう夕方だったので写真はちょっと暗いし、寒かったけど(←しつこい)。

ここ、こんな場所だったか〜。引きこもりにもほどがある。散るまで数日、通い倒そう。

 

 

さて、昨日の愚痴をトップに置いておきたくないばっかりに、今日も診断メーカーを回しました。青薪で書けそうなのが出なかったので、鈴薪で。

140文字SSのお題

 

桜も見てきたことだし、雨と桜の話になりました。第三だから、3月のおはなしですね。

最初『桜雨』ってタイトルをつけて、検索してみたらそういう言葉もあるけど、桜の季節の雨を他に「桜流し」ともいうそうです。

 

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桜流し

 

 

 春先の冷たい雨が降っていた。せっかくの桜が散ってしまう、折りからの気温の低さで、週末までもつだろうと思ったのに。

 「あ。薪」

 モニタを離れて休憩中だった鈴木は、外階段の踊り場で眼下の傘に名前を呟いた。18本骨の丸い青地に、濡れた花のかけらが点々と咲いている。呼ばれた影が立ち止まり、円を傾け、飛んだ雨垂れの隙間から琥珀の瞳が覗いた。

 「鈴木。さぼってるのか」

 「よく聞こえたな」

 「そっちこそよく僕だとわかったな」

 見下ろした平面図では、小さいし、などといういつもの軽口も使えない。少し前に新人の守衛が、ものすごく急いでるものすごい美人がいました、と意味もなく報告してきたことがあったが、あのときは「第九」の誰もが一瞬でその正体を見破ったものだ。

 「おまえはどこにいたって見つけられる」

 「仕事に戻れよ」

 「休んでるの! 朝から何時間モニタを睨んでたと思ってんだ」

 「成果が出なけりゃ、何十時間睨んでいようと同じだ」

 「手厳しいねえ。どこ行くの」

 「総監との懇談とやらに」

 「ついてってやろうか」

 「僕を助けるつもりなら、証拠の映った画を持ってこい」

 ほんとに人遣いが荒いな。深夜料金、高過ぎないか。

 鈴木はくるりと回ってきらきら光った雫が立ち去ろうとするのを、思いついて呼び止めた。

 「そうだ。帰ってきたら、夜桜見物しようぜ」

 「おまえは休むことしか考えてないのか」

 「はあ? 夜桜っつっただろうが。24時間闘わせる気か」

 「72時間だよ」

 薪は無慈悲に言い捨てると、今度こそ踵を返して駐車場へと歩いて行く。

 いつも気を張って、各方面とやりあって、ひとりでいろんなものを背負って。あいつは周囲に対してほんとに厳しいけど、それ以上に自分自身に厳しいしな、と波紋を広げる足跡を視線で追った。

 あれはまだ雪のちらつく季節だったはずだ。これは伝えておかなければならないと言いたげな守衛の口ぶりにも、なぜわざわざそんな報告をしに来たのか、当時は誰も意図がわからなくて無視した。俺たちは、俺は、あいつを見慣れてしまっているけど。そりゃ誰かに教えたくなるよな、あんなに凛々しく頑張ってる姿を見かけたら。

 鈴木は薪が花びらに覆われた車に乗り込むのを見届けると、桜雨の空間を置き去りに、MRI画像の待つ捜査室へと戻っていった。

 

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