雑種のひみつの『秘密』

清水玲子先生の『秘密』について、思いの丈を吐露します。

秘密のシン・東京科学技術大学(仮称)

 

少し前のことですが、興奮した連れ合いからいつものごとく電話がかかってまいりました。

東工大と医科歯科大が統合にむけて協議を始めるとのことです。理系ミーハー(?)なわたしも興奮しました。

オ 「これにまさか一橋がくっついたりしたらウケる」

奴 「……そしたらもう東大いらなくね?」

オ 「いや2位に転落した東大が頑張って相互に世界ランキングを上げる構図しか見えん」

奴 「ますます京大の経つ瀬がなくなるな」 ←失礼

 

新大学名は何になるのかな。「首都大学東京」みたいな評判悪かった(※わたしの周りでは)、あとから改名されるようなのじゃなくて、なんかカッコイイのにしてほしい。名前だけだったら慶應とか早稲田とかかっこいいですよね。国立大はそういうのないよね。

「東京科学技術大学」とかありそうだけど普通すぎるうえになんか頭よくなさそう。略称は「科技大」。香港とかになかったっけ(たぶん世界中にある)。英語名は Tokyo University of Sience and Technology, これも普通すぎる。工学部と医学部歯学部に特化してるってことでいっそ Institute でもいいけど、一橋が入ったら総合大学だからな。入れる気満々です。

 

どうでもいいことですが東大の英語名は The University of Tokyo です。ひとりだけかっこよくてずるい。

学生時代に東北大の法学部の男の子が、「東京には一橋も医科歯科も東工大もあるし、なんなんら学部によっては慶應もあるんだから、東大だけが一等賞みたいな The University of Tokyo なんて名称は間違ってる。むしろ東北大は東北で間違いなく一等賞でかつほぼ唯一なんだから(←それもどうかと思うぞ)、東北大こそ The University of Tohoku と呼ばれるべきだ」と主張してました。

なお The University of Tokyo の略称は UT です。これはとあるサークル内でのみ使われた暗号みたいなものでしたが、多少他のサークル等にも広まってきたようですね。

 

連れ合いの申告によると、東工大の学生数は1万人、医科歯科大は3000人。どっちも単科大とはいえ少ないな。そりゃ優秀な頭脳が集まるはずだ。合計してつくば大学くらいの規模だそうです。

国による交付金東工大が11位、医科歯科大は22位。医科歯科は自力でよそから取ってくる金額がハンパないので交付金はあまりアテにしていないとの噂。

とにかくすごいことなんですよこのふたつの統合は、我々(=わたしと連れ合い)にとって。

 

薪さんの老後はもう決まりだな! 異例の速さで出世して43歳で警視監、50歳で警察庁長官、52歳で早期退職後は統合後の大学院か附属研究所で、脳科学の教授として研究職に就く。博士号2、3個持ってて現場で研鑽を積んできて論文も山ほど書いてるはずだから、特任教授とか客員教授とかじゃなくて本職なの。

ついでだから統合と同時に科警研の寄附講座とか作ってさ、将来の天才たちの頭脳の統合のために道筋つけといてほしい。薪さんは現役警察官どころか大学生の頃から、バイトで非常勤講師とか客員教授とかやってるといいです。将来の「第九」入室者の青田買いもできます。

 

 

ところで大学といえば。

獣医に通うルート上にとある私立高校があります。ここいらの私立にはよくあることなんですが、立派な業績を上げた生徒の名前が個人情報まるで無視で張り出されています。

こちらはこの春、東大の文2に合格したという少年の張り出し。

 

東大の文2の入試成績が文1を上回ったと言われて久しいですが、この人も優秀だったんだろうな。

 

なおこの前年には別の女子が、東京大学理科3類 推薦合格」と張り出されていました。

は??? なんでそんな天才がこんな田舎にいるの??

私立なので、どこぞから奨学金つけて引っ張ってくるんだろうけど、高校の学費程度で……と思っていたら、こういうケースでは単に学費だけでなく、住むところ付き・なんなら親も一緒に引っ越し・教材費や受験費や交通費全額支給・ついでにお小遣いまで出る、とのこと。それで学校が実際に東大合格者を出してるなら勉強の内容も合ってるってことだから、頭のいい子供にとっての高校の選択肢としてはアリかもね。

 

この話を職場でしたところ、

「でもあれ推薦だからたいしたことないってみんな思ってますよ」

と返されました。

田舎者め……東大の理3なんか推薦のほうが難しいに決まってんだろ。

 

* * * * *

 

理化学研究所の研究員600人リストラというショッキングなニュースが流れてからまだわずかですが、試しに理研のサイトを覗いたら、その一方で大量の採用情報も流れていました。そりゃそうだよな、単純に「無期転換ルール」の10年で雇い止めにするだけなんだから、職場がなくなるわけじゃないし。

3月にクビになる人たちは再応募できないはずです。半年とかあけないとだめだったんじゃないかな。仮に1日休んで2日から雇用で10年リセット、が可能ならいいかもしれないけど、なんで頭いい研究者をそんなに冷遇するのか、バカにされてると思って応募しない人もいっぱいいるはず。

いやもう優秀な頭脳なんだから(理研の研究者だよ?? どこぞの学部生じゃないんだよ)無期雇用でいいじゃん、って思うけどね。そもそもこの制度、フランスで導入された大昔、若者が職の安定雇用どころかその逆で期限前にクビになる、ってとっくに問題なのはわかってたはずなのに。なんで導入した日本政府。

 

とはいえ国立研究所なんて有期雇用が常態化というか、どこか「若い天才たちの最初の一歩」的側面があったのは確かです。理研に限らず、国立の研究所に勤めて研究して数年も経てば、どこの大学にだって就職できるだろ、ってことだったんでしょう。これは海外の立派な大学や研究所でも普通にやってる策です。

ただ日本の場合、もともと人件費というか高度頭脳労働の対価が安いし、大学院重点化で博士号がやっすい仕上がりになってしまって取得者大量発生、価値がさがってます。コーネル大学で博士号をとってきたわたしの元カレの一人は、「俺の博士号とあいつの博士号、「同じ博士号」じゃないから」とよく言ってました。

高度研究教育に予算も割いてないし策も練ってないのに、「雇用」だけこんなに厳しいのはなんなんだ。頭いい人から日本を去っていくに決まってるだろ。

 

医科歯科大と東工大の統合話の背景には、国の無知無関心と愚策に翻弄された高度な頭脳たちの、雇用というよりは研究の未来に対する不安と憤りがあるのではないか、と思ったのでした。