雑種のひみつの『秘密』

清水玲子先生の『秘密』について、思いの丈を吐露します。

SS「誕生日の朝」

 

こんばんは。

台所の薪さん、少し配置を変えました。

調理時には立てて使うコンロカバーがあるのでこれで、まかり間違って料理する時でも薪さんはガードされて無事です。満足しました。

 

公式からは事後通販の事前通告(なんだ)が。

カレンダーと煎餅は賞味期限がありますからね。

ということは次の巡回展ではもうあのカレンダーはなくて、2025年のカレンダーに切り替わっているということですね!! ←気がはやい

 

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さて今日は、どうしようもないタイトルですが他にあまり思いつかなかった。

元絵はツブさんのかっこいい青木です。

 

かっこいい青木……定義矛盾では……(嘘ですすみません、薪さんを支える存在である青木はちゃんとかっこいいです)

 

空気の流れのように自然に妄想しちゃって書いたんですけど。

仕上がってしばらくして思い出したのは、いやこれ書いたことあるよね、朝甘えてる薪さんをシャワーに送り出す青木……(どの話だっけ)寝起きに至っては何回書いたことやら……ステーキ屋も前に行かせたことあった。

まあいいよ、今回のメインは青木(とシャツ)だから。シャツ(と青木)がかっこよければそれでいいの。薪さんが若干IQ低めですが、160が130になったくらい??(そりゃたいへんだ) そうなる疲労困憊の理由が昨夜あったということで!

 

折りたたみのあと、ツブさんの投稿に画像でぶらさげさせていただいたもののベタ打ちと、続きがあります。まとめて並べたら自分が混乱したのでいちおういいわけしますと、前半が薪さん視点、後半が青木視点です。色気は各位脳内補填でお願いします。

 

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誕生日の朝

 

 とっくに目覚めていたけれど、青木が身支度するのを黙って見ていた。ネクタイを締めて襟をなおして、腕時計をはめたあとにカフスを整える。最後に髪をかきあげると、視線に気づいていたような余裕を微笑の端にのせて、おはようございます、とやっとあいさつしてきた。

 「ゆっくりしててください。小一時間の報告会なので、移動を含めても2時間あれば戻れます」

 答えずにいると、はらりと前髪が落ちる角度で上から顔をのぞきこんでくる。

 「すぐですから」

 「別に急がなくていい」

 「さっと行って、さっと帰ってきます」

 「あのな」

 誕生日だし、と甘やかした気分の続きもあって、薪はつい正直に言った。「急いで行く必要はない、って言ったんだ」

 「……はい?」

 「ちょっとそこに立ってみろ」

 素直に姿勢を正した長身を、こちらも身を起こして見つめた。「なんでそんなに似合うんだ。そのシャツ」

 「さあ。恋人が見立ててくれたので」

 答える青木の目はいつもの直情的な素直さのままで、自分の姿がどう見えているか、ほんとうに理解していないらしい。

 「もういいですか」

 「こんな日に仕事だなんて、難儀だな」

 「それを理由にこっちに来られたんだから、いいんですよ」

 「さっさと片付けてこい」

 そうするってずっと言ってるでしょ、と機嫌よく上着を手にする。

 「あなたはもう少し休んで、俺が戻る頃までにはちゃんと、なにか着ててください」

 ひとつ歳をとった若輩者は、真意をいくとおりにも邪推できるセリフを残して、生意気にも楽しそうに出ていった。

 

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 ベッドを抜け出し、洗った髪を乾かし身支度を整えているあいだ、薪がとっくに目覚めてこちらを見ていることに青木は気づいていた。

 それは自分自身が薪に対してよくやるルーティンだった。起き抜けのからだをオーラのように包むしなやかさや眩しさ、整えていない髪の向こうに隠れて見えないかすかな表情の変化を想像するひそやかな楽しみ、そういったものが視線の根本でないまぜになっていく。だから逆に見られる側に立つのはちょっとした快感で、この難しい恋人がいったい何を考えながら俺の肢体を眺めているのかと思うと、こそばゆく愉快だった。

 そして仕事を予定どおり短時間で終えて帰ってくれば、これもまた想定の範囲内だったが、寝不足の美しい人は二度寝から全く目覚めていなかった。シーツ1枚の隆起の下に眠るからだは昨夜味わったのと同じ力強い流線形を描いており、青木はそれをまた壊したい欲望にかろうじて抗った。

 「薪さん。戻りました」

 声量をおさえて呼ぶと、うん、と物憂げに返事をする。

 「起きて、シャワーを浴びて。服を着てください」

 「んん。めんどくさい」

 「 “ ウルフギャング ” を予約してくださったんでしょ。肉をたっぷり食わせてやるって、おっしゃったじゃないですか」

 そうだったかな、と言いながらも薪はかろうじてまぶたを引っ張り上げ、高くなった太陽の光を受けて立つ青木をじっと見つめた。

 「天才じゃないか」

 「俺がですか」

 「そんなわけあるか」

 うっとりとして見えるまなざしの先にあるのは、肌に吸い付くように馴染む、キザで摘まれた綿花の生み出す傑作だ。「ほんとに似合うな」

 しばしば揶揄の対象となる長身に見合うくらいにおおげさでない程度まで鍛えた胸板が、小粋さと優雅さの絶妙な中間にある濃い色の布地に誇らしく包まれている。しみじみと呟いた声に、まったくですね、とこれまた真剣に返し、まだ気怠そうな姿を抱き起こした。

 「この格好を世界に見せびらかしにいきましょう」

 「そうだな。さすがに腹も減ったな」

 裸の背中を見せつけながらシャワールームに消えた肌は、ホテルの大きな窓を通った日差しを反射していた。始まったばかりの冬が終わりに近づいているような錯覚を起こす。

 黙っているときこそ策略で、素直に感情を吐露すればそれはほんとにただそう思ってるだけなんだよな、とゆうべ出会ってからの一連の表情を思い出した。それこそが最高のプレゼントだったが、いずれにせよ今夜も一緒だ。まずは本当の意味での腹ごしらえだと、青木はシャワーの水音を聞きながら思った。

 

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