雑種のひみつの『秘密』

清水玲子先生の『秘密』について、思いの丈を吐露します。

秘密の外国語 格

 

こんばんは。

秘密界隈の盛り上がりの片隅でひっそり、仕事が忙しすぎてテンション低くラ講ばっか聴いてるオリエです。

現在のラ講には色々と学習者を励ますしくみがあるんですが、このたび、「100回聴いた」トロフィーが5か国語、揃いました。

 

中身はさっぱり覚えてませんよ、念のため。

年末年始からやってたフランス語とロシア語はともかく、4月から始めたドイツ語まで、そんなに聴いてたとは気づかなかった。掃除と散歩と通勤の時間は、基本的に聴いてるからでしょう。

 

 

ドイツ語、開講後いきなり動詞文から始まって、3か月経ってやっと本格的に名詞文に入るという謎構成だったんですが、先日驚きのネタがあったので聞いてください。

ドイツ語には「動詞が文の2番目に来る」という、その強力さが謎なルールがあります。

 

んで、このルールがあるせいで自動的に他の成分の語順がわりと自由になってしまったりするんですが、その結果として、

Aoki mag Maki.

という文が、「青木は薪が好きだ」という意味にも、「薪は青木が好きだ」という意味にも、両方になりうる。という、衝撃の現象が生じます。

主語が文頭に来るとは限らない、というのは他言語でもたまに見られる現象ですが、どれが主語かわからないことがある、なんてのは初めて聞いたよ。

 

で、固有名詞は混乱を招くことがあるとしても、代名詞なら格変化したり、一般名詞は冠詞がつくことで主語であるとか目的語であるとかがわかる、ということになるそうなんですが、つまりドイツ語の名詞の格=名詞の役割は、なんと冠詞で決まるんですね。

これがわたしにとってどんな衝撃だったかというと。

【格を決める主な要素】

英語:語順(主格、目的格)、語尾(所有格)

フランス語:前置詞

ロシア語:格変化(名詞が活用する)

中国語:語順(名詞も動詞もいっさい活用しない)

日本語:格助詞(主格ガ・目的格ヲ、その他ニ・ヘ・デ・ト・カラ・ヨリ・マデ)

ドイツ語:冠詞(冠詞が変化つまり活用する)

めっちゃバラバラやん。なんでこんなに自由なの、地球上の言語。

フランス語とロシア語はかなり似てると思うし、ドイツ語も英語とかなり似てます。この4言語はしょせん印欧語なので、例えば人称代名詞に限って言えば格は格変化によって表されます。アイ・マイ・ミー、みたいなやつです。その点では、日本語や中国語と対比すれば4つとも似てます。

なのに一般名詞の格、なんでこんなに違うんだ。

 

 

チョムスキーという、言語学の巨人だったけど近年は政治に関する妄言を展開するようになってしまった学者がいます。この人、世界中の言語すべてに共通する、粗々な、たったひとつの「普遍文法」なるものを明らかにしようとしてました。それをプログラミングして、人間の言語をすべて理解・学習するAIを作るために。

彼の試みは成功せず、人間の言語を学習できるAIは未だ存在しません。ただし人間の言語にかなり近い出力をするAIはとっくに登場しました。今のところその究極が生成系AIです。AIの出力する「自然な」言語は、プログラミングによってではなく、ビッグデータを参照する、というただの「検索」「照合」のみによってなされています。これは実は、チョムスキーがまだせっせと言語の研究をやっていた頃から言われていました。プログラミングなんかするより、AIにたくさんのデータを覚えさせ、勝手に検索させる、というのが、「人間ぽい」「自然な」出力をさせるためには有効である、と。

現在の生成系AIは、振り返って見れば、「より自然に」なるために参照する十分デカいビッグデータと、それを瞬時に参照できるだけのスピードをもつコンピュータの出現を、ただ待っていたのだ、と言えます。

 

んで、さっきの格に戻ると、格という文法項目ひとつとってもこの複雑さなのに、よく世界中の言語を一個にまとめようなんてしたな、と(まあ直感ではわかるんだけど)思ったのでした。

 

 

ラ講は今期の半分以上が終了し、色々佳境に入って来てます。

今週のドイツ語は他に、

青木「ハラくっつい」

薪 「……なんだって?」

青木「あ、すみません、おなかいっぱい、って意味です」

※仙台弁です

的なのがありました。実際にはバイエルン方言でした。

薪さんはバイエルン方言も、基本的なフレーズはできそうですよね。なにしろカザフ語がしゃべれたりウイグル語が読めたりするくらいだし。

青木「ハラ減りました」

薪 「棚っこさへってだずんだばけ」(すみません)

(訳:棚に入ってるずんだ餅でも食べろ

 ずんだ:枝豆を荒く潰した甘いペースト)

青木「な、なんですって?」

あー再会まで、じゃなかった再開まで、まだ3か月以上あるんですよね。頑張って生きよう。