雑種のひみつの『秘密』

清水玲子先生の『秘密』について、思いの丈を吐露します。

秘密のジュラシック・パーク

 

アマプラで『ジュラシック・パーク』シリーズを観ています。全6作。昨年出た6を観たついでに、遡って最初から。

1、2、3は久しぶりに観たけど、初めて1を観たときの感動はすごかったなあ。いまでも覚えてるよ、CGに最初に感動したのが『ターミネーター2』、次が『ジュラシック・パーク』でした。『ジュラシック・パーク』は敬愛するクライトンの原作ということもあり、そっちも読んだ。カオス理論が映画より詳しく語られていて、当時ちょうどカオスに片足突っ込んでた自分は大変わくわくしたものです。

 

ジュラシック・パーク』については他に、恐竜が怖かった、という記憶があります。いまでこそ平気になりましたが、当時は怖くてですね。実家、風呂とトイレが外にあったんですよ。古い農家なもので。他に蔵とか漬物小屋とか井戸とかあって、どれもこれも薄暗い。それらの隙間から恐竜のあの目がこっちを睨んでいるような恐怖感があって、自分はたぶん1億年前に恐竜に食われて死んだことがあったんだ、と本気で思いました。

↓ これを経験したことがあるような感覚

 

こちらの漫画は映画とは関係ありません。佐々木淳子先生の『青い竜の谷』です。『ジュラシック・パーク』に先立つこと3年前の1990年の漫画。すごくないですか。

恐竜を孵化させて「恐竜ランド」で動物園みたいに展示して、そこで逃げたティラノが上の絵。

『青い竜の谷』は完全にSFなのでその後の展開は違いますが、『ジュラシック・パーク』を初めて観たときはこの漫画を思い出さずにはいられませんでした。

 

 

さてそろそろ妄想に入ります。

映画の中で、恐竜をコントロールできると信じて無謀な行動に出る人々が悉く失敗して食われるのを見ているうちに、薪さんならイライラして「あんな連中どうでもいい、もっと早く食われてくれてたらヨカッタんだ」とか言いそうだな〜と思いまして。

では始めます。

 

青木と電話がつながります。

「あれ、薪さん」

「あれ、じゃない。おまえいまどこだ」

「え」

「言えないような場所なのか」

「い、イスラ・ソルナです」←素直 ※コスタリカ沖の恐竜のいる島

「なぜ」

「そのごようすでは、ご存じだったんですね。舞ですか」

「おまえの愚行を僕が知った経緯なんかどうでもいい。すぐそこを出ろ」

恐竜の恐怖を知る人々にとって、恐竜との接触は一択、「関わらない」ことです。島に行く人がいたら引き止める、引き返す、連れ帰る、ととにかく「恐竜は怖い」「恐竜は襲ってくる」がデフォ。ゆえに青木の行動に血管がブチ切れそうになってる薪さん。

 

「ご心配なのはわかりますが、大丈夫ですよ」←この能天気さ、青木っぽい

「いっこも大丈夫じゃない! 僕に愛想を尽かされたくなかったらすぐ帰ってこい!!」

「あなたに愛想を尽かされたくはないですが、それはできません」

「青木! こら!」

切れる電話。激怒してスマホを床に叩きつけようとする薪さんと、あわててそれを止める舞。

「薪ちゃんやめて」

「舞、あんなバカな親のことは金輪際忘れろ。今日から僕がおまえの保護者だ」

「そんなわけにいかないでしょ」

「そんなわけもこんなわけもあるか! あいつはおまえと僕を捨てていったんだぞ」

「薪ちゃん、こうちゃんがほんとにそんなことすると思ってるの」

「……なに?」

「こうちゃんは、光くんの心臓に効く古代の薬草を取りに行ったんだよ」

にわかには信じられないながらも、青木がとうとうと語った詳しい説明をちゃんと理解し覚えている舞から、同じ説明を受ける薪さん。

※ 恐竜を復活させた人々は、同時に古代植物なども復活させています

 

「だからって……だからってなんで青木が」

「どこの旅行会社にも観光業者にも危険だからって断られて、近くの島でヘリを借りて自分で飛んでいくって」

「どうして僕に黙って行ったんだ」

「薪ちゃんなら、止めるか、一緒に行くかするでしょ。それはどっちも困るって」

「そんなこと言って、あいつ自身がTレックスに食われでもしたら、光も助からないばかりかおまえまで家族を失うんだぞ」(「また」失う、と言いかけて回避した薪さん、エライ)「Tレックスならまだいい、走り回って物陰を経由して、まだ逃げる余地がある。ヴェロキラプトルにでも遭遇したら万事休すだ、あいつのご自慢のでっかい——」

「……でっかい?」

「なんでもない」

「薪ちゃん、舞を怖がらせないようにと思ってやめたなら、逆効果だよ」

「でっかいからだも心も、上から下から横からバリバリかじられる」

「やだあああ」

泣き出す舞。こういうのはヘタクソな薪さん、テンパると激昂する(かわいい)。

「大丈夫だ舞、僕が行って連れ戻してくる」

「薪ちゃん、飛行機の運転、できるの」

「人を雇えばいい。僕の財力をなめるな」

薪さんカッコイイ!!

 

このあと薪さんはどこぞのお金持ちのプライベートジェットを借りて直行便のないコスタリカまで最短時間で直行し、そこからセスナを飛ばして自らハンティングさながら翼竜を牽制し、コマンドーみたいに銃弾を背負って島の入江に降り立つと、コンピー(ちっちゃい肉食竜)の群れを一匹一匹その正確な射撃でやっつけ、青木の元へと駆けつけます。なお得意のGPSがこのときも活躍します。

「青木!!」

「あれ。薪さん、来ちゃったんですか。俺のためにわざわざ」←能天気すぎる

「無事帰れたら、僕が殺してやるから覚悟してろ」

「だめです動かないで」

そこへ横からフンスとおっかない鼻息が。ラプトルです。映画を見るまで一般人は知ることもなく、Tレックスこそがいちばんおっかないと思っていた認識を強制的に書き換えられた、体調2メートルの中型恐竜です。知能が高く言語を操って意思疎通ができるという設定で、チームワークで狩りをします。しかも凶暴。怖い。

腕を伸ばして手のひらを見せて、ラプトルたちを牽制する青木。

※映画にもラプトル遣いがいます

「おまえ——まさか、ラプトルを制御できるのか」

「ちょっと口笛吹いてみたら通じちゃって」

そう言って指で輪を作って口に突っ込み、指笛でなにかを語る青木。ラプトルたちが会話みたいに応答し、クビをかしげて去っていきます。さすが無類の動物好き。ゴンか。

 

※ゴン↓ 一緒にいるのは「人になつかない」キツネグマです。巨大なテトみたいなどうぶつです(各方面にすみません)。

 

「よかった。さあ、帰りましょう。——薪さん?」

振り返ると薪さんがいません。

「あれ? え、どこに行きました??」

そのとき青木の背中に飛びかかった小動物が。

「青木!!!」

このタイミングで薪にゃんです。長時間のフライトと緊張感と怒りで心労がピークに達し、にんげんの形態を保てなくなったのです。

「わあ、びっくりしました」

「嘘つけ!! こんな恐竜だらけの島で飛びかかってくる奴がいたら、振り払って叫ぶだろ」

「びっくりしたのはあなたが猫になったからで、飛びかかられたからじゃありません」

「バカバカバカ」

「いててて。暴れないでください」

「おまえなんか、おまえなんか、帰ったらボコボコにしてやるからなー!」

 

実のところ怒ることにすら疲れてしまった薪さんに、青木はその後丸2か月もガン無視されます。電話しても出てくれない、メールの返信もいっさいナシ。当然デートも完全におあずけ。

ところがそれによって青木は、イスラ・ソルナから持ち帰った古代植物を煎じて薬効成分を抽出し、光の治療に専念する時間が確保できてしまいます。太古の植物は光の心臓によく効いて、スポーツ選手は無理だけど日常生活には支障がない程度にまで、光を回復させます。

薪さんはといえば、光の収監も隔離治療措置もまるでなかったことにして、いっぽうで光の動向には常に目を光らせ、牽制しながらも天使のふりをした怪物がだんだん青木っぽい天使に成長する姿を見守ります。青木に関しては、一生いじめてやる、と罵りつつもその行動力と情愛に深く感動し、でも絶対に言ってやらず、時々夜中に美しい寝顔をじっと見つめては、とんでもない奴だな、としみじみ生きて帰った奇跡を噛み締めます。

そしてそれからみんなそろって、ほのぼの幸せに暮らしましたとさ。

 

おしまい。光も、一回くらい幸せになる妄想があってもいいでしょう。全然好きではないけど、個人的には犯罪者としてはタジクより許せます。

お付き合いありがとうございました。