雑種のひみつの『秘密』

清水玲子先生の『秘密』について、思いの丈を吐露します。

SS「あなたに捧げることば」

 

こんばんは。今夜はなにか書くぞと思ってガチャを引きました。

実は仕事しようと思ってMacを開いたんですが、データ取得に必要な職場のサイトが例によってメンテ中でアクセスできず(※ 夜中に開くとおよそ9割の確率でメンテしてる、活動する時間帯が人と違うわたしにとっては非常に迷惑)、だったらおはなしを書いてやる!と思ってガチャを引きました。

 

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odaibako.net

 

前も出たやつですけどね、今回はおはなしにしました。

→ 秘密のあいうえお作文

勢いが大事なこともあるよね! ワンライで仕上げてあまり推敲してませんが、五十音に関してはわたしもけっこう芸人です。

 

行間や文字の種類など構成に工夫が必要なおはなしになったので、ページメーカーでなくておりたたみのあと、ベタ打ちです。よろしければお進みください。

 

 

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あなたに捧げることば

 

 

 家族の転勤についていくために退職する所員がいるので、と白石が餞別を集めに来た。

 「贈り物に添える色紙に室長もひとことお願いします」

 出された厚紙を受け取れば、さまざまな短いメッセージがびっしりと並んで、その一文字目が色違いのペンで丸く囲まれている。

 「なんだ、このかるたみたいなの」

 「五十音でどこまで書けるか試してるんです。ぜひまだ使ってない音でお願いします」

 添えられたメモには既に使われた文字にバツがついている。青木はざっと眺めて、『新たな土地での新たな活躍を期待します。』とさらさら文字を流し、わざわざふりがなを振って「あ」に水色のペンでしるしをつけた。

 「第九」も大所帯になり、いまやあまり親しくない、よく知らない派遣の所員もいる。部下から見れば自分は知られた立場だから、しらじらしくない程度に丁寧な言葉を選んだつもりだ。こういうのは相手との関係性によるから、いきなり書けって言われても意外に難しいな、と思った。

 薪さんのことなら簡単なのに。どんな五十音でもすぐふさわしい語彙を見つけられる。

 

 ずかに陰った瞳の中にまっすぐな情熱が見える。

 鳴のように轟く怒鳴り声に怯えた日々すら懐かしい。

 さしさを隠して、それでも隠し切れなくて。

 じり気のない水のように澄んだ魂。

 の精神と、心と。

 を閉じ込めた瞼、流す頬、受け止める唇。

 陽、俺を照らす太陽。

 徨い続けて、俺のものになってくれた。

 りないあなたの強さと、美しさと、潔さを。

 いしてる。

 

 「……室長?」

 「あ。ごめん。これでいいかなって考えてた」

 名前をサインして止まっていたペンを返した。気の利く部下は文言に目を通してうなずいた。

 「いいと思います。室長はご存知なくても、先方からすれば尊敬する上司ですから。「活躍」とか「期待」とか、喜びますよ」

 白石は満足して出ていった。

 語る対象が違えば同じ「あ」でもずいぶん違うな、あたりまえだけど、と青木も納得してモニタに向かう座席に戻った。

 

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