雑種のひみつの『秘密』

清水玲子先生の『秘密』について、思いの丈を吐露します。

SS「風立ちぬ」

 

こんばんは。

青木ワンコ(仮名)のテリトリーに侵入して、ベッドまで奪った今井猫と山本猫です。

茶トラ白の今井猫は最近 態度が悪くて、年長のおにいちゃん猫たちを追いかけ回して(群れない猫のくせに)自分がアルファになろうと息巻いています。年長さんたちをなだめるのが大変です。

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次のメロディまでさすがに書くことないと思ってたんですが、ありました。

猫家事が立て込んだり猫案件のしんどいのが入ってくると、ついったのオタク垢に逃げます。そこで見たいくつかのつぶやきから連想したおはなし。

 

第二管区の北部も先週やっと夏らしい夏がやってきまして、おかげさまで日中は毎日エアコンつけてます。何日続くかあやしいもんですが。二日ほど、夜に窓を開けて眠りました。でもゆうべはもう涼しくて閉めました。

漫画家の山内直実さんがこんなことおっしゃってましたけど。

40度。狭い日本も広いな……。

※ もちろんわたしも読み返しました『11人いる!』 既に30回くらい読んでるけど。

 

去年は汗だくになっていたす青薪の妄想とかしてたから、たぶん当地も暑かったんでしょうね。今年はそんな想像、ぜんっぜんしなかった。むしろ涼しすぎて(猫と)くっつきたい、とか思ってたら、ちょっと涼しくなった頃にくっつく青薪のおはなしができました。

 

SS「真夏の果実」のそのあとです。スイカ食べてます。なんかもう「真夏の果実」とかいう気温じゃないので(個人的にわたしの住処は今年は冷夏だったと信じています)、メロディ直前の落ち着かない気分の中、秋になる前にあげさせていただきます。

こんな時期にあげられてもな、と思ったらスルーしてください。なんでもいいからなんかくれ、と思ってる方のなぐさみにでもなれば。

タイトルが難しくて、夏の終わりというか秋になりそうなの なにかないか、と苦肉の策でこんなのになりました。

 

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風立ちぬ

 

 

 白い桟を抜けて入ってくる高層の空気に、だいぶ秋めいた冴えを感じるようになった。

 「窓、そろそろ閉めましょうか」

 「まだ、いい」

 薪の声は眠たげで、面倒だからそう答えたんだろうと青木は思った。

 「俺がやりますよ」

 「まだ、いいんだ」

 そう言うとからだを返してこちらに向ける。「腕」

 枕をふたつ積み上げて小さな頭を載せてやり、首の下に腕を通す。こうなると青木の胸の位置に薪の顔が来るので、襟元を寝息でくすぐられる。

 今日はずいぶん甘えるな、と細い髪に唇を寄せるふりをして、その下にある額の温度を確かめた。熱はないし冷えてもいない。むしろ空気のコンディションが近づいた体温で調整されて、同じ温度のぬくもりの境目があいまいになる。

 ことの最中もそうだった。結局青木の予想どおり、薪はけっこうな量の果物を消費した。問題はそこではなくて、しがみついた腕を離そうとしない人に水分を与えるために、奉仕人が自分の指とか口とかの部位を活用しなければならなかったのだが、薪はそれを甘んじて許しただけでなく、首筋から鎖骨を辿って胸にまで流れた果汁にも文句を言わず、青木の舌がそれを回収するのを愉悦をもって受け入れていた。だがそれはゆかしさの失われた姿というよりは、わかりにくい上目遣いの訴えだった。

 こういうときには肌を合わせていながら、少しばかり不安になる。だいぶ語ってくれるようになったその口で、読み解くのが難しい外国語のミステリみたいな心を説明してほしくて、仕掛けるように届く場所にくちづけていく。

 「もう、眠ろう」

 「……はい」

 面倒がられたかな、と諦めかけたところに、薪のつぶやきが続いた。

 「青木」

 「はい」

 「いつも、すまない」

 「……はい?」

 「さびしい思いをさせて」

 それから唇に喉元を捉えられた。こんなやさしいキスが一瞬ひどく熱かった。夏の終わりの気配が触れ合った体温で調整されて、いやまさか、そのために開けておけって言ったんだろうか。

 促されたとおりにまぶたを閉じてももう涙が止まらなかったので、青木は呼吸を抑えて、泣いていることが伝わりませんように、と祈った。この人相手に秘密なんか持てっこなくても、せめてこの小さなからだにはこのまま俺より先に眠りに落ちて、朝まで安堵から目覚めないでほしい。

 さびしいのはあなただと思っていた。それを案じていつもあなたのことを考えているつもりだった。あなたがひとりでいる時間を超えて、あなたのことを守りたかった。

 なにかおいしいものを食べるたびに、美しいものを見るたびに、一日が始まり終わるたびに、あなたのことを思い出して、会いたい気持ちを募らせていた。さびしがっているのはあなただったはずなのに、どうしてあなたに見抜かれたんだろう。

 

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