雑種のひみつの『秘密』

清水玲子先生の『秘密』について、思いの丈を吐露します。

SS「会いたい理由2 会いに来た夜」

 

こんばんは。ぐーぐるドライブの同期待ちしてました。たまにトロいです。

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去年 総務と多少もめながらもMacBook Air買い足しておいて、よかった……今年は一転、機材を発注しようにも物流が鈍くて入ってきません。困ってる同業者、いっぱいいると思います。

 

で、このあとさきほど作ったプレゼンの音声ファイルを職場のサイトにアップロードしようとしたらですね、メンテ中でした。

もう何度この、夜中に仕事してるとメンテに邪魔される、という事態に遭遇したことか……なんでこんな時間にそんなことすんの?? 午前2時くらいまではみんなフツーに仕事してんだろ。メンテナンスはせめて午前4時からにしてほしい。

 

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緊急事態宣言の出てしまった世界線で会えない青薪の話を書いてしまって、会わせないと、と思ってたので、会わせました。

会えてない篇 = SS「会いたい理由」

デートさせたかったんですが、普通の人たちって、デートって何するの?? 東京だと美術館がいっぱいあるからそういうところいいかも。って考えて、松濤美術館でデートするネタを妄想してたのを思い出しました。すっかり忘れてた、そのうちまとまったらまとめてみよう。

 

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会いたい理由2 会いに来た夜

 

 

 もう腕にかけられたジャケット。もう緩められたネクタイとはずされたいくつかのボタン。急いで来たのだろう、少し暑かっただけだとは思う。だがドアを開けて迎え入れたそんな姿を見た途端、浅ましいまでの欲望が一気につま先から駆け上がってきて、脊椎に重い衝撃を感じた。

 無理な日程でとか、遅くなって疲れただろうとか、かけようと思っていたつまらない台詞はいくつもあったのに、視線が合うと出てこない。それを正当化するような激しいキスを押し付けられて、追い詰められた壁際に頽れた。

 舌の先がちょっと触れて、それから一気に絡む。会えなかった日数を頭の中で性急に数える。8週間と3日。いつもより長めだった。

 空白の時間に比例して募っていた想いに心を囚われていたことを、匂い立つような欲求に伴って自覚した。こんなことをするために会いたかったわけじゃない。これが会いたかった一番の理由じゃない。それは確かだけれど、肌を剥かれて熱に触れてしまえば、漏れ出して耳まで届いた自分の喘ぎのせいで、言いわけがすべて無力になる。

 「あおき。――」

 袖を通したままのシャツが肩からはずれて、床に押し付けられた肩甲骨が硬い冷たさを拾った。そこから生じる痛みさえ、理性というよりは自我を保つための小道具となって、いまは逆にこの快感と安堵を長引かせる役に立つ。青木の瞳に浮かぶ焦燥が久しぶりすぎて眩しい。重なって倒れただけで、のしかかる体重のせいだけでなく息が苦しくて、どうしてもうこんなに切羽詰まっているんだろう、と背骨をのぼってくる甘い痺れに酔いそうになる。早く欲しい、指と、声と、視線と、自分をなぞる青木のすべてがもっと欲しい。顔を抱き寄せて崩れた髪をかきあげてやり、双眸の潤みを遮るレンズを奪った。湿った肌を追うように首筋を喰めば、若い恋人は薪の望みどおりに性急さを増していく。早く、もっと早く。からだを覆うものがすべて邪魔で、もう1ミリも離れていたくない。だが、

 「*****」

 耳元で冷静ぶって囁いたひとこととそれに連動させた指の動きに、青木のほうが声をあげた。撫で上げて辿り、離れて、制止しようとしてくる手から逃げる。広い背中に回した腕で青木のすべてを強く抱き、飛んでいきそうな意識を引き止める。

 「――っ、薪さ、ちょっと待っ」

 「黙ってろ」

 泣きそうな瞳。こぼれそうな輝き。そうそういつまでもこの目の中の宇宙にからめとられて、簡単に操られてばかりもいられない。

 「たまには、思い知れ」

 59日間は長かった。ずっと待っていた、青木が来るのを。こうして会えるのを、触れるのを。

 「m、もう、」

 「まだ、駄目だ」

 形をなさない、吐息、毛先、まなざし。震えてあやふやななまの唇、爪。暴走する焦燥とそれを隠蔽するずるい感情。

 全部おまえのものだけれど、小出しにして縛りつけてやる。

 ずっと会いたかった。だから簡単に終わらせたりしない。簡単に解放なんかしてやらない。

 

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