雑種のひみつの『秘密』

清水玲子先生の『秘密』について、思いの丈を吐露します。

北米の漫画事情

わたしがバイトでスカイプで日本語の会話練習相手を務めている、東京在住のロシア系アメリカ人がいます。イゴールさん(仮名)といいます。

前回の登場→  20190711 新宿2丁目の発見

 

今週のバイトで、大英博物館の漫画展の話が彼から出ました。

イゴールさんは漫画はほとんど読んだことがない、とのこと。 なにしろ漫画と春画を同じだと思ってる人なので ←芸術を解する人なので春画は見たことがあるという

※ ところでうちにある『江戸艶本へようこそ』という本(なかば研究書です)をみると、少なくともこの本に載っている絵では、ほとんどの人が着物を着たままやっています。全部脱いでるのはひとりかふたりくらいしかいない。着物だからこそ可能なのかもしれませんが、いろいろ妄想して 考えてしまった管理人です。

 

 

漫画に戻って。

日本における漫画の位置付けとして、とりあえずなんでも漫画で説明するとか、性別や年齢やその他諸要因で読者が細分化されてるとか、主題としてはなんでもありだとか、しごく一般的なことをイゴールさん向けに一通り説明しておきました。

※ 余談ですが今回の大英の漫画展にはコミケの最新カタログも展示されているとのこと……参加サークルはもれなく大英博物館デビューした、ということですね

 

 

彼にも話したんですが、北米の若者の漫画事情について。

欧州も同じかもしれませんが直接知らないので、アメリカとカナダに限定します。

 

海外での特に若者のあいだでの漫画やアニメの人気はけっこうなもので、一時期外務省が、「日本のポップカルチャーを世界に広めるための、そういうのにくわしい人」を、青年海外協力隊みたいな(やつのもっと下位の)ボランティアとして募集していたほどです。 あれどうなったんだろう、続報がない

北米でも事情は同じで、いまどきだとドラマやアニメにはすぐオタクのボランティアが英語の字幕をつけてくれます。たぶん海賊版だと思いますが、でもみんなどこかから探してきて見てます。

なお用語として「アニメ」というのは日本のアニメのことであり、トムとジェリーみたいなやつは「カトゥーン」と呼んで区別するそうです。「Manga」も同じで、アメリカン「コミック」と区別されます。オタクは「オタク」です。フランス語でも「オタク」です。

 

で、漫画なんですが、翻訳が出るのが遅くて高いんです。もう10年ほど前の話なので今はウェブ出版なんかで変わってる可能性もありますが、当時はバンクーバーの本屋で1冊2000円くらいで出てたなあ。日本ではもう10巻まで出てるよ、ってのがまだ3巻とか。

翻訳が出てくるのを待ちきれなくなった若者が日本語の勉強をし始めたものですが、これが大学の第二外国語で丸2年勉強してもセリフの一個もわかるようにならないので、あまりの難しさ(←マンガの)にみんな途中で諦めてしまうのです。

 

5年ほど前に知人のカナダ人が井上雄彦の『バガボンド』を読みたいので教えてくれ、と持ってきたことがありまして。

漢字が好きで、剣道が好きで、宮本武蔵の『五輪書』(の英語版)が愛読書の人です。

が、そんな人相手でも、1時間かかって説明して第一話が読み終わらなかった。物語のかかえる背景や文脈が、それを知らない人には難解なんですね。時代背景や古い語彙もあるし、現実に使われない「書かれた話し言葉」特有の表現とかもあるからね。

 

外務省の企画も、漫画なんかろくに読んだことない役人が「ヒマなオタクいるよね」とヘロヘロとでっちあげて失敗したんではないかと邪推しています。

オタクはヒマじゃねーんだよ……

 

『秘密』は英語版はどこまで出たんでしょうかね、第九編の終わりまでいったのかな。

ああいうのを無責任に中途半端に出版されたりすると、途中まで食らいついて読んでた人は続きが気になって悶絶して残りの人生を送るんじゃないか、と気の毒になります。

 

 

たとえその部分で同じ本に人生のかなりの時間を費やすことになろうとも、日本語の漫画が読める日本人でよかったよー。

 

最後に全然関係ない宇野さん(猫)の写真です。北米つながり??

何度も言いますがしっぽが超絶なさけなくてかわいい。

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