雑種のひみつの『秘密』

清水玲子先生の『秘密』について、思いの丈を吐露します。

SS「夕餉の支度」

 

こんばんは。ごぶさたしております。

あいだが空きすぎてブログの操作の仕方を忘れつつあります。まだ大丈夫でした。

10月1日に新部署が設置され、2日から稼働しました。異動したわけじゃなくてただ守備範囲に新部署が入ってきただけなので、忙しいことこのうえない。先週の平日は合計で20時間しか寝られなかった(午睡含む)。一匹狼で好き勝手やってたのに直属の部下がふたりもできてしまったので、恥ずかしい上司としてがんばります。

 

あと前期のラジオ講座、ぜんぜん覚えてないので無事とはいえませんが、なんとか完走しました。すでに後期のぶんが始まっています。ストリーミングは一週遅れなので今週からで、1週間ぶんがまとめて聞けます。薪さんと同じ趣味を楽しみたい方、いまが始めどきですよ。今季はドイツ語もフランス語も簡単です。こんなわたしですら第1週の全3回はぜんぶわかったし言えました。フランス語はアルファベから始まりました。アルファベをちゃんとまとめて聞いたの初めてです。ロシア語も前回・前々回よりずっと簡単です。どなたかぜひフランス語とロシア語をいっぺんにやって、わたしがよく起こすこのふたつが「混ざる」現象、他の人でも生じるものなのか確認してください。

なお中国語とビジネス英語は前期の再放送なので、こっそり前期も聞いてた方がいらしたら復習&理解増進のチャンスです。みなさんどうせiPhone持ってるでしょ、わたしはiPadで聴いてていまだにガラケーソフトバンクから買い替えの催促がしょっちゅうきてますが、とにかくそこにワイヤレスイヤホンを買い足すだけです。いまや百均でも売ってますし(1000円くらいですが)。

掃除機かけてる時間とワンコの散歩の時間、通勤時間が聴くチャンスです。外でぶつぶつシャドウイングして他人からヘンな目でみられても平気な人にはさらに向いてます。

 

 

猫と仕事と外国語講座で構成されてる日々、このままではオタクの名折れであるだけでなくせっかく連載再会が目前なのに体力不足すぎてテンションが上がらない。と非オタ生活を反省?して、近況報告ついでに短いの書きました。

何度も読んだような半端な話ですが、このお会いできなかった長い日々、そしていまも恐れている、連載が再開するとあの人がまた苦しむのではないかという懸念をごまかすために、薪さんがお元気でいらっしゃったことを祈って。

 

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 夕餉の支度

 

 

 食事の用意がほぼ整い、食前酒にシャンパンを開けましょうか、と尋ねるために視線をあげると、ソファでパソコンのキーボードを叩いていたはずの薪さんの姿が消えていた。せっかくのスープが温かいうちに探そうとして気づいたのは、小さいからだが丸まって膨らんだ毛布ならぬ俺のコートだ。

 この程度の寒さでもう冬の準備か、南国者め、って着くなり絡まれたんだった。でもちゃんと役に立ってる、俺を包んで、この人を包んで。大は小を兼ねるけど、薪さんをくるむと完全に布団か寝袋サイズだ。

 「薪さん」

 起こさないようにしたいがそれだとあとから怒られる。なぜわかるかというと、同じことを散々繰り返してきたからだ。一応声さえかけておけば言い訳にはできる。

 「……ん」

 「ごはん、できましたよ」

 「めんどくさい」

 「寝るならベッドにしてください。そろそろ冷えるし、疲れもとれないし」

 「動きたくない」

 「胃が温まればその気になりますよ」

 「なに作ったんだ」

 「カリフラワーをポタージュにしたんですけど」

 はあ、というため息と、舌打ちまで聞こえた気がした。

 「先に言え」

 それから手のかかる恋人はやっと、そのきれいな目を分厚い冬の上着の下から覗かせてくれた。

 「俺が食べさせてさしあげましょうか」

 「バカを言うな」

 そして少し生気を取り戻した顔も、からかうような声も、美しい呼吸も。

 なにを言っても抵抗されて、素直に休んでくれないけれど、それでこそはるばるやってきたかいがあるってもんだ。会えなければ呆れられることもない、面倒がられることもない。乱れたシャツと髪のまま食卓につく、だらしない油断した姿を知ることもない。

 「鶏もいい具合に焼けたと思います」

 「ソースは」

 「グレープフルーツを」

 「よし。試食してやる」

 この人にものを食べさせて機嫌をとるのは、熟練の技を要する難題だ。だけどこのあとには今季の最後のメロンも控えているから、俺は自信があった。

 かきあげた髪がリビングのライトを反射して、指先が光った。薪さんは今夜もきれいで、俺はもう満足していた。

 

 

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