こんばんは。猫さまの下僕、オリエです。
今年はあったかいですねー。っていうか、二重窓ってあったかいですねーーー。ペアガラスだからじゅうぶんですよ二重窓いりませんよ、とか言ってた建築屋、北東北の冬をなめんな。最初から設置してほしかった。
いざ二重窓でガラスが合計4層になったら、とにかくあったかい。夜でもいまだに暖房いらず……えっ。例年だとお盆明けには床暖入れるのに。日中に至っては暑くて裸族に拍車がかかります(そして外に出るとけっこう涼しくてびびります)。うまくすると一年目の暖房費の減少ぶんで窓設置の費用を回収できそうです。
さて。
なみたろうさん ブログ10周年&お誕生日おめでとうございます!
ついった見てたら風船飛んで、ヘッダの薪さんとこに溜まってました。
お顔が見えなくなったのでどかそうと触ったら、割れた。
なお本日の麗しい正装の薪さんはこちらです。
何名かの方の作業配信とかタイムラプスとか拝見してきて、アナログがもはや脅威的に思えます。
背後の植物の緑色が豊富……さすが500色の緑色、じゃなくて500色の色えんぴつ!
さてお祝いのおはなしを書きました。
昨日まで書いてたやつがシリアスで暗くなってきたんで、やめて(←前日だってのに大胆)、ここんとこ薪にゃんづいてるしな、と過去絵を探しに行って、コレにしたよ。↓
タイトルもこちらからいただきました!
なおカーテンレールの上の歩いたりフックを外してカーテンを落としたりした天才は、こちらの宇野猫です。
なみたろうさん 改めておめでとうございます! これからも精魂込めて色えんぴつを削ってください。
あとそろそろ猫さまをお迎えするとかどうですか、薪にゃんじゃなくて本物の。
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アフターケア
「怒ってませんよ」
青木は冷静な顔で僕を見ていた。窓際からおずおずと姿を現して、ちょっと首をかしげて耳を立てて、しっぽをゆらゆら揺らす僕の愛らしい魅力にのぼせあがったのを、できもしないポーカーフェイスで隠すように。
「……ほんとに?」
「あなたがどんないたずらをしたって、そんなことで怒ったりしません」
そりゃそうだろうな、こっちだって暴れまくったあとクールダウンしたときに、どうやってやり過ごそうか計算しまくったんだ。この上目遣いに勝てるもんならかかってこい。
「カーテンをこんなにボロボロにしたのに?」
「ちょうど代えたいところだったんです」
とはいえそれは嘘だろ、前回僕がびりびりに引き裂いてから1年たってない。僕んちのファブリックなのに、ぐちゃぐちゃにしたのが僕本人なら、買い替えてセットしたのは客人の青木のほうだ。こいつの心の広さはほんとらしい。太平洋並みだな。
「レールも曲げちゃったんだけど」
「えっ」
これはさすがに平常心でいるのは無理だろうと思ったものの、青木はびっくりしただけらしかった。「どうやったんです」
「上に載って、歩いた」
「ここの窓、めっちゃ高いのに」
「僕は猫だぞ」
「そうでしたね。楽しかったですか」
「うん!」
叱られもせず、むしろ僕が遊びでそれをやったことが理解されて、がぜん勢いづいた。「上から一個ずつフックをはずして、落とした。じょうずにできた」
「天才ですか」
カーテンがほとんど落ちている理由がわかって、青木は感心している。「真ん中に穴が空いてるのは」
「かじって、食べた」
「おなか壊しますよ」
「すぐゲロったから、平気」
「えっ」
そりゃ二重三重にびっくりするよな。「どこで」
「お風呂場」
「わざわざ掃除しやすい場所に……ありがとうございます!」
どんだけ甘いんだ。太平洋どころじゃない、太陽系級だ。
「ちゃんと流しておいたぞ」
「えーっ」
声が大きくなって、青木は風呂場にすっ飛んでいった。シャワーからぽとりと落ちた水滴にびっくりして暴れた僕が、シャンプーやらトリートメントやらボディソープやら、なんかよくわからないボトルやら道具やら、めちゃくちゃいろいろひっくり返したので床一面の惨状だ。当然片付けるのは青木の仕事だ。
「滑って転んだりしませんでしたか」
「したけどなんともない」
「そうでしたーー。あなたは奇跡の猫でした」
もはや銀河系クラスだな。こいつは僕のいたずらに、怒ったり困ったりするってことないのかな。
「濡れたんですね」
「ちょっと」
「それで着替えたんですね」
僕はしっぽをぱたぱた揺らした。
「よく見つけましたね。そのTシャツ」
「クローゼットのおまえの抽斗の、奥の奥にあったぞ」
「……もしかして……」
今度は廊下の向こうにすっ飛んでいく。家中引っ掻き回した業績を、きちんと話を聞いて律儀にたどってくれる。きっと一緒に遊んでる気分になってるんだな、こいつも。
僕はわくわくしながらあとをついてダッシュして、積み上げておいた服の山にそのまま突っ込んだ。
「薪さん」
青木の声は感動でぷるぷる震えている。「まるでアルプスじゃないですか」
「すごいだろう。僕がこのからだでどうやってこんなでっかくまとめたか、知りたくないか」
「想像できます。あのう」
青木のシャツやネクタイやパンツや、かつてシャツだったものや、ついでにふかふかのシーツとか羽毛布団とか、その中身とか。そんないろんな色と柄の、肌触りはすごくいい繊維とダウンのあいだからうっとりと顔を出すと、青木が顔を近づけてきた。瞳が潤んで、僕をまっすぐ見つめている。「お願いがあるんですけど」
「ん?」
「俺も、混ぜてください。その中に」
僕は目をきらきらさせて、一も二もなく青木を引っ張り込んだ。
そらみろ。僕だってほんとはふたりで大暴れしたかったんだ。途中から理性を失ったのは、断じて猫の本能に負けたからじゃない。青木が僕を放っておくからだ。ひとりで遊んでるのがつまらなくなって、いつまでも帰ってこないこの顔を困らせて泣かせてやろうと思って、僕のほうが泣いちゃったからだ。
「青木」
「はい」
「おまえ、僕のこと、好きなんだろ」
「そりゃそうですよ」
上も下もわからない空間でぎゅーっとされて、顔じゅうキスされて、僕の耳はもう感動でぴくぴくと震えてる。ここはひとつ、許してやるか。
「いつものあれ、していいぞ」
「やった!」
「特別だからな」
既に至近距離にあった鼻が、僕の濡れたハナにくっついた。ふたりの仲良しの合図だ。
ふざけて岡部にハラをなでさせてやったり、猫になった僕すら怖がってる曽我の手の甲にしっぽをばんっとやったり、野良猫に冷たい第一の検視官の鞄で爪を研いだり。僕が僕だって気がつかない新体制後の部下たちの前を猫足で素通りしたり、不思議そうな目でこっちを見てる波多野とその背後でハラハラしてる第三の頼れる室長の前で、ゆっくり丁寧に毛づくろいしたり。いろいろするしさせるけど、この特別なご褒美だけは青木としかしない。誰にも見せない。
「ふふふ。冷たい」
ハナチュウひとつでこれか。膝の上でだっこされてやってもいいぞ、特別のおまけだぞ。こいつの心の広さは、宇宙一だな。
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