雑種のひみつの『秘密』

清水玲子先生の『秘密』について、思いの丈を吐露します。

SS「猫パンの秘密」

 

こんばんは。

今月おはなしばっかり書いてますねこのブログ。暗号の話とかAIの学習の話とか、まとめようと思ってた小ネタはあるんですが、まだ調べ物が必要な段階で、落ち着いて記事にできんのです。

おはなしは浮かんできたらその場で音声入力する(しないと忘れるから)、という手法を身につけたため、フットワーク軽く書けるようになりました。ただし続きを忘れてこんなんなったりします。↓

 

 

今回はこの、ねこパンの続きです。ふたつまとめて載せます。

まずはふうかさんが焼かれた(日本語ヘン)っていうかお作りになった(やっぱりけっこうヘン)、いや「焼いた」「作った」でいいよね?! ねこパン。がこちらで。

 

家庭で作れるとは……。血迷って型を買おうかと思いました一瞬。絶対作らないのに。

これに感化されて書いた薪にゃんのおはなし、の誤字を直したやつが、ひとつめの「ミケ」です。ふうかさんありがとうございました、パンを提供してくださって! ←え

ふたつめはその続きの「茶トラ」です。レモン水は前回の記事をごらんください。

 

 

薪にゃん、もうすっかり界隈で共有というか定型というか暗黙知になってますが、仕様がわからないまま初めて書きました(たぶん初めてだと思う……それっぽいのは書いたけど。ということで「二次 薪にゃん」タグも作りました)。

二次の海を眺めたかぎりでは同盟委員長が

「「薪にゃん」の容姿や性質については、創作者によってバラつきがある」

「公式な設定があるわけじゃないので、「薪にゃん」はそれぞれの想う「薪にゃん」ですべて正解」

とおっしゃっているので、いいよねどんな薪にゃんも薪にゃんてことで!

 

 

薪にゃん及びねこパンマスター・青木のおはなしです。

 

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ねこパンの秘密 ミケ

 

 おみやげです、と持ち込んだかさばる物体に、鼻をひくひくさせている。あ、耳としっぽが出現した。このタイミングで薪にゃんとはナイスすぎる。足元でぴょんぴょん跳ねるからだを肩に抱き上げてキッチンに入り、俺はいそいそとパン切りナイフを取り出した。

 手にぶら下げていた紙袋をキッチンで開封すると、薪さんは肩からずり落ちそうに身を乗り出している。

 「うまくできたかどうか、気になって」

 そう言って丁寧に真っ直ぐに2度スライスすると、薄い猫の頭が出現した。

 「うまくできたか、ってどういう意味だ」

 「俺と舞で作ったんですよ」

 白地に茶色いハチワレの頭。スマホをかざして、3色のパンだねを丸めて型におさめた写真を見せてやった。ひげがぴくぴくしている。

 「ふたりで?」

 「いい仕上がりでしょう」

 「僕抜きで?」

 そう来たか。今日はツンデレあまえんぼバージョンかな。

 「ごめんなさい。その代わり、味見は最初にお願いします」

 小柄なからだをカウンターの上に下ろして、耳のはしっこをちぎって口に運んでやった。しっぽが大きくゆらりと揺れた。

 「チョコレートだ」

 「なんかのっけますか」

 「オレンジのマーマレード!」

 「ですよねぇ」

 なんで小さくなったときのほうがいっぱい食べるんだろう、この人。っていうかこの猫。

 「お茶はミルクティーにしますか」

 「うん。あとこれ、うちでも作る」

 「そうですね。型を持ってきますね」

 「そして舞が最初に味見する」

 「ですよねぇ」

 ほんとは3人で食べたいけど。こんな姿の薪さんは俺だけの秘密だから、ごめん、俺は猫パンを抱えてあっちとこっちをせっせと往復するよ。

 

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ねこパンの秘密 茶トラ

 

 青木が運んでくれたねこパンのうまいことといったら、口の中いっぱいに小麦やカカオの香りが広がって、とてもこの世のものとは思えない。どうやってこんなの作ったんだといろいろ尋ねてみても、「んー、ふふふ」とか「気に入りました? 嬉しいなあ」とか言を左右にして、なかなか白状しない。そこである晩、それはそのひと月ばかり前に初めてパンを焼いたのだという青木の保護者然としたやさしい微笑が、さらにいっそうの清々しいやわらかな態度を増した日だったけれど、今度は茶トラですと次のねこパンを持参して台所に入った青木のうしろについていった。不思議なことには、青木が取り出したねこパンは、焦げ目こそついていたもののしましま模様どころか色柄などもなく、耳まで白猫にしか見えない。おやと思って、背中にしがみついて息をこらして見ていると、薄いパン切りナイフを取り出した青木は、尖ったふたつの山側に刃を入れた。そのままスライスされた断面に、確かに額や耳の横にトラ柄のついた、しかも目の位置に干し葡萄が一個ずつ入った猫が現れたのだ。

 「どうやった」

 僕はすごい勢いで青木の頭までよじのぼり、くるくる回って肩におすわりした。

 「すごいでしょう」

 「猫界の魔法でも使えるようになったのか」

 「そうですね」

 青木はナイフを置くと、興奮して鼻をフンスフンスと鳴らす僕を両手でかかえて下ろし、目の前に抱き上げて、得意そうににっこりと笑った。「あなたが猫になっちゃう魔法に比べたら、微々たるもんですけど」

 

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