雑種のひみつの『秘密』

清水玲子先生の『秘密』について、思いの丈を吐露します。

メモ:「日本におけるオンライン・ハラスメントの現状と対策」

 

今日、「待機」という職務での休日出勤でした。なにかあったときのために表向きはなにもしないで職場にいる、というのが「レンタルなんもしない人」みたいでちょっとおもしろかった(本家レンタルさんがレンタル中にスマホばっかりいじってるの同様、わたしも待機中にMacいじってました)。

 

そのときどこかの、たぶんツイートからの紹介でたどりついた論文があります。今日はそのメモ。

元のツイートを見失ってしまったのですが、ついったではLGBTQ+やフェミニズム社会学関係のアカウントをいくつかフォローしているので、そこからきたんだと思う。

 

論文はこちらです。筑波大学にオンラインで出された論文のもよう。本記事のタイトルが下の論文のタイトルです。英語ばっかりに見えますがリンク先はちゃんと(?)日本語の論文です。

f1000research.com

 

のぞきに行くのがめんどくさいけど多少興味ある、という方のために、要旨を転載します。

要旨

ソーシャルメディア上の「炎上」はもはや社会問題といっても過言ではないが、日本語環境の炎上については、被害にあった当事者視点に基づいて検討した研究は稀少である。本稿では、オンライン・ハラスメントという概念を導入し、その現状を国内外の先行研究のレビューに基づいて概要を明らかにした。次に、Twitterで発生した女性記者ツイートの「炎上」事例を分析、ハラスメントを行うユーザーにはインフルエンサー群、インフルエンサーの犬笛に呼応する炎上加担ユーザー群、荒らしを行うユーザー群の三層があり、それぞれが異なる形で一人のユーザーに対してハラスメントを行っていたことを観察した。最後に、個人と組織が取るべき対策を述べる。

 

 

以下、感想とメモ。

まず単純に、使用してある図表の視覚的な種類が多くておもしろかった。

最近あまりこういう「手法に訴える」タイプのものを追いかけていなかったのと、そういうのを多少うさんくさいと思う性格なのとで、普段は特に注目しないのですが、わかりやすく効果的にさまざまな図表が使えていると思いました。

 

たとえばこれ。

「直接リプライの感情を自動で分類したところ、図 4 のようになり、大部分の直接リプライが批判的な内容であることが判明した。」ことを説明した図です。

図4 感情の自動コーディングの結果.

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なんのソフト・サイトを使ったか、が紹介してある点も便利。将来『秘密』の事件の内容とかを分析してMDIPで発表することがあったら(ないよ)使ってみたい。

 

 

以下、興味深かった論点を引用します。

数字つきの小見出しのあとの文章は、本論文からの引用、あるいは本論文が引用している先行研究からの孫引きです(引用符・出典省略、文によっては「。」を追加して区切ってます)。図もパワポのスライドとして論文中に挙げられたものです。

 

1 「炎上」の定義

「炎上」とは、ある人物が発言した内容や行った行為について、ソーシャルメディアに批判的なコメントが殺到する現象を意味する。

 

2 「オンライン・ハラスメント」の定義

オンライン・ハラスメントとは、「インターネット上で行われる、扇情的なコメントやヘイトスピーチの繰り返しの投稿(「荒らし」「トロール」)、サイバーストーカー、身体的な脅迫、同意なしに性的に露骨な画像を公開すること(「リベンジポルノ」)、個人情報を公開する(「晒し」「ドクシング」)などの行為」を意味する。

 

3 オンライン・ハラスメントの標的にないやすい属性

 1) マイノリティである、

 2) フェミニスト (旧来のジェンダー価値観に縛られない)である、

 3) 政治、スポーツ、外交、防衛、サイバーセキュリティなど男性優位の領域について意見する

※ ここで「フェミニスト」を「旧来のジェンダー価値観に縛られない(者)」としている点、頷きすぎてクビ痛くなりそう。

 

4 オンライン・ハラスメントの流れ

悪意をもつ行為者が、様々な方策を使用し、多数の媒体を通じて、複数の場所で、標的 (被害者)に危害を与えるメカニズムが存在する。

 

5 「そんなことより他にも重要な事柄がある」という関係ないことを持ち出してきて話題をそらす行為の定義

形式的誤謬ないし偽善の抗弁である「そっちこそどうなんだ主義 (whataboutism) 」

 

6 炎上の拡散

炎上を通じてハラスメントを行ったユーザーは、3 つの層に分かれることが見て取れた。すなわち、①インフルエンサー (高頻度炎上関与ユーザー群)、②インフルエンサーの「犬笛」に呼応する炎上加担ユーザー群、③荒らしを行うユーザー群、である。

計約 13 万人の炎上参加ユーザーの分析によれば、炎上参加者は他の炎上にも参加しやすいことが明らかになっている。5 件以上の炎上に関わったユーザー77 名に関する詳細な分析においては、それらのユーザー間にはフォロー/フォロワー関係が密に存在し、高頻度炎上関与ユーザーは多くのフォロワー数を持ち、同じ炎上トピックに対してツイートを行うという、情報の共振構造が確認できたという。

 

図7 インフルエンサーのフォロー/フォロワー関係 (カッコ内フォロー数、フォロワー数).

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図8 インフルエンサーによる引用RT拡散ネットワーク図.

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7 6の「犬笛」の定義

犬笛とは「加害的もしくは有害な意味を持つ二重、もしくはコード化された言葉や記号を使い、インターネット上の加害者グループに特定の標的を攻撃するように合図する行為」を意味する。

 

8 オンライン・ハラスメント対策

日本語のインターネット環境の場合、オンライン・ハラスメントに関する社会的認知度が低い。

個人ではミュート、ブロック、通報が最も基本的かつ効果的なハラスメント対策である。

日本では、2021 年 4 月 21 日、インターネット上で誹謗中傷の投稿を行った人を特定しやすくするためのプロバイダー責任制限法の改正案が可決され、加害者の特定にかかる手続きが簡素化された。

 

 

以上。

以前よりついったを追いかけることが多くなって、「賢くて物申す女性を貶めるツイート」はかなり目にします。トレンドを「モナコ」にしてあるためわずらわしい流行り物や名前も読めない芸能人の話題がいっさい表示されないのはありがたいのですが(↓)、

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差別とか下品とか誹謗中傷とかいう語の意味を理解していないついったらーもそのうちAIがわりと頭よく排除してくれたらいいのに、と期待しています。