雑種のひみつの『秘密』

清水玲子先生の『秘密』について、思いの丈を吐露します。

SS「寝物語」

 

前々回の診察で「趣味とか楽しめてますか」と聞かれて、そのときはまだ大丈夫だったんですが、前回の診察で聞かれなかった同じことについて自分で「楽しめてない」と思い当たり、その事実に落ち込んでしまったややこしい管理人です。

朝目が覚めて瞬時に薪さんのことを考えるだけで一日生きてるのが楽しかった感覚は、どっかいった。薪さんのことを考えるのが楽しくないわけじゃなくて、生きてるだけで楽しくてしかたないって感覚がどっかいっただけ(だけ?)です。

 

そこでというかなんというか、だいぶ前にどこかの大学の国語の入試問題だったかで読んだ、『千と千尋の神隠し』についての評論があるんですが。

※ 以下、用語やアニメの内容についてかなり適当に書きますが、大筋つまり課題文であった評論の内容としては間違っていない自信があります。

冒頭からぼーっとしてどんくさくて表情もうつろだった千尋が、異世界風呂屋に迷い込んで無理矢理にでもからだを動かしていくうちに最初はできなかったことがだんだんできるようになっていく。からだを動かすことによって意識や頭脳が覚醒していくという側面が(子供には)ある。

 

これ、子供だけじゃないよね、と思ったんです。

ここしばらく、書いたものが気に入らなくて次が書けなくて、という感覚があったんですが、なんかさくっとしたものをさくっととにかく書く、という「書く」行為を優先してみようと思いました。

脳みそがぼーっとしてる状態なので、ここぞとばかりガチャに頼る。ガチャいいですね、診断メーカーだと(最近あまりやってませんが少なくとも以前は)内容が日替わりですが、ガチャはすぐその場で次が回せるので、よさげなお題が出てくるまで延々回せる(回して終わってもいい)。

 

昨日頼って、今日病院(猫の)の待合室で書いたのはこちらです。

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odaibako.net

 

青木が披露した「舞の創作」は、いにしえのわたしの弟による創作です。

仕事もためまくってるので続く保証は皆無ですが、でも昨日思い立って今日書けたのが単純に嬉しかった。

 

 

寝物語

 

 「こんばんは」

 「……ん」

 「あ、すみません、もうお休みでしたか」

 「逆だ。まだ科警研にいる」

 「大きな事件でも起こったんですか」

 「それも逆。事件がないから放置してた書類を片付けざるを得なくなって」

 「いまやらないといけないんですか」

 薪が黙ったので青木は失言に気づいた。「週末を空けるためですね。ごめんなさい」

 「おまえが謝る必要はない」

 それはつまりあなたも俺に会いたいと思って下さってるってことで、と二重の失態を犯すほど青木も愚かではなかった。

 「お手伝いできればいいんですが」

 「じゃあなんか喋っててくれ」

 「このまま? 電話で?」

 「つまらん報告書ばっかりで眠いんだ。意識を保てる何かが欲しい」

 ということは、眠気が飛ぶようなおもしろい話をふらないといけないんだな、と急にハードルが上がった。薪には会話と資料閲覧を同時並行で進めるなど夜中の朝飯前だろうし、退屈な話題では本当に所長室で寝落ちさせてしまう。それは避けなければならない。

 「舞がもっと小さかった頃に、毎晩絵本を読んであげてたんです」

 「まだ1年生なのに『100万回生きた猫』とか読んでやって、スルーされたんだろ」

 「――」

 「言っとくが僕にだって子供時代はあったんだからな」

 「あなたの子供時代が舞と同じだったとはとても思えませんけど」

 「で、絵本を読んで、なんだ」

 「あるとき、今日は舞がこうちゃんにお話をしてあげる、って言い出して」

 「文字が読めるようになって嬉しかったのか」

 「いえそれが、自分で作った話だったんです」

 「どんなんだ」

 「6歳の舞の創作ですからね」

 「さっさと話せ」

 「『昔むかしあるところに、おじいさんとおばあさんがいました。ある日おじいさんは山へ柴刈りに、おばあさんは川へ洗濯に行きました。そして帰ってきて、町へ出かけて、ふたりでソフトクリームをぺろぺろ舐めました。』おしまい」

 「……」

 「薪さん?」

 電話の向こうの押し殺した笑いが漏れ聞こえた。

 「仲良しでいいな」

 「そりゃ俺の愛娘と、誉れの叔父ですもん」

 「おじいさんとおばあさんのことだよ」

 「あ。そうですね、はい」

 「よっぽどソフトクリームが食べたかったんだな」

 「ええ、まあ、まんまと翌日、連れていかされましたけどね」

 「知能犯じゃないか。将来が楽しみだ」

 ばさばさと紙を束ねる音が、すでに所員全員の退所した静かな「第九」に響くのが聞こえた。「だいぶまとまって目も覚めた。あとはひとりでできる」

 「お付き合いしますよ」

 「ここから先はひとりのほうが早く片付く」

 「じゃあ帰ったらメッセください」

 「僕を信じてないのか」

 「こういうときのあなたは信用できません」

 「ほんとにすぐ終わるよ」

 「電話ください」

 「わかった、わかった」

 「いただくまで、俺も寝ませんからね」

 「わかったってば」

 やっと切った端末の向こうで、残りの紙束に集中する姿が目に浮かんだ。灯りの消えた研究所のたったひとつ輝いて残る窓の奥で、上着を脱いだ背中をわずかに丸めて、スタンドの下の文字を追う榛色の瞳に反射する文字について考える。インクの羅列が奪っていく時間、それに翻弄される関係、ままならない日々のやりくり。とはいえ日常とは実際そんなものだ。それを乗り越えて繋がっているのが家族だ。

 すぐ終わる、というのが薪の確信のある予想なら、たぶん電話はほどなく折り返される。穏やかにあいさつしてそのまま眠りに導いてやれるように、こちらも些事をすませておかなければならない。そして次の寝物語の準備も。

 青木は真っ暗な自分の「第九」を背に車のエンジンをスタートさせて、家路についた。

 

 

 

 

折り畳みが二重にできないので(できてたらそれもすみません)白文字で失礼します。背景が黒い方には普通に見えちゃうのかな……隠してるわけじゃないんですが病気のウザ話なので。

 

 

少し前から精神科にかかってきます。古い総合病院なのでそういう名前なのかもしれませんが、普通に言うとびびられるので、母親と鬱病の友達と鬱病経験者の同僚にしか言ってません。わたしは全然平気です。

睡眠導入剤をもらうためなのですが、そこの精神科医も、その前にかかった職場のカウンセラーも、なんというか、イライラするんですよね。態度や、姿勢や、口調や、質問の仕方や、返しや、とにかくなにもかも。

一例を挙げると、書類も書けないメールも見られない返信してない、でも本務だけはなんとか、とカウンセラーに現状を伝えたら、本務に関して「プロ意識ですね」と言われまして。プロなら書類だってちゃんと書くよ!! こっちがだめだって思ってるときに持ち上げんじゃねえ! あれならわたしのほうがマシなカウンセリングができるマジで。

この話を鬱病経験者の同僚で、かつてNYに留学中に現地のシュリンクやカウンセラーにかかったという人と話をして、「日本の精神科医精神科医としての特別な訓練なんか普通受けてないし、そもそも問診自体が治療だという意識はほぼまったくないし、薬で治療するつもりらしいけどだからって的確な薬がすぐ出せるわけでもない」という同意に至りました。

幸いにしてわたしはただちょっと低空飛行なだけなので、とにかく眠剤さえもらえればいいです。

 

で、今回の週半ばに眠剤で突然めまいと吐き気がして翌日も一日通してフラフラで、そこで眠剤を中止したんですが飲んでないのにさらに翌日も眠くて、大変でした。日中突然寝落ちするほど眠いのに、夜ベッドに入っても寝付くまでに1時間くらいかかるんですよ。眠いのに(二度言いました)。

そのあと飲んだ去年の病気のための治療薬で再度めまいと吐き気がして、やっと原因が眠剤ではないことに気づきました。それが金曜日の夜だったため、本当なら年明けのはずだった次の診察を週明けにセッティングしてもらいます。

前のはメンタルに来るから変えてもらったんだけど、今度のは静かに落ち込んでガツンと脳に?来た。5年生存率を2%(それも97%→99%)上げるために飲み続ける価値が本当にあるのか疑っていますが、医者に聞いたら絶対「自分で決めろ」って言われるだろうしなあ。まずは違う種類に変えてもらいます。