雑種のひみつの『秘密』

清水玲子先生の『秘密』について、思いの丈を吐露します。

SS「めぞん鈴薪青 副作用」

 

こんばんは。

昨日はうちの猫さまが網戸を開けて脱走しまして、我が家で逮捕劇が展開されて大騒ぎとなりました。おもについったで。気にしてくださったみなさま、ご心配おかけしました。

 

3にん出てって、もしかしたら留守中にもっと出たのかもしれないけど、びびって戻れなくなってたのが3にんでした。

猫あるある……好奇心で出てくくせにびびって固まる。窓から戻りたそうにしていても、閉まってると入れない(あたりまえ)、入れてやろうと思って開けようと近づくと逃げちゃう。

ひとりは追いかけてびびりすぎて固まったところを捕獲。ふたりめは庭の外に逃げ出して隣家の庭に入ってしまいました。まず家に残った猫ずを順番に捕まえて飯場用のケージに突っ込み(=ワンルームの家なので他に閉じ込める方法があまりない)、出られないようにしてから掃き出し窓を開放し、隣人に頼んで庭に入れてもらって自分ち方面に追い込んだところ、無事開けてあった窓から中に入ってくれました。

 

3にんめは、外に出ると性格が豹変して野生化する脱走歴過去2回の(ふだんは)おとなしいひとでした。夜になって庭まで戻ってきたものの、やはり入れなくてまた闇の中へ。涙

その後、策を練りました。

 

はー、神経すり減った。

今朝はまだ多くのひとたちがぴりぴりしてましたがごはんは食べてくれて、夜には全員普通に戻ってました。早く捕獲できてよかった……。

 

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またリレー小説の続き?を勝手に書きました。

わけわかんない成分を青汁に入れてしまったことを、反省は言うほどしていないのですが(←おい)、理解に混乱を招いたまま放置するのはよくないとだんだん思い始めたので、そのあたりを解明??した小話を書きました。おもにぽてとすさんへのお返事として書いたものですが、中身が少々アレなので、ついったには流さずこちらでこっそりあげさせていただきます。

 

リレー小説の翌々朝の、仲良し三人組です。朝食の席ですが中身は微妙に猥談です。

かっこよくない鈴木さんが1ミリも許せない方や、なんのとは言わんけど経験を仄めかす薪さんや、バカっぽい青木(それは結構デフォでは←失礼)などが読みたくない方は、どうかお下がりください。

 

途中で出てくるのは、ニコラス・ケイジメグ・ライアンの『シティ・オブ・エンジェル』での話です。感想を聞かれた元天使が「温かくて、少し痛い」と言うのが印象的でしたが、わたしはリメイク前の元ネタの『ベルリン・天使の詩』のほうが好き。

 

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めぞん鈴薪青 副作用

 

 

 「つまりね、ある種の精神安定剤なんですよ」

 朝食の席でカンパーニュの薄いトーストにトリュフバターを塗りながら、青木が言った。食卓にはナッツ入りシーザードレッシングのサラダ、青野菜たっぷりでトマトとフレッシュバジルがいいアクセントになっている。朝は飲むものだけという薪も、ハーブの匂いにはそそられたらしく、ウッドボウルに取り分けられたのを抵抗せずに受けとった。サラダ菜、ゴーダチーズ、ももハム、サラダ菜、ビアソー、サラダ菜、チェダーチーズ、パンチェッタのベーコン、サラダ菜。薄い素材をどんどん重ねてサンドイッチにして、上を2枚目のトーストで締める。しかし鈴木は、カッティングボードに載せられ自分の前に供されたそれを、ぶすっとした顔で眺めるだけだった。

 「警告したでしょ。結構痛いですよ、って」

 連休3日目の朝、鈴木は前々日の騒動を忘れかけていた頃にくだんの痛みに襲われ、うおお、と悲鳴をあげて飛び起きた。

 「け・っ・こ・う?」

 「あんな程度で、おおげさなんだから」

 「マゾヒストのおまえは慣れてるのかもしれないけどな」

 「朝っぱらからみっともない喧嘩をするな。また一昨日みたいな騒ぎを繰り返したいのか」

 問題となっている妙な成分入りの青汁の、いちばんの被害者は言ってみれば薪だった。少なくとも本人は、今朝ちょっとばかり不憫な目に遭った鈴木なんかより、よほど大変だったと思っている。突然子供になって、両親と舞まで含めて小動物扱いされ、おとなのプライドを傷つけられた気分だ。

 「痛くなかった奴は黙ってろ」

 「いいじゃないですか、戻ったんだし」

 「人前で大きさが変わって、尊厳を失ったわけでもあるまいに」

 「尊厳は失った、たっぷりと。局所的な作用のほうがダメージでかいってこともあるし、昨日は目覚めてあの感覚がなかったんだぞ、元気な朝d」

 「はいはい、全部言わなくていいです」

 「青木はいったいなんで、あんな妙なものを飲んでるんだ」

 「おふたりは悟りに達して、親友と一緒の人生を楽しんでるようで、いいですけどね。俺、ずっと年下なんですよ」

 青木は自分用にもパワーサンドイッチを作り上げ、かじりつきながら答えた。「うまい」

 「自分で作っておきながら、ハムサンド程度で」

 「うまいって言ったのはパンチェッタのことです」

 小皿で並んだ材料の中から、薪も赤身の部分をひとかけ取り上げてつまんだ。

 「確かに、高いだけある」

 「選んだのも買ったのも俺だ」

 「だったらもう機嫌直して、食えよ」

 鈴木は芳しいマグカップを置いて予備の椅子の上の行儀の悪い大足を下ろした。これ以上拗ねていたら、今度は薪の雲行きが怪しくなる。

 「サラダ菜、もっと入れて」

 「グリーンレタスも足しますか」

 次のパンにまたバターを塗り始めたようすを見て、鈴木が聞いた。

 「青木は、結婚とかしないの」

 「俺の恋人いない歴、知ってるでしょ」

 「その気がないのか」

 「いまのところは、あんまり」

 「少し遊べばいいのに」

 「ご自分基準でものを語らないでください」

 「若さを持ち出したのはそっちだろうが」

 「言ってみれば、もやもやをおさめるための青汁なんですよ。そもそもああいう飲み物は健康体を目指して摂取するんで、そんなに間違ってないはずです」

 「だからって縮むとか痛いとか」

 「それは副作用的な反応であって本質じゃありません。痛みだって大したことないですよ、アレ本番に比べれば」

 「アレってなに」

 「察してください。まだ朝なんで」

 「おまえ、痛いの? アレのとき」

 「鈴木さんは痛くないんですか」

 「天使が人間になって初めてやったときくらいだろう。男のほうが痛いのなんか」

 「なんの話」

 「「おまえは/薪さんは知らなくていいの」」

 たいして関心もなさそうな薪が続けてコーヒーをすするのを見ながら、鈴木はなおもたたみかけた。

 「不毛すぎる」

 「俺はストイックに生きるんです。いつか出逢う恋人に、今から誠実になるために」

 「それって、離婚したくないんで結婚しない、ってくらい、ばかばかしくないか」

 「ニコラス・ケイジだって、天使をやめてすぐ試したのにな」

 薪の言葉にふたりが美貌の幼顔を見た。

 「わかってんじゃないか」

 「わかるに決まってんだろ。悟りに達して親友と一緒の人生を楽しんでても、僕にだって若い日はあった」

 「おまえが言うと違和感バリバリなんだけど」

 「とにかく」

 青木はレタスのフリルで厚みが増したふたつめのサンドイッチを鈴木のトレイに載せてやった。「俺の青汁に手を出すのは、金輪際やめてください」

 「「頼まれたって二度と飲まねえよ……」」

 

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