こんばんは。
なんか今年は梅雨明けしそうな気配です。去年はしないままの冷夏でしたので……今年も梅雨が明けないんじゃないかと毎年おびえる北東北人の気持ち、わかります?? 夏が短いもんで、どんだけ暑くても嬉しい。曇ると一瞬で涼しくなる地域に住んでると、「暑い!!」って騒ぎたいんですよほんと。
さて、先週の鈴木さんのお誕生日は、あちこちでお祭りでしたが。
なみたろうさん宅のおふたりをごらんください。
薪さんのおしり、うるわしい。見るだけです、撫でないでください。 ←撫でた奴
「おまえのメロディショックを和らげるために描いてやったわ」という情報があったので(※ありました)、いつもながらの勝手におはなしをつけるやり方でお返しです。じゃなくてお礼です。
なんか書きたいなと一週間思ってたんですが、ゆうべ突然思いついたので書きました。
仲良し鈴薪、いいよね……。
わたしのツボは、鈴木さんの前だと遠慮がなく、且つほんの少しスキを見せる薪さんです。たぶん公式だと思うんですけど。
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青時雨
「受付の子に、おまえの電話番号、聞かれたぞ」
午後の遅い時間だった。今日も長引きそうな会議と捜査の合間に、俺と薪は外階段の踊り場で霧雨の中庭を眺めながら、目と脳をリフレッシュさせていた。
「鈴木」
「なに」
「「子」はまずいだろう」
「……そこ?」
「セクハラ講習で指導されたばかりなのに脇が甘い」
「おまえこそ、陰でなんて呼ばれてるか知ってるのか。「第九のお姫様」だぞ」
「面と向かって言われたわけじゃないからハラスメントには当たらない」
「俺だってそうだろうが」
「電話番号だって?」
軽く始めた会話が小言に変わり、全然休憩になっていないと思ったら、簡単に話題が戻る。薪のマルチタスクなパラレル思考にもう10年以上付き合っていても、こいつはリラックスするってことを知らないのかな、とまだ不思議になるときがある。
「教えてないけど」
「あたりまえだ、個人情報って語彙を知ってるか」
「今度は機密講習の復習か」
「だけど鈴木」
「なんだよ……」
「受付はふたり、女子の××は人事に同期の友人がいる。僕の電話番号を聞いたのはただの口実で、彼女の狙いはおまえだよ」
「そんなことはない」
「脇が甘いっていま指摘したばかりだろ」
「そんなことないってば。聞いてきたのは男のほうなんだ」
身長差を利用して、からかうように細い肩に肘を載せる。
「……鈴木」
「なに。つよしくん」
「そいつが興味を持ってるのがそっちじゃないって、なんでわかるんだ」
「はああ?」
どこまで負けず嫌いなのかね、俺のかわいい親友は。「本気で言ってんの?」
「思い込みで判断するのはよくない」
無表情に整った横顔を、呆れて盗み見た。つややかな木々の緑が白い肌に反射していた。
俺に対してはいまだにこうやって、くだらない主張を押し通そうとすることがあるんだよな。いじらしいね。無言でむっとしたところとか、怖くもなんともないんだけど。
「まあな。言われてみれば確かにそのとおりだ」
「わかればよろしい」
不意打ちに対抗する多少の動揺を押し隠した強張りが、ほっと解けた。室長を支えるのが副室長の仕事だ、黙って折れてやる。
梅雨の空気が夕方の気配で冷えて、戻ろう、と薪が言った。肘の下から逃げた狭い背中について歩いた。
「調べておこうか」
「なにを」
「モテてるのが、おまえか俺か」
「「第九」の調査対象は死人だぞ」
じゃあ不埒な受付くんには、まず亡くなっていただかないと。
手を出すなよ、と薪が呟いて、俺の腹黒い妄想は冗談で終わった。
科警研内に「第九」が発足して以来、薪はずいぶんにこやかに見えていたものの、そこには気遣いもあったし、いずれにせよ中身も外側も別格すぎて他人がそうそう近寄れる存在じゃなかった。初夏の雨に濡れた葉のように瑞々しい美貌は、どこぞのお姫様だって裸足で逃げ出す。その点では部外の小僧の勇気だけは褒めてやってもいい。おっかない天才の外見に惹かれただけだとしても、俺を通した正攻法は評価できた。
それに万が一薪が正しいとしたら、むしろありがたい。目当ては俺自身のほうが、対処は簡単だからな。
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