雑種のひみつの『秘密』

清水玲子先生の『秘密』について、思いの丈を吐露します。

SS「鋭利な武器 Ⅱ」

 

こんばんは。

うち1年中24時間エアコンつけっぱなしなので乾燥がひどくて、加湿器を導入してるんですけどね(そして冬の間じゅう結露がひどかった玄関や押し入れでは除湿機を使ってるんですけど)。

電気代が安いし熱くならないから夏でも使える、と銘打たれていた、超音波式を導入したんですけどね。3つも。

一応事前にそこそこいろいろ調べたけど、書いてなかったよ、超音波式加湿器で家中が真っ白になるなんて……。先に言ってくれよ!!!!

 

白いものの正体はミネラル成分だそうです。加湿器のせいだろうと疑ってはいましたが、このほどそれを確認して、諦めました。加湿器のほうを。次の楽天のマラソンでスチーム式に買い替えよう(夏になったらどうするかはそのとき考えます)。

とにかくすごいんですよ、クローゼットの中の引き出しの中の服まで真っ白になるんです。ミネラル分だから叩けば落ちますけど、家具類も全部白くなるのでみっともないしべたつくし、掃除が大変。電気代がここからさらにあがろうが、掃除の苦労を代行してもらうと思えばスチーム式でいい。

加湿器を使わないと湿度が湿度計に出ないほど(20%以下)乾燥して皮膚の薄いところから真っ白にかゆくなるので、なにかはしないといけない。生きてくのって手間かかる、と思った次第です。

 

 

さて生活の不満は以上です。

今日は満足してない薪さんのおはなしを書きました。ついったにあげたものの改訂版です。

読み返したら少し前に書いたRと中身が似ていたので、っていうか同じだよ。コレ↓と。

orie2027.hatenablog.com

ということで情けないですが同じタイトルにしました。

なみたろうさんに捧ぐ。こんなんでごめんなさい。

 

交感神経ネタは、Kさんにも使っていただきましたが(ネタの相互提供?? ありがとうございます)、元の情報提供はこちらから。

 

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鋭利な武器Ⅱ

 

 

 50時間連続勤務後の逢瀬だった。飛行機で休めばいいと思って実際そうしたが、足りなかった。徹夜の出勤にはそれなりの理由があって、青木の場合は、というより「第九」の所員なら誰でも、そこに人の命がかかっているからだ。同僚や上司部下の関係がありがたいのはそれがわかるからで、出迎えてくれた薪は驚きに見張った瞳で、ひどい顔色だな、と言った。

 警告を無視したおまえが悪いと後になって言われれば返す言葉がない。だが朝露に濡れた薔薇の唇に触れた途端、吹っ飛んだ理性は愚かしい生存本能にとって代わられ、こみあげた愛とも欲ともつかない情動に行動の自由を奪われた。

 いつもより熱くてあっという間に燃え上がった。一度ずつ達した後、血の気がすっと引くようにブラックアウトして、そのまま一瞬で眠りに落ちた。重い、と押しのけられてなんとかからだを返したが、またすぐに意識を失った。

 何度か名前を呼ばれた。生返事もしたかもしれない。お風呂沸かしますとかごはん作りますとかパリに行きたいですねとか、からだが動かずできもしない脈絡のない発言を繰り返したことは、揺すられて軽く頬を張られて、腹に載った小柄なからだの熱さに覚醒させられて、やっと認識した。

 「疲れてるのはわかるけど。おまえが言ったんだぞ。「抱かせてください」って」

 「……すみません」

 「黙って寝かせてやろうと思ったのに。我慢の効かない子供みたいに」

 「ごめんなさい」

 「自分だけ満足して眠るつもりなら、」

 「え。いや、あなただってさっき、」

 言い終わらないうちにキスが降って来た。いつもより湿った唇を割った舌が侵入し、呼吸が苦しくなった。息を塞がれているからだけではなくて、その熱情にうかされた思いが伝わって来たせいだ。

 「あなただってイ、ってっ!」

 しつこく反論を試みたものの、伸びた指にこめられた力がそれを阻む。「い、痛いです」

 「目が覚めたか」

 「ちょっとソレ、気持ちよくな――」

 「気持ちよくしようとなんかしてない」

 睨みつけるまなざしが語る心は貪欲だった。「僕はまだ、交感神経優位なままなんだよ」

 「――」

 「寝た子を起こしたら満足するまで面倒見ろ」

 からだが目覚めてしまったのは薪のほうで、それをしたのは青木だった。胸の上に倒れてきた肩は夜気で少し冷えていて、ほとんど条件反射的に抱きしめてさすると、滑っただけの指先に反応した肌がこまかく震えた。

 そりゃいつもは怒られるくらいしつこいのは俺だけど。この人、もしかして。

 「薪さん」

 「……ん」

 「もしかして」

 脊椎をたどって下りていくと、猫みたいに背中が反って白い首筋が見えた。不満そうだった苛立ちが一瞬で霧消して甘い声に変わった。

 こんな触れ方でもう感じてる。もしかして、甘えてるんですか。

 否定するこたえが予想されたので、わざわざ聞いたりはしなかった。どっちでも同じだ、いま言われたように、満足させなきゃおとなしくならないなら、満足させるしかない。

 「ねえ」

 「んん」

 「愛してますよ」

 「……知ってるし」

 さっきは本能に支配された感があって、なんだか感情が後回しだったけれども。いまならはっきり言える。

 反発するような物言いも、どこまでも素直じゃない鋭利な態度も。愛してる。

 青木は肘をついて起き上がると、難しい恋人の面倒を見るために、夜を再開させることにした。

 

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