雑種のひみつの『秘密』

清水玲子先生の『秘密』について、思いの丈を吐露します。

SS「準備の仕上げ」

こんばんは。

2月第一週が毎年山場です。ほんとはこのあとに個人のでかい仕事があって、例年締め切りを2か月も破りながらやるんですが、今年は体力的にほんとうに無理なのですっぱり諦めました。だから今週さえ乗り切ればかなりラクになる、がんばる。

 

という宣言の舌の根も乾かないうちに、久々に当社比エロいのを書きました! 

うう、まだ薪誕めぐりすらできてないのに、でも降ってきたときに勢いでまとめないと忘れるの自分的にわかってるから、寝落ちしそうになりながら(←バカ)動物病院の待合室で書いた。

 

発端はついったの、というか猫の?? こちらです。

 

青木(か誰か)のそういう余裕のない仕草が最初の妄想で、いやでも青木では自分書けんな誰か書いてくれないかなKさんとか(←)、と思ってたところになみたろうさんが「男らしい」薪さんの想像をしてくれたので、書けた。

相変わらずそこだけ切り取ったすごく短いやつで、あんまり書いたことないタイプなのでクオリティも少々自信ないですが。テーマ(?)は「青木の感動」です。

 

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準備の仕上げ

 

 

 ほんのわずかな痛みに近い違和感に繰り返し攻められ、すぐにそれが馴染みのある悦楽に変わってくる。だいぶ手馴れてきた青木に、からだに先走る感情を引き出され操られてしまう。うまくなったな、と思うのは技術的なことばかりではなく、それに満足しない薪の欲求を正確に見抜いて、欲しい場所にキスをくれ、欲しいときに抱きしめてくれることだ。とはいえそんなふうに自分の状態を観察する余裕もすぐになくなって、いっそこのまま、と思うけれど、そこは許してもらえない。本音を言えば薪だって、一緒に先へ進みたい、青木を同じ次元に引きずり下ろして、感じさせたい。だが聞きたがっている懇願を口にしないのは、コントロールされるばかりの立場にいるのが悔しいからだ。すると心得た若者は、そろそろとかもうとか言葉で確認しなくても、観察するように静かに構えていた体勢から、文字通りお互いを重ね合わせて強く強く抱きしめてくれる。

 仕方のないことではあるのだけれど、いつもそのために青木がいったん離れていく。距離感がゼロの合わせていた胸が剥がされそこに入り込んだ空気に熱をほんの少し冷まされれば、理性ではわかっていてもつい、つけなくていい、とすら言いたくなる。

 自分の浅ましさを鎮めるようにひとつ深く呼吸して、ヘッドボードに腕を伸ばした姿を下から見上げた。汗で湿った喉仏がかすかに震えている。目的のものが見つからずにガタガタやっているので、待たされる不満をいたずら心に変換して眼前に近づいた乳首を舐める。わ、という声と一緒に頭上から落ちてくる、一雫の汗と、指を滑った小さなパッケージが。

 「あ……すみませ」

 言い終わらないうちに薪の指がそれを拾い上げた。反対の手で同時に別の場所を握ってやったので、言葉が掠れ途切れたのだ。組み敷かれた薪に残された数少ない自由のきく部位といえば、見上げる双眸、甘えた吐息を漏らす小さな鼻、シーツのあいだの薄闇の中でさえ発光する桜色の唇。その柔らかい膨らみの隙間に薄いプラスチックの包装をくわえこんで、歯と指でぴっと引き裂く。青木が息を呑んで急激に体温が上がったが、見つめる目ははずさない。千切れた端をぷっと吐き出し、取り出した中身を軽く吹けば、その微かな勢いを受けて、こちらに向けて垂れ下がった黒い前髪が揺れる。予告するみたいに裏表を整えると、備えるべき下部に持っていった。

 青木が顔をそちらのほうに向ける。膝で進んでやりやすいように腰を浮かせてくれる。だが視線はすぐに戻ってきて、潤んだスモーキーなまなざしにぶつかる。なんてきれいな男なんだろう、そんなことを考えて顔のパーツをひとつひとつ記憶に焼き付けながら、欲望のかたちと重さがますますはっきりと現れたその場所で、薪の手は準備の仕上げをしていく。本音ではもう少し触れていたいけれど、ひくひくと震える下瞼がこの先に進みたがっている。何か言いたそうに何度も開きかけた口が、結局不規則な呼吸だけをやっと押し出した。

 「……あおき」

 「まき、さん」

 「もっと、呼んで」

 「まきさん。まきさん、まきさん」

 泣きそうな声が途切れ途切れに耳に注がれる。作業を終えた手を背中に回して、このために離れていった胸をまたゼロの距離に引き戻す。ゼロからマイナスへ、深く迎え入れるために、両腕で、両脚で、全身でしがみついて、頼りなげな若い熱をなだめるように馴らしていく。

 「もっと」

 「あ、あなたが」

 ことばを軽薄にしないために、最中には青木がなかなか明かさない想いを、今夜は聞きたかった。言わせたかった。爪の先まで愛されて、それを行為だけでなく心で、確かめたかった。

 

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