雑種のひみつの『秘密』

清水玲子先生の『秘密』について、思いの丈を吐露します。

メロディ2021年2月号『大奥』

 

こんばんは。

前回の記事の「ヴィンテージ」に、過分なお褒めの言葉というか、嬉しい感想を複数いただきました。ちょっと自信なく出したおはなしだったんですが、気に入ってくださった方がいらして、恐縮しながらも感無量です。ありがとうございました。

感想を書くのって、書いて送るという行為自体にも、その中身を整えるのにも、衝動かエネルギーかあるいはその両方が、必要ですよね。だから素人の書いたものなのに、ひとことでも、言葉を練ってでも、反応をいただけるのは望外の喜びです。改めてありがとうございます。

もちろん読んでいただけるだけでじゅうぶんです。支部の閲覧数の数値がちょっとずつ増えていくの、地味に(でもすごく)嬉しい。

 

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さて本日のタイトルの話です。メロディ2月号で最終回を迎えた『大奥』を、読みました。

この号以前は『秘密』以外読んでいなかったんですが、もちろんいきなり最終回だけ読んだわけではなく、「マンガPark」で全話無料となっていたのを機に(さすがに期間内に全部は無理だったので)半分くらい読んで、あとは毎日のポイントで続けて読んで、本誌に追いついたので本誌を遡って読んで、最終回まで無事辿り着いた、というわけです。さすがに長くて、とりあたまでいろいろ忘れるので、2周しました。

 

感想なんですが。 ※ぼかしたネタバレが多少あります

とってもよかったです! 何度も読みたい感動的なお話、久々でした。

なにがよいって、まず歴代の主人公である歴代の将軍が、賢くて一生懸命で感情豊かで、すごく生き生きしてる。ひとりひとりが違ってて、自分が背負った苦痛の中でそれを受け入れて必死に、でもしなやかに生きてる。

異常なサイコパスも複数いるけど、読者の視点が置かれる主要登場人物は基本的に悪人じゃない。ひどいこともいっぱいあるけど、それぞれが誰かを愛してて愛されてる。その愛情が幸せに直結しないことにやきもきもするけど、だからって不幸なわけじゃないんです。

人物の描き分けも見事です。2月号の付録のカレンダー見て、全員名前わかっちゃうもん。

 

それにストーリーもその構成も素晴らしい。将軍の性別やその配置、選ばれた理由、それぞれの使命と、ひとりひとりにテーマがあってかつ全体の流れがまとまっています。史実ともうまく合わせてあって、荒唐無稽な異世界の話じゃない。

男女逆転とか感染症とか、当初はストーリー作成のためのよくあるきっかけとしか見えなくて、ふーん、とか思ってたんです。でも読み進めるとそこのところが物語全体の中できちんと追及されてて、それなのにそれは実はメインテーマではなくて。そのあたりが中心テーマだったら、たぶんこんなにおもしろいと思ってなかったな。

 

そして悲劇が山のようにあるのに、全体として穏やかな印象です。最終回が出てからまとめて読んだからそう思うのかな。

でも、最初の話が子供の悲劇で始まって仲を裂かれる恋人たちがいて死刑に至るので、悲惨さてんこもりだな、と当初は構えて読み始めたのですが、救いのない話じゃなかった。最終回の「よしながふみの描く希望がここに!!」っていうコピー、よかったなあ、ほんとにそういう話でそういう終わり方でした。

 

わたし子供の頃に、っていってもそんな小さい頃じゃなくて中高生の頃ですが、福永令三先生のクレヨン王国シリーズを読んで、ハッピーエンドなのにこんなに感動的で泣かせる話があるのか、と衝撃を受けたのです。

特に年取ってからは、人間の本性を炙り出す、みたいな話、いらない。そういうの読んだり見たりすると、「おまえに言われんでも知ってるし」とか「現実が悲惨なのはわかってるから物語くらい夢見せろ」とか思っちゃうんです。

※ 『秘密』は別格です

とはいえそれ以来、穏やかなハピエンなのに泣けて泣けてしょうがない、みたいな作品には(読むのも見るのも偏ってるせいもあり)なかなか巡りあえず。特にそれを求めていたわけではありませんが、『大奥』は久々にそういう作品でした。すごくよかった。

 

単行本を大人買いしました。最終巻もせっかくだから特装版を予約した。

※ 『秘密』も最終巻に至る以前に特装版を盛大に希望します

よしなが先生の漫画は『大奥』しか読んだことはないですが、男性の造形も好きです。見た目でいえば、地味めでシンプルでしゅっとした美形が好きなんですよねー。川原泉先生の描く男性とか、たまらん。

※ 薪さんは別格です

 

 

『大奥』を読んだあとだと、なんか雪子さんまでいい人に見えてきていい人として書きたくなります。

※ すみません悪い人じゃないのはわかってるんですが好みの問題というか彼女の立ち位置の問題で、気の毒な立場に置かれてるなとは思います(←雪子さん好きの方への言いわけですごめんなさい)

 

パターン1

シャトー・オー・ブリオンが(薪さんにとってだけでなく)鈴木さんにとっても特別なワインである(=自社設定)ことを実はあの別荘で鈴木本人(←たまに無意識に鬼畜)から聞いて、呑気に穏やかに「3人で彗星を見ながら飲みたかったね」などと本気で他意なくのたまう雪子さん。

 

パターン2

鈴木さんのことも薪さんのことも好きだったけどふたりとも好きすぎて男というより人間として仲間として好きすぎて、結婚とかセックスとかじゃなくてずっと3人で一緒に生きていきたいと思ってる雪子さん。

※ これはもしかしたら一般には評判の悪い女かもしれませんがわたしはそういう雪子さんなら嫌いじゃないです

※ ただし鈴薪的展開にどう影響するかとか青木の登場でどうなるかとか青薪にとってはどういう存在になるのかといったことは別問題

 

雪子さんごめんね。あなたがもっとめちゃくちゃな性格のとんでもない女性だったら、かなり歓迎したんだけど。 ←謝ってない

 

 

文字ばかりなので最後に、ダイソーの500円の猫カゴに詰まる猫ずをあげておきます。

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寒いのでみなさまもお気をつけて。