雑種のひみつの『秘密』

清水玲子先生の『秘密』について、思いの丈を吐露します。

SS「とぶらい」

こんばんは!

今日は午後からたまりにたまった書類とメールをやっつけて、ファイルボックスと心が軽くなりました。中身のない作業だけどデスクが片付いたのが嬉しい。それで少々ハイテンションです。ごはん食べる時間なくて夜メシが今日最初の食事だったーーでも今夜は久々にお持ち帰り仕事なし! 明日も夕方から遠出の出張なので、今夜は外が明るくなる前に寝ます。

 

 

さてテレビもなければネットニュースも滅多なことでは見ない管理人が、本日偶然発見したセミの記事です。寿命、思ったより長い、という話です。

 

headlines.yahoo.co.jp

 

あの純情そうな顔して実はわがままを振りかざすだけのタチの悪いコドモみたいな住田教授、どこか絹子を思い出すのはわたしだけ?? 今度は「でもひと夏なんてやっぱ短い」とか言いそうです。

対するエンディングの薪さんの想いの深さったらなかったですね。ジップの見た映像の美しさに匹敵する、感動のクロージングでした。語るにもいまさらすぎますが。

 

 

20190318 新幹線のフリーwi-fi で検討したのですが、鈴木さんが彗星を見るために薪さん(と雪子さん)を誘ったあの別荘地?は箱根あたりではないかと。箱根だということにさせてくださいとりあえず。

 

仕事が片付いたテンションと、あとたぶんメロディの発売日が近づいて血糖値、じゃなくて心拍数が少しずつあがってるせいだと思うんですが、キーボード叩きまくって蝉の話をさらっと書いたのであげておきます。「冬蝉」の美しい終わり方には蛇足ですけれども、まだ青薪になってない青薪です。

 

そういえばまだ余談追加。先日、資料を探して自宅の本棚を漁っていましたらば。

スライド書棚の裏の段から、うちにはないと思っていた『古今和歌集』が出てきてびっくりしました。しかも隣には『万葉集』まであった。いつ何を考えて買ったのやら……思わず、さらにその隣にあった林あまりの歌集まで引っ張り出してしまいました。でも林あまりの短歌は女みが強すぎてお題にはなりそうにありません。

 

あちこち飛びましたが折りたたみの後、色気のない、短い青薪です。せっかくなので掘り出した古今集から後付けでタイトルいただきました。暗い話ですが、青木が恋の予感を感じています(笑)。

 

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とぶらい

 

 電車の車輪が線路の上を滑るリズムには、1/fのゆらぎがある。それが鉄の箱で運ばれる旅人を眠りに誘なう理由だという。いま自分の肩にもたれて寝息をたてる室長にも同じ理由が適用されるなら、さっき山の中の誰かの別荘で泣いたこの人も、少しは安らぎに浸って葬儀での責め苦をなかったことにできるかもしれない、と青木は思う。

 蝉は地中に数年も十数年も眠り続けて、長く宇宙の夢を見る。目覚めて地上に這い出たあとのいのちだけを人生だと嘆くなら、教授は目の前に見えるものでしか世界の広がりをとらえられないのだ。100年たらずの人間の時間の中で、みなが知らないものがそのゆらぎの外側にないはずがない。触れて、見て、味わって、共有して知ることのできるもののほうが、狭く閉じられていないはずがない。装置屋の限界だな、と考える青木は物理学者ではないから、闇の広がりもその深さも冷たさも、温かさも、いのちの軽さも、もっとずっと感覚的に握り締める。薪さんもきっとそうだ、この人にとっての深淵は一秒が永遠で、その中をしずかに漂っていける人なんだ、と思う。だから自分を指差して責めるかつての恩師に一言も反論せず、何もなかったかのように葬儀の場を去ったのだ、と思う。

 青い鳥に憑かれたように箱根まで飛んできた薪の、あの衝動と涙が、なにか別のところから吹き出したものだったことは青木にもわかった。意図をもって傷つけることで自分の悲しみを消化しようとした住田教授の、偽善的で幼稚な感情などを浴びたところで、この人の何かが損なわれたりはしない。この人はもっと大きななにかでもっと深く、甚だしく傷ついたことがあるのだ。簡単に崩すことなどできない強い心を誰が傷めたのか、口に出されなくてもなんとなくわかった。怖さが先に立つ上司だった薪の寝顔に心が締め付けられたのは、彼のまだ乾かないいたみを垣間見たせいだと、そのとき青木はまだそんなふうにしか理解していなかったけれど。

 

 ひぐらしの鳴く山里の夕ぐれは風よりほかに訪ふ人もなし  古今集 詠み人知らず

 

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