雑種のひみつの『秘密』

清水玲子先生の『秘密』について、思いの丈を吐露します。

SS「パリ・コネクション オテル・ド・クリヨン」

こんばんは。

猫室長さんたちがでかくなって、夜ミルクのあいだをあけてもおとなしく寝ててくれるようになったので、ゆうべはにんげんのベッドで爆睡させていただきました。

にんげんの岡部さん曰く「ネズミだっ」で実際 仔猫はそんなもんなんですが、生後数週間から1か月でだんだん「猫」に変化します(調子悪かったり弱ってたりすると猫になりません)。無事「猫」になるといつも、はあ乗り切った、という気がします。

 

右下の宇野さんがでかいことがよくわかるサイズ感。

上の3にんは自分のてのひらの肉球をおっぱいがわりに吸っています涙

中央の今井の伸び具合がヒドイ。

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さて。

ツブさんのイラストを拝見していて拗らせた妄想からできた、すごく短いおはなしです。

すずまき妄想が個人的に楽しくて 恋する者からしたらあんな鬼畜な男はいない気がしますがうちの学生鈴薪はとりあえず異常に仲がいいだけなので薪さんしあわせです(異論のある方すみません) 青木を忘れそうになるので、青木を起用したメロディ発売前のわたしのリハビリです。

 

ツブさんご本人から許可をいただいたので披露します。

よ……よそさまの絵でおはなし書いたの初めてで、緊張します…… 

www.pixiv.net

「パリ・コネクション」というタイトルをつけた別のおはなしがありまして、推敲中なのと公式の青木の出方を待っているのとであげていないのですが、その翌日です。立派なところに泊まってます。

 

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パリ・コネクション

 オテル・ド・クリヨン

 

 

 ドアにノックの音がして、ノブが回った。

 「お支度できましたか」

 青木が入ってきたとき薪は、豪奢な準備室の巨大な姿見の前で、カフスボタンを留めているところだった。鏡越しに目が合うと、青木が息を飲んで目を見開いたのがわかった。

 「なんだ」

 腕の時計を確認しながら振り向くと、眼鏡の奥の困ったような視線と出会う。

 「珍しいですね。オールバックなんて」

 「ヨーロッパの硬水のせいだと思うんだが」

 薪はサイドをかきあげながら言った。「ゴワゴワしてまとまらないんでいっそあげた」

 青木が近づいてきて、薪の蝶ネクタイを少し直す。

 パリ警視庁の警視総監から食事に呼ばれた場所は、ナポレオンとジョゼフィーヌが愛したレストランで、シャンゼリゼにある「ルドワイヤン」だった。三つ星とはいえ今の時代、ここまで正装する必要はないのだが、総監が個室をとったと言ってたから、と薪はクリヨンのブティックから青木のぶんもシャツとタイを届けさせていた。

 「おまえやっぱり、上背と肩幅があるから正装が似合うな」

 薪も同じく手を伸ばしてボウを整えてやる。

 「薪さんはその、いつもより眼光鋭くて、大変です」

 青木がよくわからないことを言う。

 コンコルド広場に面した18世紀の宮殿に、この美しく洗練された男性はよく似合った。礼装でも、何も身につけていなくても。窓枠で切り取ったパリの景色が寝たまま眺められるバーンスタイン・スイートにいて、今日はベッドから抜け出すのが大変だった。薪も昨日の一件もあってか、たやすく青木を甘えさせた。ここまでお膳立てされて、そのうえ真っ向から何気なく褒められたのでは、まだ若い九州の室長がぽうっとなりそうな場面だった。

 「あの」

 だが青木は言いにくそうに口ごもって、薪の髪のほつれ毛を指ではらう。「前髪、おろせませんか」

 何に戸惑っているのかと思ったら、妙なところにひっかかったな、と薪は眉根を寄せる。

 「なぜ」

 「下からスタイリストを呼ぶとかして」

 「だからなぜ」

 「理由を言ったら薪さん怒ります」

 「試してみろ」

 「――他の人に見られたくないんです」

 青木がほんの少し赤くなって目をそらしたのが、怒られるのが怖いからでないことは、すぐ見て取れた。

 「薪さんが普段髪を乱すのなんて――」

 「言わなくていい」

 青木の口に手をあてて遮る。「わかった。まだ時間もあるし、なんとかする」

 「ほんとですか」

 皇帝と皇妃が踊ったフロアで、これから3時間も4時間もかけて総監夫妻と同席するというのに、「野性味あふれるあなた」のことしか考えられないようではたまったものではない。僕のそんな顔を見たことのない他人には髪型がどうであろうと関係ない、そう説教してやりたいところだったが、ゆうべ遅くからずっと自分の「そんな顔」を見ていた恋人には、言っても無駄なことだった。

 「パリ最古のレストランで、食事のあいだじゅう妙なことを意識されたんじゃ困る」

 青木がもごもごと謝るのを蹴り出すと、薪はため息をついて手を濡らし、ドライヤーを握った。

 

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なにしろフランスですから、薪さんが(部下ではなく)男の恋人を同伴しても総監夫妻もレストラン側もまっったく気にしません。

結局オールバックでなくなってしまう、というおはなしでした。