なんかもう、こんなに毎日 ブログとおはなしばっかり書いて、おまえいつ仕事してんだと思われそうですけど。 ちゃんとしてます寝る時間削ってるだけです(←なぜか「働いてない」という評価に極端に怯えるワーカホリック)
でも我ながら早く「書くことなかったお久しぶりです」とかにならないかなーと思ってます。活字中毒だから動揺しすぎるとなんか書かずにいられない。
それでまた書いてしまいました。
さびしい薪さん。
季節のいまと、連載のいまと、その両方の雰囲気をひきずって書いた短いおはなしです。
ご本人に謝っておきます、つらい思いさせてごめんなさい。青木が裏でやさしくしてます(あと地味に岡部さんも)。
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冬の終わり
「凝ってるんですか」
最初の南風が東京の空を撫で、気配が春の空気感に変わった日だった。
自分が何をしているか気づいていなかったので、岡部に指摘されても薪ははじめ、なぜそんなことを言われるのかわからなかった。
「何?」
「首とか肩とか、ずいぶん気にしてますよ薪さん」
「……無意識だった」
「専属看護師としてはマッサージでもしてやったほうがいいんでしょうが、あれは素人がやってもあんまり効果はないし、そもそも俺の手であんたの肩なんかもんだら潰しちまうんじゃないかと」
「だから無意識だったって言ってるだろ。肩なんかこってない」
「ならいいですけど」
こういうときの岡部の察しとさっと引っ込む判断力は、ほとんど尊敬に値する。薪は左手をあげてうなじを抑え、ああこれか、と診断の元凶となった自分の動きに気づいた。
理由はいくつかあった。
まずからだじゅうに痣があった。ゆうべやられたばかりなのでほとんどがまだ赤かった。朝の大気がこの季節で初めてコートを必要としなくなり、室内ではついジャケットを脱いでしまうが、シャツの内側、特に自分で確認できない背中や首筋が気になっていた。
それから実際痛みもあった。青木が蒼白になって長いこと舐めていた箇所があったので、引っ掻いたな、とわかった。そのときは感じなかったけれど、いまは届かない傷に布がこすれて少しひりひりする。寝落ちしたときにひどい姿勢をとっていたためにあちこちの筋肉も痛んでいたが、それはここで岡部に説明するわけにはいかない。
季節の臨界点のせいなのだ。肌が乾燥気味だったし、刺激に対して敏感になっていた。
だがいちばんの理由はそんなことではなかった。
今朝まだ暗いうちに青木が出て行ったのは、薪がゆうべ引き止めたからだ。あっちが愚図るのを蹴り出すことはあっても、その逆は滅多にない。だから夜に無茶をされても文句を言わなかったし、言う気もなかった。崩れるように重なったまま眠って、陽が昇る前に青木がベッドを抜け出したことに気づいたときには、身支度の音を寝たふりをして聞いた。見送ったら帰せなくなりそうで、起きなかった。青木が最後に背後から襟足に唇を寄せてきたときには、薪は唸りながら毛布にもぐりこんだ。起こすなさっさと帰れ、と口では言ってみたけれど、青木はいつものように「すみません」と謝ったりしなかったので、気づかれていたかもしれない。
面倒な季節がまた来た、と思った。冬の終わりが嫌なのはこんなときだ。自分を包んでいた分厚いものが剥がれていって、感じやすく寂しくなる。あいつが最後に触れていったせいで、首の後ろが気にかかる。我慢できずに長居させたせいでかえって、肩が、背中が孤独にさらされ、肌感覚を押さえる圧力を求めている。
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