雑種のひみつの『秘密』

清水玲子先生の『秘密』について、思いの丈を吐露します。

読書報告6 『熱海殺人事件 売春捜査官』

 

読んだ本のレポートをしてみようと思ってたんですが、全然してなかった。 

先月、職場の読書マラソンのテコ入れ期間だったんです。みんなして「薄くてもいいから5冊読む」ことを目標にしていました。

↓ こんな感じ。最左端がわたしです。

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仕事と関係のない書籍、という条件をつけたため、これがなかなか大変で。わたしはクリスティの『杉の柩』を読んでたら半月すぎてしまいました。それで手持ちのわりとすぐ読めるやつで数を稼ごうと思い引っ張り出したのが、つかさんの今回の台本です(おかげで3月はちゃんと5冊読みました)。

 

ここのところとんとご無沙汰していますが、仙台ではミュージカルや舞台を、越してきてからはオペラを、趣味と言っていい程度にはずいぶん観ました。つかこうへいさんの『熱海殺人事件』は、5、6回観たはず。

熱海殺人事件』って、毎年違うバージョンが出てたんですよ。登場人物と事件のあらましは同じで、細部が違って全体的にかなり違くなります。流れは舞台っぽく支離滅裂で、役者は4人しかいないのに登場人物はもっと多いから劇中劇もあって演技力が問われます。5、6回観たというのは5、6回違うバージョンで観たということで、個人的好みから当たり外れもあります。表題の『熱海殺人事件 売春捜査官』はもっとも好きなバージョンのひとつで、好きすぎて25年前の当時、台本形式の書籍も買ったというものです。

 

↓ 関連する記事やチケットを本に挟んでとっておく人

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熱海殺人事件』の主人公は常に木村伝兵衛部長刑事なのですが、「売春捜査官」で初めて女性となります。木村伝兵衛という名の女性で、パリコレのモデルやってる合間に刑事をやっているという、24歳のバージンです(ぜんぶセリフで説明されます)。しかも最後に警視総監に言い寄られて、それが嫌だからって総監より客がマシだからって、売春組織に潜入するんです。警視総監はどこの世界でもろくなもんじゃないですね(現実の総監さま、すみません)。

おまけにこの人、言動がむちゃくちゃでクチが悪くて乱暴者で、悲しい思い出を隠して平気なふりしてて、刑事としては洞察力と観察力が鋭くて優秀で、「私たちは刑事です。踏ん張れば人が人を殺さなくても済むような世の中を作らなければいけないんです」とかって、いちいちあの方を思い出させるんですよ。

もちろん薪さんとは全然違います、まずバージンとか違うし(そこか)。余談ですが英語だと童貞もバージンと言います。どうでもいいですね。とにかく本に戻ると、書籍だけだと伝わらない舞台の勢いは、つかこうへい劇団の演劇って基本最初から最後まで歌ってるか怒鳴ってるかだから、もう大変なんです。

 

セリフもきっついんですよ。時代や出身もあり、つかこうへいがまずきついんです。登場人物がみんな、住田教授みたいなのもきつい。自分勝手で自己主張が激しくて、他人ばかり責めて暴言を浴びせる。

とはいえそこらは舞台の後半で回収されます。本作では部下の戸田禎幸刑事がゲイの設定なんですが、「人口二千人足らずの村に、ホモの一人息子がフェラガモのリボンのついたハイヒールでも履いて帰ったら」(※現代の認識ではそれだと戸田刑事はゲイではなくてたぶんトランスとかだと思われますが)って笑ってた木村伝兵衛部長刑事が、実はそれはわざと意地悪してただけで、最後に退職する戸田を「あなたがお帰りになる警視庁からせめて羽田までの首都高一号線を全面封鎖し、四十台のパトカーをもちて先導させ、あなたをお送りさせていただきます」と、部下に最大限の敬語を使ってまで長年の忠誠を誠意をもってねぎらうんです。

 

木村伝兵衛をわざわざ女にしたこともちゃんと生かされてて、「ここで引くとやはり女は使いものにならん、お茶くみさせときゃいいってことになりますから」と体を張って事件を解決し、潜入捜査のために「次から私を必要とする時は金を払って買って頂きます」と総監を退けた彼女の最後の台詞が、「いま義理と人情は、女がやっております」でした。かっこええ〜。

いま読んでも思ったほど古くない。『動物のお医者さん』あたりが相当古くなったことを考えると、全然古くない。っていうか動物を取り巻く環境がそれでもだいぶマシになったのと違って、女性とか性的嗜好とか出自とかの差別が現実で解消されていなくて、社会が変わってないから古くなってないって感じ。

 

 

舞台を観たことがなければ、書籍はおすすめしません。つか作品の中では『熱海殺人事件』がいちばん好きです。

劇団、いまどうなってんのかなと調べたら、「北区つかこうへい劇団」は解散し有志が「AKT(After Kouhei Tsuka)STAGE」として継続していて、年末にも演ってた模様。

北区AKT STAGE

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3バージョンとも観たことある。

出張にぶつけて観に行きたいなあ、今年も無理かなあ。


あ〜、長いこと観てないな。いちばん最近観たのはミュージカルで、2018年8月のNYの「オペラ座の怪人」と「ライオン・キング」でした。

久しぶりに舞台、観たいなあ。