こんばんは、こちら北東北です。今年は雪は少ないんですが本日めったやたらに寒いです。今夜の外気温マイナス12度だそうですが、家の中はあったかくてピンドットのシャツパジャマ1枚。こんな気温差があったら掃き出し窓が開かなくなるよね凍って……。
さてほ む ら/ひ ろ しシリーズのほのぼの鈴薪SSできました。最後に書いてあるものは短歌っぽくありませんが短歌です。
薪さんザルのようだし他人のいる飲み会で飲みすぎるとかないだろうしそもそもそんなもん参加しないと思いますが、鈴木さんに誘われて付き合いで初めて行った一般教養時代(飲酒18歳解禁設定)。いやこのふたりパンキョー必要ないと思うけどね……鈴木さんが「おまえいつも薪と一緒だろ連れてこいよ」と周囲に言われた結果でしたが、結局薪さんを助け出す王子様役を飲み会の席で披露しただけです。
薪さんも鈴木さんには甘えっ子デフォルトだし、鈴薪たのしい。自分で書いて癒されてしまった。
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フレミングの法則
「おい」
薪に絡む分厚い眼鏡の男を押しのけて、鈴木はその隣に座った。「これ以上飲ませるな」
座卓の上には盛っ切りが5つも並んでいる。銘柄も誰の升かもわかったものではない。
「鈴木くんてば、保護者のつもりなの?」
反対側から小柄な女子がしなだれかかってきたが、鈴木はそれを無視した。
「薪、どれくらい空けた?」
「さあ? 平気そうだよ」
「こいつは顔に出ないんだよ」
ほんの少し離れただけだったのに。薪自身が答えないので、鈴木はその細い顎に指をかけ、両目を交互にじっと見た。「ケプラーの第三法則を言ってみろ」
「惑星の公転周期の二乗は軌道長半径の三乗に比例する」
「ボイル=シャルルの法則」
「気体の圧力は体積に反比例し絶対温度に比例する」
「フレミングの左手の法則」
「磁場内で……」
「――で?」
「 」
「おまえなんで一番基本的なやつで」
薪の左手をとって指を形作ろうとすると、
「あたし知ってる」
背後から別の女子がからんできた。「キスする前に手を握れ」
そう言って抱きつくように鈴木から薪の手を取り上げる。
「そんな法則あるか、触るな」
鈴木は薪の肩を抱いて引き剥がし、「帰るぞ酔っ払い」
と立ち上がった。
「なんだよ自分ばっかり、ずるいぞいっつも一緒のくせに」
「俺たちは一緒に「勉強」してんだよ」
「手、握ったんだからキスくらいさせてよ」
「駄目に決まってんだろバカ」
「薪はおまえのもんじゃないぞ」
「俺のもんだよ!」
無責任な呑助たちの物言いについイラッとした。「俺が連れてきたんだから俺が連れて帰る」
四方八方から抗議が起こったが、ちょっとくらい譲れとか法則を証明しろとか、ほとんど子供の野次だった。
「二度と連れてこないからな。おまえは俺とだけ飲んでろ」
耳元で囁くと、鈴木は外野を無視して、薪を抱えるようにして店を出た。
「フ レ ミ ン グ の 左 手 の 法 則 憶 え て る ?」「キ ス す る 前 に ま ず 手 を 握 れ」 ほ む ら/ひ ろ し
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